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  夏休み中の授業について
  宿題の読書感想文の書き方
   いまの感想文指導には無理がある
   子供まかせでは書けない
   じょうずな感想文を書くコツはあるが
   書き方の手順「まず本選び」
   書き方の手順「次に字数配分」
   書き方の手順「1日目の400字」
   書き方の手順「2日目の400字」
   書き方の手順「3日目の400字」
   書き方の手順「4日目の清書」
   書き方の手順「できたらほめる」
   教室では宿題の感想文の個別指導はしませんのでご了承ください。
  父母の広場より
  受験(その4)
 
言葉の森新聞 2003年7月3週号 通算第804号
文責 中根克明(森川林)

夏休み中の授業について
 言葉の森の7−9月の予定は、課題フォルダの中の予定表に書いてあります。
 夏休みは帰省したり塾の夏期講習に行ったりするために、通常の時間に授業を受けられない場合も多いと思います。その場合は次のようにしてください。
(1)通常の電話指導を受けられない分を、他の曜日や時間に振り替えて受講できます。平日午前8時半〜午後8時、土曜午前8時半〜午後12時の間に、直接教室にお電話ください。希望の週の課題の説明をします。事前の予約などは必要ありません。授業の振替は、7〜9月の間いつでもできます。電話0120−22−3987(045−830−1177)
(2)教材の送付先や電話の宛先を、自宅以外にすることができます。帰省先や滞在先などで授業を受けることを希望される場合はご連絡ください。ただし曜日や時間を変更する場合は、先生から生徒にはお電話しませんので、生徒から直接教室にお電話をして説明を聞くようにしてください。
(3)8月のみ休会されるという場合でも受講料の返金はしませんので、できるだけほかの曜日や時間に振り替えて授業を受けてくださるようお願いします。ただし、(A)海外にホームステイで出かける場合、(B)病気治療のため入院する場合など、電話連絡のとれない状況での1ヶ月以上の休会は受講料の返金をしますのでご相談ください。
宿題の読書感想文の書き方
 この記事は昨年の言葉の森新聞に掲載したものに、一部手直しを加えたものです。
いまの感想文指導には無理がある
 感想文が楽に書けるようになるのは、年齢的には小学5年生からです。小学1〜4年生は、全体の構成を考えて書くという能力がまだ育っていませんから、大人が全体の方向づけをしなければ自分で本の流れに合わせて感想文の流れを考えていくという書き方はできません。
 また、小学1〜4年生の場合、似た話がうまく見つかる場合と見つからない場合とでは、作品の出来に大きな差が出てきます。大人(親や先生)が近くにいて、「この次はこんなことを書いたらいいよ」とときどきアドバイスをしてあげなければまとまった作品を書くことはできません。
 なぜ学校のふだんの授業で感想文を指導せずに、夏休みの宿題というかたちで感想文を書かせるかというと、感想文は(特に低中学年の場合は)、一人ひとり別のアドバイスをしなければならないからで、30人から40人を相手にした一斉指導ではそういうアドバイスはできないからです。
子供まかせでは書けない
 「なんでもいいから自分で好きな本を選んで、自分で好きなように書いてごらん」ということでは、感想文は書けません。小学生の場合は、大人がなんのアドバイスもせずに感想文を書かせるぐらいなら、感想文を書くことそのものをしない方がいいのです。単に字数を埋めるだけの感想文は、何の勉強にもなりません。
じょうずな感想文を書くコツはあるが
 書くからには、じょうずな感想文を書いて、コンクールなどに入選したいとはだれもが思うことです。作品の出来具合の半分は、似た話などの題材の部分に支えられています。また、もう半分は、感想の部分の一般化の深まりに支えられています。ですから、感動のある似た話が連想できるような本を選び、感想の部分で大人の人が一般化の手助けをしてあげれば、じょうずな感想文が書けます。
 しかし、こういうかたちで親や先生がアドバイスをすることは、子供にとってはあまりうれしいことではありません。また、親や先生に支えられてじょうずな作文を書いても、教育的な意義はありません。ですから、感想文の目標はじょうずな作品を書くことにではなく、ひとまとまりの本を読み、ひとまとまりの文章を書く練習をするということに置くべきです。
書き方の手順「まず本選び」
