対話と個別指導のあるオンライン少人数クラスの作文教室
小1から作文力を上達させれば、これからの入試は有利になる。
志望校別の対応ができる受験作文。作文の専科教育で40年の実績。

昨日1990 今日1651 合計47340
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

小学1・2年生   小学3・4年生   小学5・6年生   中学1・2・3年生   高校1・2・3年生

   あなたも私もパイオニア   ノンキィ

 “なんか時計の音みたいなん、よう聞こえますね”
それは、まだ右も左も分からない幼い小学生の発言だったに違いない。忘れもしないある日のこと、現在も通っている習い事の先生の家でふと口をついた他愛ない問いだった。膠原病——それが、先生の患った病名である。時計のように聞こえた音は、心臓に埋め込まれたペースメーカーの、心拍を刻む音だった。信じられなかった。ペースメーカーという機械の存在も、そしてそれをつけざるをえない人が、あまりに身近にいるという事実も。それから約五年。今でも、先生の家にはビニールのチャック袋が朝昼晩用三つ、それぞれ何錠も錠剤の入ったものが常備されてある。一方で、ビタミンや鉄分をサプリメントという形で手軽に摂取することが可能になった現代。舵取りによって浮きも沈みもする人類の文明の行方を、私たちはしっかりと見つめてゆくべきである。(主題)(体験実例)(書き出し)
 一つの方法として、何を取り組むにも、まずはそちらに意識を傾け、知ることから始める必要がある。小学生の頃、私は膠原病など聞いたこともなかったし、興味を持ったこともなかった。小学生ならばまだ許されるかもしれない。しかし、先生がその“音”の正体を教えてくれたとき、私は恥ずかしかった。どうしてそんなことを聞いてしまったのか。なんて自分は無神経なのか。自分の無知をあれほど悔いたことは、後にも先にもないくらいである。その日、帰宅した私は、母にそのことを話した。先生が心臓にペースメーカーを入れていること、その事実に、故意ではないにしろ触れてしまったこと。今、私は膠原病についてあの頃の私よりは知識を持っているつもりである。人間は万能の生物ではないから、地球上全ての事象を把握することなど出来るはずもない。それは仕方のないことである。しかし、たとえ知識を豊富に持っていたところで、その対象に関心を抱かなければ、それは知らないも同然ではなかろうか。現実社会に実在するものでも、自らの意識の中に実在しないものは無数にある。それらは、無知となんら差異はないのである。(方法1)
 二つ目は、今自分が享受している科学技術の驚異性を認識することだ。例えば先にあげたサプリメントの例。元来薬というものは、人間が己の身体の治癒のために創意工夫し、伝承してきたものである。大麻やコカインのように、快楽のために横道にそれた利用をされる薬もあるにせよ、一人でも多くの人の命を救う、それが第一の目標として今日も開発がなされているに違いない。ただそれが、例えばサプリメント、あるいは体内のホルモンを左右させる薬として広く使われ始めている。もともと、人類のコンパスはどこを指していたのか、科学技術の顕著な発展が、倫理的な問題にまで及ぶ現代、人類のコンパスが元々どこを指していたのかを、私たちは認識しなければならない。(方法2)
 だが、昨今は産業が大きく進歩し、企業間の競争も激しい資本主義の時代。生き残るために、本来の目的以外のヒット商品の開発は、会社の生き残りのために必須となっている。それも人類が発展したゆえの結果であるといってしまえばそこまでであるが、生命倫理の問題が盛んに議論され、今人間の技術は非常にきわどい縄の上を進んでいる。道を踏み外さないためには、ぐっと先を見つめ、一歩一歩よく考えて歩いてゆかなければならないのだと思う。全ての人は、その人が生きる時代のパイオニアである。そう肝に銘じ、しっかりと前を見て、道を開拓してゆくべきである。(主題)(自作名言)

   講評   nara

 パイオニア、ね。この言葉からどんなイメージが浮かぶか、連想してみたよ。初めて・希望・わからない・不安・前進・停滞……。いくつかの言葉と、複数の方法とが重なっているね。つまり、この題名およびキーワードは、しっかりと読み手と共感できるものになっているというわけだ。
 第一方法:無知による失敗や他者を傷つける行為は、知ったからこそそれが失敗だった・傷つけたのだとわかるのだね。人は全てを知ってから世に出るわけではない。無知であったことに気づくこと、それを次の場や機会で活かすことで、乗り越えていくしかないのだね。
 第二方法:コンパスというのも、開拓のイメージとうまく重なっているね。私たちは、時折コンパスをどこかに紛らせてしまったり、あることを忘れてしまったりしがちだ。どこを目指していたのか、その方向付けは正しいのか、折に触れ確認しなければ、開拓も頓挫したり不幸を生み出したりしかねないということだね。
 縄の上を歩むとき、その視線は、先だけでも足元だけでもいけないのだね。ここも、「パイオニア」と同様「縄」の比喩が効果的だ。冒頭の題材をどう主題につなげていくか難しいところだったけれど、すっきりとまとまっているよ。

毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘 
 自動採点ソフト「森リン」で上位になった作文を掲載しています。
 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

作文教室受講案内   無料体験学習   作文講師資格 
Online作文教室 言葉の森  「特定商取引に関する法律」に基づく表示」  「プライバシーポリシー」 
お電話によるお問合せは、0120-22-3987(平日9:00-19:30)