| 精神的世界と物質的世界 |
| イチゴ | の | 道 | の広場 |
| くみこ | / | さく | 高1 |
| 精神的世界と物質的世界 |
| 磯野久美子 |
| 大人になって毎日同じようなことを繰り返していると、あまり「不思議」な |
| ことはなくなってくる。子供は「不思議」と思うことに対して、自分で納得い |
| く「説明」を考えつくこともある。これと同じく、人類は、、「不思議」と「 |
| 驚き」を「神話」として物語にして語ってきた。しかしこれはすべての事象を |
| 説明するには都合が悪い。そこで「自然科学」が生まれ、そのあまりの素晴ら |
| しさに近代人は「神話」を嫌い、自然科学によって世界を見ることに心を尽く |
| しすぎた。これは外的事象の理解に大いに役立つが、神話を全く放棄すると、 |
| 自分の心の中の世界も無視したことになる。 |
| 現代の世の中の科学の進みようとその作り出す製品の素晴らしさには本当に |
| 驚かされる。様々な資源とアイディアを使って新しい商品がどんどん出てくる |
| 。しかし、それを開発する頭で、単に利益が出るわけでもない、自分自身が楽 |
| しくなるようなことを考えるということは少なくなっているのではないかと思 |
| う。実際の利益になるようなことばかりに重きが置かれているようなこの世の |
| 中で、古代人にとっての「神話」を忘れずにいるためにはどうしたらいいのだ |
| ろうか。 |
| まず一つ目の方法は、一人の時間を持つ、ということである。日本人はよく |
| 「働きすぎている。」といわれる。私も確かにそう思う。もっと自分自身の時 |
| 間を持って、想像力を働かせたり、自分の考えをまとめる時間を持つべきだと |
| 思う。そうすれば、人は自然と実際の世界のことだけでなく、自分の内面の世 |
| 界にも目を向けるものである。その時間からその人にとっての「神話」が生ま |
| れてくるのである。 |
| 二つめの方法は、「自然科学だけを存在すべきものとして考えること自体が |
| 危険なことである。」ということを悟る、ということである。人は、実際的な |
| ことばかりが大切ではない、ということを論理的には分かっていても、心では |
| 理解していないことが多い。いくら頭が良く、便利な機械をたくさん発明する |
| ことができるとしても、想像力に欠けており、心で考えることができなければ |
| 本当に人間として優れているとは言えないのだ。そして、そのような精神的世 |
| 界は、これまでそうだったように、これからも人類の歴史の上で重要な役割を |
| 占めていくだろうこともしっかり分かっていなければならない。平たく言えば |
| 、「世の中金ばかりではない」ということだ。 |
| 確かに自然科学が素晴らしいことは周知の事実であり、今の私達にとってな |
| くてはならないものである。しかし、そればかりでは豊かに生きては行けない |
| ということもまた真実なのである。もし自然科学だけで生きていけるのなら、 |
| 人は皆同じようになり、個性がなくなってしまうのではないか。「物質的なも |
| の」と「精神的なもの」に世界を分けたとき、わたしたち生物としての「ヒト |
| 」は「物質的なもの」にはいるのだが、人間として心を持ったとき、その心は |
| 「精神的なものにはいるのである。この二つの重要度は全く同じと言ってよい |
| 。精神的な部分が欠けている現代人にとっては、今物質的なものよりそれを重 |
| 要視することが大切なのだ。 |