 まず本選びですが、子供が「この本、おもしろいから書きたい」と言うような本が必ずしも書きやすい本であるとは限りません。子供が自分なりに似た話を見つけることができたり、想像をふくらませたりできるような本が書きやすい本です。この本選びは、大人がアドバイスをした方がいいようです。少なくとも、子供には「似た話や想像した話が書けるような本が、感想文の本としては書きやすいよ」と言ってあげるといいと思います。
 書きたいテーマが決まっているときは、インターネットの書店を利用して関連する図書を数冊用意すると話題が広がって書きやすくなります。
書き方の手順「次に字数配分」
 感想文の宿題は、原稿用紙3枚程度(400字詰めで1200字)の分量で指定されることが多いようです。これだけの分量を1日で書くというのは大変です。無理のない字数配分は、1日1枚(400字)です。感想文の宿題をするために、4日間の予定を立てて、1日目に400字以上、2日目も400字以上、3日目も400字以上と書いていって、4日目に全体を通して要らないところを削り、清書するという予定を立てれば無理なく書くことができます。
書き方の手順「1日目の400字」
 本のはじめの方から一ヶ所、似た話や想像した話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、自分の似た話を書き、最後に「たぶん」「きっと」「もしかしたら」などという言葉を利用しながら、自分の感想を書きます。
 本の引用(1)
 ↓
 似た話(1)(もし…だったらと想像してもよい)(たとえも入れる)
 ↓
 感想(1)(たぶん、きっと、もしかしたらなどと考えてみる)
書き方の手順「2日目の400字」
 2日目も同じです。本の中ほどから一ヶ所、似た話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、似た話を書き、感想を書いていきます。
 本の引用(2)
 ↓
 似た話(2)
 ↓
 感想(2)
書き方の手順「3日目の400字」
 3日目も同じように、本の終わりのほうから一ヶ所選んで書いていきますが、最後の感想のところがちょっと違います。1日目、2日目は、引用した小さな箇所の感想でしたが、3日目は本全体についての感想を書いていきます。
 小学5・6年生の生徒の場合、この感想は、「○○は(人間にとって)……である」というような一般化した大きな感想を書いてまとめます。この感想の部分は、お母さんやお父さんと話し合いをして、子供自身の考えを深めていくといいと思います。そして、「私はこれから」などという言葉を使い、この本から得たことを自分のこれからの生き方にどうつなげていくかを考えてまとめます。中学生の場合は、結びの5行に「光る表現」を入れていくとよいでしょう。
 本の引用(3)
 ↓
 似た話(3)
 ↓
 大きな感想(○○は人間にとって……。私はこれから)
書き方の手順「4日目の清書」
 4日目は清書です。お母さんやお父さんが全体を通して読んであげると、要らないところが見つかると思います(書いた人自身には、要らない部分というものはなかなかわかりません。これは大人でも同じです)。この要らない部分を削ります。次に、書き出しの部分に本の引用として情景描写の部分を入れられれば、書き出しの工夫ができます。これは無理のない範囲でやっていくといいでしょう。
書き方の手順「できたらほめる」
 書いている途中でも、書き終えたあとでも、親や先生が「これは、おもしろいね」「それは、いいね」と、子供の書いた内容のいいところやおもしろいところをどんどん認めてあげることが大切です。多少おかしいところや変なところがあっても、子供が書いた内容をできるだけ尊重してあげてください。これと反対に「これは、こうした方がいいんじゃない?」「そこは、ちょっとおかしいんじゃない?」などという否定的なアドバイスをすると、勉強でいちばん大事な子供の意欲をそぐことになります。大事なことは、いい作品を仕上げることではなく、手順にそってできるだけ自力で書く力をつけることです。
教室では宿題の感想文の個別指導はしませんのでご了承ください。
 感想文の指導には、生徒ひとりずつ異なるアドバイスが要求されます。更に作品として完成させるためには、書いている途中にも頻繁にアドバイスをする必要が出てきます。このような対応は、普段の勉強の中ではできませんので、夏休みの宿題のための感想文指導は、教室では行ないません。
 宿題として感想文を提出しなければならないという事情のある方は、教室で練習した長文の感想文で似た話のよく書けたものをベースにして、ご家庭で書き直していかれるといいと思います。

