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  振り替え授業について
  読書感想文の書き方
   いまの感想文指導には無理がある
   子供まかせでは書けない
   じょうずな感想文を書くコツはあるが
   書き方の手順「まず本選び」
   書き方の手順「次に字数配分」
   書き方の手順「1日目の400字」
   書き方の手順「2日目の400字」
   書き方の手順「3日目の400字」
   書き方の手順「4日目の清書」
   書き方の手順「できたらほめる」
   教室では宿題の感想文の個別指導はしません
  「木の皿」(くりくり/くり先生)
  ものの名前を知らないよりは(スズラン/おだ先生)
  「信じる力・努力しつづける力」(かな/やす先生)
 
言葉の森新聞 2006年8月2週号 通算第946号
文責 中根克明(森川林)

振り替え授業について
 振り替え授業の受付時間は下記の通りです。
(月〜金) 9時〜19時50分 
(土)   9時〜11時50分

 振り替え授業の予約はできません。作文が書けるときに直接教室にお電話ください。 なお、夏休み中は、大変混み合っておりますので、20分くらいお待たせすることがございます。                                                                               
読書感想文の書き方
いまの感想文指導には無理がある
 感想文が楽に書けるようになるのは、年齢的には小学5年生からです。小学1〜4年生は、全体の構成を考えて書くという能力がまだ育っていませんから、大人が全体の方向づけをしなければ自分で本の流れに合わせて感想文の流れを考えていくという書き方はできません。
 また、小学1〜4年生の場合、似た話がうまく見つかる場合と見つからない場合とでは、作品の出来に大きな差が出てきます。大人(親や先生)が近くにいて、「この次はこんなことを書いたらいいよ」とときどきアドバイスをしてあげなければまとまった作品を書くことはできません。
 なぜ学校のふだんの授業で感想文を指導せずに、夏休みの宿題というかたちで感想文を書かせるかというと、感想文は(特に低中学年の場合は)、一人ひとり別のアドバイスをしなければならないからで、30人から40人を相手にした一斉指導ではそういうアドバイスはできないからです。
 感想文の宿題を書かせる時間があれば、その時間を読書に充てた方がずっと子供のためになります。
子供まかせでは書けない
 「なんでもいいから自分で好きな本を選んで、自分で好きなように書いてごらん」ということでは、感想文は書けません。小学生の場合は、大人がなんのアドバイスもせずに感想文を書かせるぐらいなら、感想文を書くことそのものをしない方がいいのです。単に字数を埋めるだけの感想文は、何の勉強にもなりません。
じょうずな感想文を書くコツはあるが
 書くからには、じょうずな感想文を書いて、コンクールなどに入選したいとはだれもが思うことです。作品の出来具合の半分は、似た話などの題材の部分に支えられています。また、もう半分は、感想の部分の一般化の深まりに支えられています。ですから、感動のある似た話が連想できるような本を選び、感想の部分で大人の人が一般化の手助けをしてあげれば、じょうずな感想文が書けます。
 しかし、こういうかたちで親や先生がアドバイスをすることは、子供にとってはあまりうれしいことではありません。また、親や先生に支えられてじょうずな作文を書いても、教育的な意義はありません。ですから、感想文の目標はじょうずな作品を書くことにではなく、ひとまとまりの本を読み、ひとまとまりの文章を書く練習をするということに置くべきです。
書き方の手順「まず本選び」
 まず本選びですが、子供が「この本、おもしろいから書きたい」と言うような本が必ずしも書きやすい本であるとは限りません。子供が自分なりに似た話を見つけることができたり、想像をふくらませたりできるような本が書きやすい本です。この本選びは、大人がアドバイスをした方がいいようです。少なくとも、子供には「似た話や想像した話が書けるような本が、感想文の本としては書きやすいよ」と言ってあげるといいと思います。
