| スイマーよ! | 
| アジサイ | の | 滝 | の広場 | 
| ペー吉 | / | うき | 中3 | 
| 現代の情報は津波である。息継ぎをする間もなく次々に押し寄せる知識の波 | 
| 、波、波。その中には当然正しくない、あるいは正しく理解されていないもの | 
| もある。例えば、「デジタル←→アナログ」という「常識」だ。世界に存在す | 
| るあらゆる事象には「デジタル的な側面」と「アナログ的な側面」が存在する | 
| 。ただアナログなだけの存在というものはないし、同様にデジタルなだけであ | 
| るという存在もない。デジタルとアナログは相反するもののように言われてい | 
| るが、実際の世界はそれほど単純ではないのだ。 | 
| アナログとデジタルの対比を現すのに頻繁に使われるのが時計である。アナ | 
| ログ時計は針が円を描くように動き、デジタル時計は数字が毎秒刻まれるよう | 
| に変わる。連続的な情報と断続的な情報である。これを見ると、アナログとデ | 
| ジタルは相容れないもののように思われる。しかし、アナログ時計は時に断続 | 
| 的であり、デジタル時計は時に連続的だ。例えば、ある人が三時に待ち合わせ | 
| をしていたとする。彼は一時にアナログ時計を見て、「あと二時間か」と判断 | 
| する。そして、一時間ほど昼寝をとった後にもう一度時計を確認する。さっき | 
| 見たときは一時であった時計が、二時になっているはずだ。彼は一時半や一時 | 
| 四十二分を認識していないというのに。いかに時計がアナログ式に動こうとも | 
| 、それを認識する人間の側は、時計をデジタルに認識することの方が多い。ま | 
| た、デジタルに内包されるアナログも存在する。手元にストップウォッチがあ | 
| ったら、起動してみて欲しい。目で追えないほどの勢いで一秒未満の数字が流 | 
| れ、後に秒数の個所に「1」と表示される。この目で追えないほどの勢いで「 | 
| 流れている」部分に注目して欲しい。それは、断続的なものには見えないはず | 
| だ。もちろん、時計の構造上は数字が切り替わるというデジタル的な動きなわ | 
| けだが、我々の目はそれに追いつけないばかりに断続的な連続が見えてしまう | 
| のだ。 | 
| つまり、デジタルはアナログを内包し、アナログはデジタルを内包する。ア | 
| ナログやデジタルという区別は、我々人間の事象の認識により生まれたもので | 
| あるため、日常生活の中で測定してみるとこのような矛盾が生じるわけだ。厳 | 
| 密に測定した結果では両者は相反するものかもしれないが、我々の生に関わる | 
| 部分ではそう簡単に二つにわけられるわけではない。昨年の課題で読んだ長文 | 
| によると、世界は認識により決定されるという。我々が「虹は七色だ」と思う | 
| から虹は七色なのだ。世界には虹が二色に見える民族もいるという。認識は現 | 
| 実を支配する。デジタルとアナログはわけられたもの、と頭で思っていても、 | 
| 現実に人間はどちらかのみを認識するということはできない。 | 
| 結局何が言いたいのかというと、我々の身近に存在する現象がどんなに常識 | 
| 的でどんなに正しく思われていても、そこにはなんらかの矛盾や間違いが存在 | 
| する可能性があるということだ。現在の世の中にはさまざまな情報が溢れてい | 
| る。その情報(知識と言い換えてもいいかもしれない)を鵜呑みにするのでは | 
| なく、外界の「常識」に惑わされず自分の中の正しさを持たねばならない。外 | 
| 界に対して自らを閉ざすということではないが、よく吟味するフィルターは必 | 
| 要である。「ことごとく書物を信ずれば、それは書物を読まないことと同じで | 
| ある」という言葉がある。氾濫する情報の波に溺れない、自らの道を泳ぎきる | 
| スイマーの精神が、今我々に必要である。 |