先頭ページ 前ページ 次ページ 最終ページ
裏切りと緊張感
アジサイの空の広場
吉見/こと大3
 一つの集団は一人の裏切り者と一人の犠牲者を生み出すことによって完成さ
れる。キリスト教団という集団は『神に対する恐れ』という一方的で不安定な
心情を『裏切者(ユダ)』によって緊張しあう安定したものにすることができ
た。『裏切者』というのは絶対的な悪ではなく『裏切る』という行為は相対的
なものであり集団は永遠にそれを対象化することができない。それ故に集団の
内部を律するメカニズムを持続的に緊張させ続けることができる。
 
 私は大学祭の実行委員をやっていた。仕事も多く責任も大きいため何度も実
行委員を辞めようかと思った。しかし自分以外の人が辞めていくと、その残っ
た人の間に『あいつは裏切者だから私たちは私たちで頑張ろう』という緊張感
、連帯感が生まれてくる。その連帯感が皮肉にも物事を成功させている事が少
なくない。
 
 最近の大きな話題の一つに『野村阪神』がある。去年までの阪神は弱小の球
団で万年Cクラスであった。今年、名監督の野村監督が阪神の監督に就任した
ことにより阪神は非常に好調に勝ち進んでいる。その好調の理由の一つが『選
手の首切り』である。試合で結果を残せない選手は情け容赦なく二軍に落とす
。その逆で能力さえあればスタメンに選ばれる。そのため選手間に必然的に緊
張感が生まれる。野村監督の行為は『裏切り』ではないが『裏切り』に相当す
る衝撃を選手間に与えているのは事実だ。その結果、選手間には常に緊張感が
あり、それが選手達を一念発起させているのだ。
 
 故・ジャイアント馬場さんの生前、馬場さんが運営するプロレス団体に所属
する有能レスラー数人が他の団体へ鞍替えしてしまったことがった。馬場さん
は大きなショックを受け一人で何度も泣いていたそうだ。馬場さんは知人に『
離れていった人が戻って来たくなるような団体にしてやろう』と言ったそうだ
。それは実現され馬場さんが亡くなった今日でも、その団体はプロレス界のト
ップに君臨している。『裏切り』ものが集団に緊張感、連帯感を生ませる。馬
場さんは、こんなことも言っている。『裏切るよりも、裏切られる方がいい。
裏切られても、それは自分が傷つくだけだから』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ホームページ