 書きたいテーマが決まっているときは、インターネットの書店を利用して関連する図書を数冊用意すると話題が広がって書きやすくなります。
書き方の手順「次に字数配分」
 感想文の宿題は、原稿用紙3枚程度(400字詰めで1200字)の分量で指定されることが多いようです。これだけの分量を1日で書くというのは大変です。無理のない字数配分は、1日1枚(400字)です。感想文の宿題をするために、4日間の予定を立てて、1日目に400字以上、2日目も400字以上、3日目も400字以上と書いていって、4日目に全体を通して要らないところを削り、清書するという予定を立てれば無理なく書くことができます。
書き方の手順「1日目の400字」
 本のはじめの方から一ヶ所、似た話や想像した話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、自分の似た話を書き、最後に「たぶん」「きっと」「もしかしたら」などという言葉を利用しながら、自分の感想を書きます。
 本の引用(1)→似た話(1)(もし…だったらと想像してもよい)(たとえも入れる)→感想(1)(たぶん、きっと、もしかしたらなどと考えてみる)
書き方の手順「2日目の400字」
 2日目も同じです。本の中ほどから一ヶ所、似た話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、似た話を書き、感想を書いていきます。
 本の引用(2)→似た話(2)→感想(2)
書き方の手順「3日目の400字」
 3日目も同じように、本の終わりのほうから一ヶ所選んで書いていきますが、最後の感想のところがちょっと違います。1日目、2日目は、引用した小さな箇所の感想でしたが、3日目は本全体についての感想を書いていきます。
 小学5・6年生の生徒の場合、この感想は、「○○は(人間にとって)……である」というような一般化した大きな感想を書いてまとめます。この感想の部分は、お母さんやお父さんと話し合いをして、子供自身の考えを深めていくといいと思います。そして、「私はこれから」などという言葉を使い、この本から得たことを自分のこれからの生き方にどうつなげていくかを考えてまとめます。中学生の場合は、結びの5行に「光る表現」を入れていくとよいでしょう。
 本の引用(3)→似た話(3)→大きな感想(○○は人間にとって……。私はこれから)
書き方の手順「4日目の清書」
 4日目は清書です。お母さんやお父さんが全体を通して読んであげると、要らないところが見つかると思います(書いた人自身には、要らない部分というものはなかなかわかりません。これは大人でも同じです)。この要らない部分を削ります。次に、書き出しの部分に本の引用として情景描写の部分を入れられれば、書き出しの工夫ができます。これは無理のない範囲でやっていくといいでしょう。
書き方の手順「できたらほめる」
 書いている途中でも、書き終えたあとでも、親や先生が「これは、おもしろいね」「それは、いいね」と、子供の書いた内容のいいところやおもしろいところをどんどん認めてあげることが大切です。多少おかしいところや変なところがあっても、子供が書いた内容をできるだけ尊重してあげてください。これと反対に「これは、こうした方がいいんじゃない?」「そこは、ちょっとおかしいんじゃない?」などという否定的なアドバイスをすると、勉強でいちばん大事な子供の意欲をそぐことになります。大事なことは、いい作品を仕上げることではなく、手順にそってできるだけ自力で書く力をつけることです。
教室では宿題の感想文の個別指導はしません
 感想文の指導には、生徒ひとりずつ異なるアドバイスが要求されます。更に作品として完成させるためには、書いている途中にも頻繁にアドバイスをする必要が出てきます。このような対応は、普段の勉強の中ではできませんので、夏休みの宿題のための感想文指導は、教室では行ないません。
