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  1月12日(月)は休み宿題
  変わる入試
  作文力の中心は語彙力、語彙力の土台は読書
  1月の学級新聞から(ふじ先生)
 
言葉の森新聞 2004年1月2週号 通算第827号
文責 中根克明(森川林)

1月12日(月)は休み宿題
 1月12日(月)は、休み宿題です。先生からの電話はありません。その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前8時半〜午後8時。電話0120-22-3987)
変わる入試
 昨年の暮れ、朝日新聞が「変わる入試」という特集を行いました。5回分のシリーズは、下記のページで読むことができます。
http://www.asahi.com/
(同ページの右上の「サイト内検索」で検索します)
 話は変わりますが、今、新聞離れが起きていて、全国の新聞販売店の経営は大変だそうです。こういう読み方をする人が増えているからでしょう。おまえだろうと言われそうですが。
 面白かったのは、シリーズ5の「学業や進路 成果を検証」です。
 小論文や面接などの入試で入学した生徒は、高校時代あまり勉強をしていないために英語や数学の成績は一般入試組に比べて弱い面があるが、入学後の勉強に対する意欲は一般入試組よりも高い傾向がある、ということでした。(京都大学経済学部)
 この記事を図式的に説明すれば、高校時代自分の好きなことをやってきた生徒は受験の学力では少し劣るが、大学に入ってからもその好きなことの延長で勉強に取り組むことができる、逆に、高校時代受験のための勉強しかしなかった生徒は学力は高いが、大学に入ってから勉強の目標がなくなり何をしていいのかわからなくなる、と言えそうです。
 現在、子供たちの勉強は、大学入試が目標のようになっています。しかし、その試がAO入試などにより大きく変わっています。また、少子化の影響により、大学は高校と同じような全入制になりつつあります。希望の大学に合格するための勉強ではなく、大学に入ったあとも意欲を持って続けられるような勉強の仕方を高校時代からしていく必要があります。
 それは一言で言えば、成績を上げるための勉強ではなく、自分を向上させるための勉強です。これは、決して理想論ではありません。ほとんどの高校生は、成績と自分の成長とどちらを取るかと言われれば、自分自身の成長の方を選ぶはずです。若者は、大人が漠然と考えているよりもずっと純粋です。例えば、「テストで時間が足りなくなったら適当に○をつけておけ」というテクニックよりも、「テストで時間が足りなくなったら、自分のできなかったところがわかるように正々堂々とそのままにしておけ」というアドバイスの方が、子供たちに敏感に伝わります。人間は、損得のテクニックよりも、正しい生き方の方により強く反応するのです。
 高校時代の勉強を、受験の手段としての勉強ではなく、学ぶこと自体に意義があるような勉強に変えていくためのポイントとなる教科は、読書と作文とディスカッションになると思います。本を読み、それをもとにいろいろ考え、作文を書き、同世代の人と議論をする、という形の勉強が高校時代に週1回ぐらいのペースで行われれば、大学での勉強もその延長で意欲的に取り組んでいけると思います。
 現在、大学入試の変化に対応して、高校や中学の入試も変化しています。今の入試の主流はまだ、得点差の高い英語や数学などの勉強を長時間詰め込んだ方が有利な仕組みになっています。もちろん、どのような創造的な学問にも土台となる知識は必要ですから詰め込みそのものを否定するわけではありません。しかし、読書をする時間も取れないほど詰め込みに特化した勉強はやはり問題です。最近の入試の傾向は、自分なりに考える力を見る記述重視の問題が増えていることです。
 家庭での学習も、これまでの受験勉強の流れで得点力のノウハウを身につけるようなことを中心にするのではなく、子供自身の成長という長期的な視野で取り組んでいく必要があります。そのことが結局、これからの受験勉強にとってもプラスになってくるからです。
作文力の中心は語彙力、語彙力の土台は読書
 作文で実力の差がいちばん出るところは語彙力です。低学年でも表現力豊かな子がいる一方、高学年でも「楽しい」「おもしろい」「すごい」のような単純な表現が文章の多くを占めている子もいます。
 この差は、読書から来ます。本を読んでいろいろな表現を知っている子は、同じ事柄を何通りにも表現することができます。この表現力の差は、短期間に埋めることはできません。
 また、表現力は年齢とともに成長していきます。小学生時代によく本を読み作文が得意だった子でも、中学高校と本を読むことが少なくなれば、それに応じて文章を書く力も低下していきます。読書の量だけでなく、質も重要な要素です。高校生で、本をたくさん読んでいるのに小論文が苦手だという生徒の場合、その本が物語中心であるというケースがほとんどです。
 読書の質と量の差は、ふだんの勉強の中ではあまり出てきません。英語も数学も、その生徒がどんな本をどれだけ読んでいるかということで違いが出てくるものではないからです。このため、読書力の差は、表面的な成績の差よりも実は予想以上に大きいものになっています。
 毎日の読書の目安を、言葉の森では、小学生までは毎日学年の10倍ページ以上としています。小学5年生以上は、切りがいいように毎日50ページ以上としていくといいでしょう。「以上」ですから、50ページ読んでいて面白くなれば更に読んでいっても、もちろんいいのです。大人が普通に読むスピードは1ページ1分ですから、子供たちの読む本では、50ページは30分から1時間ぐらいかかる量です。
 また、読書は毎日読むことが大切です。1日おきに読むとか週に5日間読むとかいうことでは習慣にならないために結局何も読まない生活に戻ってしまうからです。
 どうしても読書の時間が取れない受験生の場合は、受験勉強も兼ねて、長文音読と問題集読書で読書の量の不足を質の上昇でカバーしていくといいと思います。問題集読書の場合も、1冊の問題集を繰り返し読んでいく方が何冊もの問題集を1回ずつしか読まないよりもずっと力がつきます。繰り返しの目安は4、5回です。しかし、繰り返し読む勉強は退屈なので、繰り返しているうちについ斜め読みになってしまいがちです。斜め読みにならないようにするためには、読んでいるところを指でなぞりながら読むようにするといいでしょう。その際、指の動くスピードを一定にすると、読解力の重要な要素である速読速解力もついてきます。読むことに時間のかかるいちばんの原因は、一度読んだところをもう一度戻って読む癖があることです。
 作文力とその土台となる読書力は、短期間では身につきません。作文や読書は、勉強というよりも生活の一部とするようなつもりで勉強を進めていってください。
1月の学級新聞から(ふじ先生)
 ふじ先生の学級新聞1月号を転載します。



