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現在の経済情勢と子供の教育2  2011年12月26日  No.1383
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 これまでの経済は、マネーを持っている人の意向が反映した経済でした。それは、政治の面では金権政治という形で現れていました。

 しかし、経済危機が深化する中で出てくるのは、マネーの意志ではなく、国民の集合意識としての国家の意志です。今の世界経済の中では、国家の意志は単独で自国の利益を追求するよりも、ブロック化された枠内で自国の利益を追求していくようになるでしょう。

 ヨーロッパは、EUの分裂ではなく、EUの更なる統合強化の方向に進むでしょう。アジアも、アジアの中での結びつきを強化していく方向に向かうでしょう。

 ブロック経済の結びつきの強化と並行して、国内では統制経済が進行するように見えます。しかし、今日のネットワークの時代に、統制が長期間徹底できるとは考えられません。

 統制経済は、最初のうちこそ、預金封鎖、資産課税、配給制度などの形で現れますが、架空の需要のもとになっていた規制に支えられた古い体制が勢いを失ったあとは、統制の役割はなくなります。

 統制が新たな利権の温床になる前に、統制とは異なる原理を経済の中心に据えなければなりません。それが、ネットワークの中で生まれる自助の文化です。


 自助の文化とは、一人一人が、消費者としては本当に欲しいものを求め、生産者としては自分が他の人から本当に求められているものを作る文化です。だから、未来の社会で人間が生きていく条件は、自分がみんなに喜ばれるような何かを提供することができるかどうかにかかってきます。資産の量ではなく、貢献の量が問われる社会になっていくのです。

 教育もまたそうです。勉強は、受験に合格するために行うものではなく、自分が将来社会に何かを貢献するために行うものになっていくでしょう。

 これまでの勉強の基本は、志望校の過去問に合わせたものでした。だから、志望校の試験科目が英、国、社だけで、数、理がなければ、数、理の勉強はしなくていいと思われていました。そして、点数を上げるためには、受験する教科の重箱の隅の知識もしっかり身につける必要があったのです。

 しかし、自分の将来の仕事のために勉強するとしたら、勉強の仕方も当然変わってきます。新しい勉強のスタイルは、全教科を万遍なく、しかし、重要なポイントをしっかり身につけ、そして自分の興味関心のあることについては徹底してこだわるようなものになるでしょう。


 バブル崩壊の影響で山一證券が倒産したとき、優秀な大学を出た優秀な社員がたくさんいましたが、多くの人が再雇用に苦労しました。そのときに言われた言葉が、「優秀な人なら、いくらでもいる。欲しいのは自分の持ち味のある人だ」ということでした。

 肩書に支えられた社会は、今回の経済危機で大きく後退するでしょう。それは、明治維新が、武士階級の小さな肩書の差を一掃したことと似ています。古い社会の無駄がなくならなければ、新しい社会の芽は出てこないのです。

 新しい時代は、新しい需要を作り出す人によって作られていきます。新しい需要とは、これまでの規制下の制度で作られた架空の需要ではなく本当の需要に根差したものです。

 新しい需要を作り出せる人は、同時に、自分が新しい何かをしたいと思っている人です。

 これからの子供の教育で大事なことは、いつも新しい何かをしたいと思っている子供たちを育てることです。そして、子供たちは模倣によって成長する存在ですから、何よりも身近な大人が新しい何かを求めて生きていくことが大切になってくるのです。


 教育の分野にも古い体制は残っています。教育の本来の目的は、子供たちの実力を育てることですが、実力以外のものが目的のように遂行されている面があります。そのひとつは、受験に合格させることを目的にした教育です。

 もちろん、実力をつけた結果として合格するのであれば問題はありませんが、受験をめぐる情報が精緻になるにつれて、実力以外の要素が合否を分けるような面が大きくなっています。

 例えば、ある試験に合格するためには、その試験の過去問の分析が欠かせません。しかし、受験する子供には、分析のためのデータや方法がありません。すると、そういうデータを利用できる子供の方が利用できない子供よりも、合格する可能性が高くなります。このため、教育は、不必要にお金のかかるものになっています。

 新しい教育とは、教育を本来の実力をつけるための教育に戻すことです。そのための方法のひとつは、子供たちの教育を家庭と地域を基盤としたものにすることです。教育を学校だけに任せるのではなく、学校と家庭が連携したものにしていく必要があるのです。

 他人に委託する教育から、自分たちで工夫する教育、つまり自助の教育に変えていくことが、これからの新しい教育に求められてくると思います。

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森川林 20111228  
 最初に書いた記事で、「リーマンショックの影響で山一証券が」となっていたのを訂正しました。
 以下は、言葉の森新聞に書いた補足説明です。

 バブル崩壊(1990年ごろ)→山一證券(1997年)→リーマンショック(2008年)です。

 と書いていてふと思ったのが、後世の歴史は、1990年の日本のバブル崩壊と、その後のアメリカのITバブル崩壊と、その後のリーマンショックと、今起きつつある経済危機を、同じ流れのものとして記述するだろうということです。
 共通しているのは、生産活動に使うのでは使いきれなくなったマネーをギャンブルにつぎこんで、最初はうまく行っているような気がしていたものの、結局返せなくなったということだからです。

 この出口は、ひとつしかありません。それは、使いきれなくなったマネーを新しい産業の創造にふりむけることです。
 その新しい産業とは、昔ながらの公共事業の延長にはありません。タヌキしか通らないような道に高速道路を作っても仕方ないのです。(タヌキさんごめんね)

 新しい産業は、上からの指示で作られるような大きな産業ではなく、ひとりひとりの人間がその産業に従事することを喜びとするような、下から作っていく産業です。

 私は、そのひとつとして森林プロジェクトを考えています。人間が、その地域で、周囲の人に喜ばれながら自分の提供する何かを受け取ってもらえるような仕事です。
 そして、それを受け取った人が、自分も同じように周囲の人に喜ばれる何かを提供できるのだと気づくような仕事です。

 その芽は、実は既にいろいろな形で現れています。その具体的な話を、今後書いていきたいと思います。

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