 宿題として感想文を提出しなければならないという事情のある方は、教室で練習した長文の感想文で似た話のよく書けたものをベースにして、ご家庭で書き直していかれるといいと思います。
 また、どうしても書いた作品を見てアドバイスをしてほしいという場合は、担当の先生ではなく、言葉の森の本部に直接ファクスでお送りください。折り返しファクスとお電話で説明します。
「木の皿」(くりくり/くり先生)
 先日、『木の皿』というお芝居を見に行って来ました。
 あるアメリカの田舎町にお爺さんと息子夫婦と孫娘の四人家族が住んでいます。お爺さんは、頑固で、しかも目が殆ど見えないので、食器をすぐ割ってしまいます。だから、陶器のお皿ではなく、木のお皿で食事を出されているのです。お嫁さんは、「お爺さんの世話をするのに疲れた。限界だ。」と言って、お爺さんを老人ホームに入れようとします。息子は、父親を愛しているのですが、奥さんに「お爺さんが出て行くか私が出て行くか。」と言われると、どうすることもできません。お爺さんを深く愛している孫娘は、二人で家を出て暮らそうと言い出します。その言葉を聞いたお爺さんは、勇気を持って自分の運命と戦う決意をし、「あんな所に行く位なら死んだ方がましだ。」とまで言ったホームに、一人で去って行くのです。呆然とする家族。孫娘は、「お爺さんの使っていた木の皿を頂戴。」と言います。母親が「どうするの?」と聞くと、「お母さんが年を取ったら使うのよ。」と言うのでした。
 様々なテーマを含んだ舞台でした。あらすじを書くと、お嫁さんが悪人のようですが、彼女の追い詰められた心理も良く理解できて、自分がどの立場にもなり得るのだと、納得できる芝居になっていました。
 特に印象的だった言葉は、「…おまえも、わしがしたように、こどもたちをだっこするだろう。そして小さな顔を覗き込むと、子供はおまえを見てにっこりする。そうしておまえは愛の本当の意味がわかるようになる。それからある日、子供たちが大きくなって、おまえに対して心を閉ざす。こうしておまえは悲しみの本当の意味を知る。その愛を受け入れて生きてきたように、今度は哀しみを受け入れて生きていくことを学ばねばならんのだ。」
 お爺さんの愛情と苦しみが胸に響いてくるような台詞でした。
 人が生きていくためには、人間としての尊厳を尊重されなければなりません。それは、相手が年寄りであっても、小さなこどもであっても同じことだと思います。お爺さんは、家族の中で一人木の皿を出されることによって、自分が軽んじられといると感じ、プライドを傷つけられていました。けれど、孫娘の言葉によって、まだ自分を愛してくれている人がいるのだと、その人を守るためにも戦わなければならないのだと決意したのですね。
 結末は、ハッピーエンドにはならなかったけれど、彼は、持ち前の頑固さと意志の強さできっと老人ホームを明るくハッピーな所に変えてしまうのだと、一人でそう決めて、劇場を後にしたのでした。
ものの名前を知らないよりは(スズラン/おだ先生)
 暑くなってきましたが、長い夏休みも始まりますね。
今年の夏休みにはこんなことをしっかりやってみたいとか、新しいことに挑戦してみたいとか、夏休みのように長い休暇でなければできないことを計画しているのではないでしょうか。暑いときですが、この暑さも味方にして、一回り大きくなって9月を迎えてほしいと思っています。
 ところで、先日、友人と夏の思い出などを話しているうちに、夏祭りの話題になりました。その中で、夏祭りにはつきものの「金魚すくい」の話になったのはいいのですが、金魚すくいに使うあのすくう道具の名前を誰も知らなかったのです。もちろん、私も。そこで、「ものにはみんなちゃんと名前が付いているわねぇ」ということになり、名前を知らないものがいかに沢山あるのかを認識しました。
みなさんも、一人一人名前があるわけですし、「あの人」と言われるより、ちゃんと名前を呼んでもらったほうが気分がいいですし、「○○さん」と、名前で呼ぶのが礼儀ですよね。そこで、今月は、私が分からなかったものの名前をいくつか挙げて、正式な名前を書いてみたいと思います。皆さんから知っているという言葉が返ってきそうですが、ちょっと調べてみました。