※印刷物の言葉の森新聞はここまでです。そのほかの記事はホームページでごらんください。「父母の広場より」「受験(その4)」
 
父母の広場より
子供なりに達成感を感じている 小5父母
 5年生になり勉強も忙しくなり、「毎週作文を書くのは大変なんだ!」言うので、「作文やめる?」と聞くと「絶対やめない!」と言います。大変だけれど、書き上げたときの達成感など子供なりに感じているのだと思います。
Re: 子供なりに達成感を感じている 森川林
 作文の勉強は、他のどの教科の勉強よりも続けにくいものです。これは、実際に書いてみるとよくわかります。社会人で作文の勉強を始める方がいますが、試験で作文が必要な人以外はなかなか長く続けることができません。
 しかし、同時に作文には、書いたあとの満足感というものがあります。これは、他の教科の勉強とはやや異なるところです。特に、書いた文章が自分でも満足のいくものだと、達成感はよりはっきり出てきます。けれども、安定した形でそういう境地に達するのは高校生以上になってからです。
 それまでは、作文というものは負担の多い、自然に任せておけばすぐにやめたくなってしまう勉強です。保護者の方はそのことをよく理解して、子供たちの勉強をいつも励ましていってくださるようお願いします。
受験(その4)
 5.2週からの続きです。
 今回は、「今の日本の社会では、公立中学に進むことは大学入試で大きなハンディを背負うことになる」ということです。
 私のうちの子(現在、大1と高1)は、いずれも公立中学でした。今の40〜50代の大人はほとんどがそうだと思いますが、小中学校時代は家庭で大した勉強はしていませんでした。また塾に通うという人もあまりいませんでした。それでも、学校の授業だけでその学年で学ぶことの大体は理解していたように思います。私は子供に対してもそのつもりで、家では読書や長文音読以外は大した勉強はせず、塾にも通わずに家庭で普通に勉強させていました。
 ところが、公立中学は内申点というものがあり、ノートをきれいに書いたり提出物をきちんと出したりすることが点数に換算されます。そのせいだけではもちろんありませんが、上の子が中3になるときの学校の成績はごく平凡なものでした。中3になったときに、これでは受験に間に合わないと思い、夏休み中自宅で毎日6〜7時間勉強することにしました。内容は、数学のやや難しい問題集を全部できるようになるまで繰り返し解いていくこと、英語の市販の単語集を覚えることと教科書の英文を暗唱すること、そのほかに社会の教科書を繰り返し読むこと、理科の参考書を繰り返し読むことでした。国語だけは自信があったので何もしませんでした(笑)。その勉強の結果、夏休み明けから模擬テストが高得点になり、受験のときも(公立高校の試験は比較的易しいので)全教科満点近い成績で合格しました。しかし、中1・中2の内申点が低かったので、合格したのは学区の準トップ校でした。この結果わかったことは、夏休みにがんばれば何とかなるということでした。(笑)
 下の子は、小学校4年生から地域のミニバスケット部に入っていました。このバスケットが面白かったらしく、中学もバスケットの盛んな近くの公立中学へ進みました。たまたまその年に優秀な選手が集まったこともあり、中3の夏休みは、県大会で優勝し関東大会でも入賞し全国大会にも出場しました。そのため、夏休みは勉強する時間があまりとれなくなってしまいました。その限られた時間で、上の子と同じように受験用の勉強を始めてみて驚きました。教科書のレベルがかなり下がっているのです。ちょうど中3になったときから新しい指導要領になって教科書の内容が大幅に削減されるようになったのです。
 公立の中学生全員が同じ内容で勉強して公立高校に入るので、本人たちは何も感じていませんが、大学を受験するころにはこの易しい教科書で勉強してきた生徒は、大きなハンディを背負うことになると感じました。
 大人でもそうですが、人間は周りの環境に影響されやすいものです。本人がいくらしっかりしているつもりでも、学校全体の雰囲気が遊びムードだとどうしてもそれに流されていきます。
 私の家では、公立中学に進んで、高校受験も終わりましたが、これから中学に進む人は、今の教育行政が続くかぎり公立中学・公立高校に進むのは、考え直した方がいいと思わざるを得なくなってきました。もし、公立中学から公立高校に進むとすれば、学校のペースとは別に勉強する体制を家庭で作らなければならないと思います。(つづく)
 
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