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言葉は道具 (629字)  あさもな asamona 2026/05/14 23:12:51 62389   1     

 散り初めのころのある日、枝を離れた花びらを見ていて、これが地面に達するまでのあいだの状態を、ぴたりと表す言葉がないのに気がついた。桜の花びらと、からまつの葉と、自然はついに言語の及びえないものなのであろうか。もし日本語にそれがなければ、それは日本語の語彙の貧弱を意味すると、二十年前と同じことを考えさせられた。

 そういえば私もそんな体験をしたことがある。最近は秋がとても短くなってきているように感じる。気づけば綺麗な紅葉も楽しむことができずに終わってしまい、寒くて長い冬がやってきてしまう。しかしちょうど去年、そんな風のように一瞬な秋の、自分が知っている中でも一番季節を感じられると思う写真を撮ることができた。写真を撮った場所自体は私が毎日通る桜並木の道なのだが、その日は木の葉や落ち葉がとても綺麗に赤や黄色に染まっていて、あまりの感動に咄嗟に写真を撮ってしまった。今でもその写真を見ると、まるで夕日の中に浸っているような風景だったと思う。

 また私の親はやはり、一番上の姉が生まれた時が一番感動したらしい。ずっと健康に生まれてこれるかが心配で、無事に生まれた時は「良かったぁ」しか言葉が出てこなかったという。

 人間にとって言葉とは、あくまで頭の中にあることを表現するための道具でしかなく、必ずすべての気持ちや考えにあった言葉が存在するわけではない。あちらを立てればこちらが立たぬというように、言葉というのは完全には伝えたいことを伝えきれるものではないのだ。



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