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本質教育、実力教育、創造教育、文化教育(その3)  2014年12月21日  No.2275
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■実力教育

 実力教育とは、時間をかけ、量を積み重ねる教育です。
 例えば、昆虫が好きな人は、昆虫の本を読み、昆虫を観察し、採集し、昆虫のことだけに人一倍時間をかけて取り組みます。人間の実力とは、その人が何に時間をかけたかによって決まってきます。動物好きな人、物づくりの好きな人、読書好きな人、料理の好きな人、音楽の好きな人など、人間にはさまざまな好みがあります。その好みを時間をかけて伸ばしていくことが、その人の実力になります。

 ところで、現在の社会は、その土台に豊富な知識があります。膨大な知識によって支えられた知識社会が現代の社会です。だから、どの分野に進むにせよ、その土台としての知識を身につけなけければなりません。
 その知識を身につける方法のひとつが読書です。この読書は、理科や社会の勉強も含めた広い意味の読書です。
 そして、この読書の知識を支えるもうひとつの方法が経験です。この経験は、実験や観察や調査なども含めた広義の経験です。

 本質教育で身につけた基礎学力の上に身につけるものは、受験のための準備教育ではなく、まずこの実力教育です。
 低学年で本質教育がよくできた子は、中学年から受験教育の先取りをするような形の勉強に向かいがちです。しかし、受験教育は、受験期の1年間で集中して取り組む方が能率のよいものです。
 もちろん、受験期の1年間に受験教育に集中するためには、本質教育を学年を超えて半年間か1年間先に進んでおく方が有利です。しかし、それは受験勉強の難問を先取りすることではなく、基礎的な学力を学年を超えて先取りしておくことです。
 そして、基礎的な学力を身につける本質教育は、特に誰かに教わらなくても教科書や参考書で独学できるものなのです。

 受験期の勉強の仕方は、まず受験する学校の過去問をもとに、その子がどの分野が苦手かを分析することから始まります。
 なぜ苦手を見るかというと、現在の受験勉強の評価の多くは、受験科目の総合点で行われているからです。総合点を高くするためには、点数の低い科目を高くするのが最も能率のよい方法です。
 力を入れる科目や単元が分析できたら、次に、そのための教材を探します。この教材選択は、1年間使うものですから、時間をかけて慎重に行う必要があります。多少の無駄は覚悟の上で、よいと言われている教材をすべて取り寄せ、少しずつやってみる中で、その子に最も合ったもの1冊に絞り、その他の教材は使わないという選択の仕方をします。教材選びは、投資と割り切ることが必要です。
 あとは、その1冊に絞った教材を5回を目安に繰り返し読み、完璧に自分のものにすることです。途中でときどき過去問に立ち戻り軌道修正を行う必要がありますが、基本は最初に決めた教材を確実に仕上げることです。
 こういう勉強は退屈なものですから、1年間又は半年間勢いをつけて脇目もふらずに取り組むものです。受験勉強は、長い期間をかけてこつこつやるよりも、短期間に集中した方が効果が高いのです。

 受験教育は、受験期の1年間に集中して取り組むものですから、本質教育のあとに行う教育は、受験教育ではなく、学年の少しずつの先取り教育と実力教育です。
 低中学年の子は、基礎的な勉強が終わったら、そのあと難問を解かせて受験勉強の先取りをするような形の勉強をするのではなく、基礎的な勉強の範囲で先の学年に進むとともに、読書と経験に力を入れていくといいのです。
 この読書と経験は、その時点での教科の成績にすぐに結びつくわけではありません。そのため、勉強の時間を優先し、読書や経験の時間を切り詰めてしまう家庭が多いのですが、本当は逆にしなければなりません。
 低中学年の勉強は、ほどほどにしていればよく、ほどほどの勉強の結果余った時間は、読書や絵画や工作や遊びや実験や旅行など、さまざまな経験に費やしていくことが子供の実力を育てることになります。
 この実力教育は、小学校時代だけでなく一生続くものですが、その発端は小学校時代の豊富な読書と経験によって培われるのです。

