ニシキギ2 の山 8 月 1 週
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○自由な題名
○はじめてできたこと
★痛かった思い出、虫をつかまえたこと

○お世辞とか外交辞令というのは(感)
 【1】お世辞とか外交辞令というのはいやなものです。心にもないことを言われるのは気持ちが悪いという人もあります。しかし、出会いがしらに、
「お顔の色が悪いようですが、どうかなさいましたか」
などという親切を受けてはたまりません。【2】たとえ、すこし顔色がさえないとは思っても、
「お元気そうですね、みなさんお変わりありませんか」
と言われた方がよほどうれしい。ウソを言われて喜んでいる。【3】それでは深刻な人生は送ることができないとしかられるかもしれませんが、こんなところで深刻さを味わわされなくて結構だというのがふつうの人の感想です。
 【4】本当のことを言うと当たりさわりがあって、聞く人の心に傷をつける心配がある。お世辞だとかあいさつのことばは、ことばを真綿にくるんで、痛みを与えないようにするのがやさしさになるのだということを発見したときに生まれた生活の知恵だったのです。
 【5】このごろの若い人は、
 「ウソも方便」
を認めるという調査があります。【6】若いのに世間なれしていやだね、と言う人がいますが、ことばに傷ついた苦い経験が重なって、人を傷つける真実よりも、傷つけないウソの方がよろしいということに気がついたのだとしたら、これはたいへんな感覚です。
 【7】このごろの若いものはことばを知らなくて……などと言っている年ぱいの人が案外、「ウソも方便」ということを知らないで、本当のこと、あまりにも本当のことを言って人をくさらせるのは皮肉です。【8】年ぱいの人の方が「ウソも方便」を認める人がすくなくなっているのです。
 われわれはどうも正直教育をうけすぎたようです。いつも本当のことを言わなくてはいけないと教えられてきました。【9】それでときどき正直の上になにかつくようになってしまいます。
 正直な話にはしばしばとげがあります。正直の美徳を行うのに気をとられて、そのとげが相手の心をつきさすことを忘れがちです。【0】同じ正直でも、言い方によってとげが出たり出なかったりします。∵
 いい年をした男が青年のような服装をしてあらわれたとします。
「これはまたずいぶん派手ですね」
と言えばかどが立ちます。派手であるのはまちがいないとして、派手だと言ってしまえば、非難していることになります。聞いた方ではうらみに思うでしょう。うらみに思ったことばはめったに忘れないものです。同じことを言うにしても、
「これはまたずいぶん若々しいですね。さっそうとしていらっしゃる」
とすれば、言われた方では内心いい気になるでしょう。派手ではないかとちょっぴり不安に思っているのを、ほめてくれた、あいつはなかなか気のきくやつだ、となるでしょう。
 毎日朝から晩まで使っていることばです。いくら気をつけても、どうしても、とげのあることばが口から出てしまいます。本人はそのつもりでなくても、相手が勝手に傷ついてうらむということもあります。それをいちいち後悔していては生きてはいかれなくなります。しかし、正直なことばには時にはとげがあるのだということを心におけば、ことばで人を傷つけることはずっとすくなくなるにちがいありません。