1)前述の金魚すくいの紙のお皿のようなもの →「ポイ」
  これは、全国金魚すくい大会事務局によると、この「ポ  イ」はポイ捨てのポイなのだそうです。金魚をポイと投げ入れるからという説もあるとか、「ポイ」という名前は覚えやすいですね。

2)アイスクリームが入っている紙のカップの名前 →「デキシーカップー」
  はじめ、アメリカのムーアという人が街角で冷たい水を売るために考案したのだそうですが、残念ながら水は売れず、紙カップは「衛生カップ」として使われ、ムーア自身がアメリカ南部を指す「デキシー」という愛称をつけて使っているうちに広まっていったのだそうです。

3)食パンなどの袋についているプラスチック板状の留め具 →「クロージャー」
  正式名が「クロージャー」で、業界では「クイックロック」とも言うそうです。初めはパンの袋が多かったそうですが、この頃はさまざまな食品の袋に使われていますね。

4)クッキーの缶や食器の箱に入っているプチプチのシート →「気泡緩衝(かんしょう)シート」
  空気が入っている小さな丸いふくらみを、プチプチとつぶして遊んだことがあるでしょう。正式名称は「気泡緩衝シート」だそうですが、エアキャップ、プチプチという登録商標されている名称もあるそうです。気泡緩衝シートより、プチプチのほうがなじんでいるかもしれませんね。

5)電化製品のコードなどをまとめているビニールテープ →「ツイストタイ」
  ビニールテープでサンドイッチされた針金製のリボンが、この頃ではいろいろなところに使われていますね。ねじって使うので、ツイストタイというのだそうです。

 これらは「知っているようで知らないものの名前」という本を参考にしましたが、正式な名前を知らずに使っていたものがなんと多いことか、むしろ名前を知っているほうが少ないような気がしてきました。部品の名前も絵入りで詳しく書いてある本でしたので、それらを見ながら名前を知ることができ、ちょっと得をしたような気持ちにもなりました。

 今年の夏祭りに金魚すくいがあったときは、一本の「ポイ」で何匹の金魚がポイポイすくえるのか、腕だめしをしてみてください。それでは、楽しい夏休みを過ごしましょう。
「信じる力・努力しつづける力」(かな/やす先生)

知りあいの息子さんのお話です。

その息子さんが6年生のころ、とても憧れている中学がありました。
彼はぜひその中学に入りたいと思い、塾に通い、毎日毎日勉強しました。
ところがなかなか成績はのびません。
その中学は、難関といわれている中学で、どう考えても今の彼の成績では無理なのです。

お母さんはなやみ、彼に言って聞かせました。
「あなたの成績では、その中学は無理だわ。塾の先生もそうおっしゃっているでしょう?
他にもいっぱい、いい中学があるんだし、別の学校を受験しようよ」
すると彼はポタポタとなみだを落とし、首を横にふりました。
「いやだ。だって、オレそこの中学に受かるもん」
「受かるもんって……、ほら見てごらん。偏差値にして、こんなに足りてないんだよ」
「でも、オレは受かるもん」
と、彼は言いはりました。
「なんで? どうしてそう思うの?」
「どうしても」
「だって、ほら、成績のデーターが……」
「だけど、オレ、受かるもん」
なんべん説得しても、同じでした。彼は、「受かるもん」としか言わず、もくもくと勉強を続けています。
しかたなくお母さんは、決心しました。
そこまで言うなら、受けさせよう。すべることはわかっているけど、とにかく受けて落ちれば彼も納得するだろう。

試験当日、彼は遠足にでも行くような顔で、家を出ました。
たくさんの、賢そうな受験生たちを見ても、いっこうにひるむ様子もなく、
楽しげに試験会場に消えていきました。
そして翌日の合格発表。彼の受験番号はしっかりと、掲示板に張り出されていたのだそうです。
驚くお母さんに、彼は言いました。
「ね、受かるって言ったでしょう?」と。

「あの子ったら、まるで合格するのがわかってたみたい」
と、そのお母さんは話してくれました。
「とにかく、信じこんでたみたいなの。ぜったいに自分は合格するって」
彼の偏差値はたしかに低かったけれど、それを補って余りある別の才能がありました。
それは、信じる力。あきらめずに、努力しつづける力。
きらめくような才能なんかなくなって、このふたつの力さえあれば、たいていの望みはかなうのですね。
みなさんも、もし夢があるなら、信じて努力を続けてみましょう。
きっと道は開けます。
 
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