| 野生のものは |
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| チョウチンアンコウは、深海魚で、約155年も前から多くの学者の興味を |
| 引いている珍しい魚だ。1837年の、2月20日。鎌倉の海岸の波打ち際で |
| 、1匹のチョウチンアンコウが、海岸に遊びに来ていた人に拾われた。これは |
| 珍しい魚だということで、そのチョウチンアンコウは、段ボール箱に入れられ |
| て、8キロ離れた江ノ島水族館にはこばれ、海水に入れられたところ元気を取 |
| り戻し、8日間生きたそうだ。これは、たぶん世界でのチョウチンアンコウの |
| 最長生存記録であろう。その間に、チョウチンアンコウの発光が観測された。 |
| 深海魚が水族館で飼えないのは、深海に適したからだが作られているため、皮 |
| 膚や内臓が傷つきやすく、体がもろくて壊れやすく、環境の変化に弱いからだ |
| 。また、傷つき弱っても、健康を回復させることがほとんどできず、それが一 |
| 番弱いからなのだ。 |
| 僕が最も驚いたのは、チョウチンアンコウが飼われていたのは、8日間だけ |
| ということである。でも僕も、似たような経験をしたことがある。青マツムシ |
| を駅周辺で見つけて、家に手づかみで大切に持ち帰ると、近くの公園から雑草 |
| を採ってきて、虫かごの中に入れてやった。そのときの青マツムシは、草にの |
| って少しうれしそうに鳴いていた。僕は、その美しい音色を聴くと、満足して |
| 、眠りについてしまった。その次の朝。カーテンを開け、窓を開けると、とて |
| もすがすがしい朝だった。 |
| 「さーてと、昨日の青マツムシはどうなったのかな…そうだ!名前をつけて |
| あげよう。よし!名前は青ちゃんだ。」 |
| と、僕はつぶやいて虫かごをのぞきこんだ。ついさっき青ちゃんと命名され |
| た青マツムシは、動かなかった。 |
| 「なーんだ。青ちゃんは寝ぼすけさんだなぁ。」 |
| と言って僕はその場から去って行ったが、昼になっても動かないため、(青 |
| ちゃんは死んでしまったんだ。)と判断した。野生のものを育てるのは難しい |
| と、僕は改めて感じたのであった。青ちゃんが死んで、すごく悲しかった。昨 |
| 日つかまえたばかりだった。 |
| 母が言うには、自然のものは、自然で育つのが一番だ。だから、無理にチョ |
| ウチンアンコウを水族館で飼育したりするのは、やめたほうがいいということ |
| だ。そこで、僕に名案がある。チョウチンアンコウを飼育するのではなく、潜 |
| 水艇でチョウチンアンコウに、出会いに行けば良いのではないだろうか。ただ |
| しこの計画の難点は、高いお金を出してまでして、チョウチンアンコウに出会 |
| いに行く一般人がいるのだろうか?そこで僕は、またまた考えた。深海に、観 |
| 測用のカメラを設置して、いつでもその映像が水族館の巨大モニターに映し出 |
| されるようにしておけばいいのではないか。でも、チョウチンアンコウの姿を |
| 生で見たいと言う人は、やっぱりたくさんいるのではないか。そんな人々に満 |
| 足してもらえる装置は、思い浮かばないのであった。 |
| 「郷に入っては郷に従え」と言うことわざがあるが、そのことわざが通じる |
| のは、チョウチンアンコウの例でもわかるように、人間だけにしか通じないの |
| である。つまりは、母が言ったように、野生のものは、野生で育つ。と言うの |
| が一番だと言うことがわかった僕だった。………さて、あの青ちゃんは今どう |
| しているのか。僕の標本の中に、大切にしまってあるのだ。 |