キンモクセイ の山 8 月 2 週 (5)
○味を感じる仕組み   池新  
 物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今食べたものが何か、当てることができるでしょう。また、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい」などと、言葉で表すことができます。この味は、いったいどこでどうやって感じているのでしょうか。
 味を感じる体の部分は舌である、というのは、よく知られていることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと舌を出してなめてみます。この舌をよく見てみると、表面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつぶが、味蕾(みらい)と呼ばれるものです。
 「蕾(らい)」というのが「つぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾(みらい)は花のつぼみのような形をしています。味蕾(みらい)は舌の表面だけではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから、舌だけで味を感じているのではないようです。
 ところで、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわかり、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同じです。肉食動物は、生肉(なまにく)をあっという間に食べてしまうため、それほどおいしさを味わう必要がなかったのです。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言われています。
 みなさんの家にも、おいしいものしか食べない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もできなかったにちがいありません。∵

  言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(Μ)