子どものころ、元旦に何かするたびに「初○○」「初△△△」と言って笑い合ったり、
一月二日の夜には、どんな夢を見るかわくわくしながら眠りについたものです。

夢・ゆめ。 今年、こんなふうにしたいと思うことはありますか?
わたしが最近手に取った本に、こんな文章がありました。

「子どもがいつかは大人になり、何らかの方法で生活の糧を得なければならないとしたら、できれば嫌いなことをいやいやながらやるよりも、好きで好きでしようがないことをやるほうがいいに決まっています」 『13歳のハローワーク』/村上龍

 わたしは、本を読むのが好きです。 小学生のころは、よく図書館に通って兄弟のぶんの貸し出しカードまで使って、ムシャムシャとキャベツを食べる青虫のように本を読みました。 中学生のころは、授業中に(笑)、高校生の時は通学の電車の中で、大学生の時は、授業を忘れて(あらら)。 社会人になって本が好きなだけでは物足りないと思って、他の勉強を始めたりしたのですが、いつしか引き寄せられるように文章の世界に戻ってきてしまうのです。
 誰かにほめられたからとか、賞をもらったからとか、そういうきっかけがなくても、ひとりでにその方向を向いている、ただ好きである。 あなたにとっての「それ」は、もう見つかりましたか?

好きと出会い続ける。 そのためには、まず、夢中になれる時間をもちましょう。 そして、できればひとりでその時間を過ごしましょう。
好きなことで得た力は、いつかどこかで芽を出します。うまくいけば「生活の糧」としてその人をささえることもあるでしょう。

最初の一歩は、「あっ、いまが好き。」
この新しい一年の間に、何回、気がつくかな。
 
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