■創造教育

 教育の最も重要な役割は、創造性を育てることにあります。それは、創造こそが、人間の生活に深い喜びを与えるものであるとともに、社会を本質的に豊かにするものだからです。
 本質教育で育った幹と枝の先に、実力教育で多くの葉が茂り、その葉の間から咲く花が創造というふうにたとえることができます。

 ところが、この創造教育というものには、これまで確立した方法論がありませんでした。創造は、偶然の天才によってもたらされるものだと考えられていたからです。
 しかし、世界には、創造性にたけた民族がいます。それが、ユダヤ人と日本人です。
 ユダヤ人の創造性が高いということは、ノーベル賞の受賞者数などで多くの人に認められています。日本人の創造性が高いというのは、江戸時代の長い鎖国の期間にもかかわらず、その時期に欧米で生まれた文化に対比できる文化を独力で生み出していたことに表れています。
 この二つの社会で行われていた教育を意識的に推し進めていくことが創造教育の方法になります。

 その方法の一つが読書と対話です。しかし、その読書と対話には、多くのメタ言語が含まれている必要があります。抽象度の高い言葉、造語で言えば「難語」というような言葉が含まれている読書と対話が、認識の構造化を進める道具となります。
 もう一つが、これも造語で言えば「難読」です。語彙だけにとどまらず、思考の枠組み、つまりさまざまな独創的なパラダイムを身につけることが、思考の構造化を進める道具となります。本格的な難読に取り組めるのは大学生になってからですが、小中学生の間には、問題集読書のような形で難読の力をつけていくことができます。
 この難語と難読を身につけるためのもう一つの方法が、音読とその発展したものとしての暗唱です。抽象的な構造を持つ語彙と思考の枠組みを秘めた文章を暗唱することが、これからの暗唱教育になり、それが創造教育の一つの重要な方法になります。

 読書、対話、音読、暗唱で読む力の構造化を進める一方、書く力でも、思考の構造化を進める必要があります。それが作文です。
 その作文も、ただ事実に則した文章を書くだけでなく、構成図という方法で構想をふくらませ、構成の明確な文章を書くことに力を入れていく必要があります。
 また、作文をただ書くだけで終わらせずに、絵や写真や音楽や動画などのマルチメディアで立体化し、互いに発表し合うようなプレゼン作文発表をするような機会が必要になります。

 このような読書作文教育のトータルな展開が、これからの創造教育の中心になっていきます。

■文化教育

 創造教育の先にあるものが文化教育です。この文化教育には、日本の歴史や文化を継承する教育のほかに、音楽や絵画の教育、心身の教育、思いやりの教育、自然に親しむ教育、礼儀作法の教育、幸福に生きる教育などがあります。
 この文化教育の一つとして、先に挙げた「枕草子」の「春は、あけぼの」を味わうような教育があるのです。

 人間は、歴史と文化の中で生きています。
 グローバルで無色透明などの国にも共通する教育というものも確かに必要です。本質教育のかなりの部分は、そういう普遍的な教育です。また、受験教育のほとんども、普遍的な教育です。だから、本質教育と受験教育についていは、世界共通の試験なども可能なのです。

 しかし、実力教育は、身に付けるために時間をかけるという点で、その人の個性や関心と分かちがたく結びついています。
 また、創造教育は、方法論には共通性がありますが、何を創造するかはその人の個性によって大きく異なります。それは、作文で言えば、同じテーマで同じ構成で同じ項目で書きながら、それぞれに内容の違うものが生まれるのと同じようなことです。

 文化教育は、その教育自体に意義があるとともに、実力教育や創造教育で育てた個性に、文化の色彩をつけることにもう一つの意義があります。
 ここで形成された新しい創造文化が、過去の日本文化を引き継ぐとともに、未来の新しい日本文化の土台となり、それがその文化の中で生きる日本人の新しい感性となっていくのです。

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