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これから来る経済危機にどう対処するか 3――必需品の経済から文化の経済へ  2015年12月22日  No.2503
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 これからの文化とは、ある意味で教育の文化です。
 文化の中には、観光のような文化もあります。観光は、新しい経験を得られるという魅力を持っています。しかし、観光がどんなに好きでも、それを生かして自分が供給の側に回ることはなかなかできません。
 これに対して、新しい何かを修得するということは、修得自体に魅力があるとともに、それを生かしてやがて自分が供給の側に回ることができるという魅力があります。
 したがって、教育文化の教育とは、机上の知的な教育というよりも、むしろ全人的な修行のような教育になります。
 こういう新しい仕事を作っていく個性がこれから求められてくるのです。

 日本の社会にこういう教育文化の流れを作っていく方法は簡単です。
 最初の呼び水を作るために、金融緩和を直接国民に回せばいいのです。
 例えば、国民1人について年間百万円、自分の教育や修行のために使う費用を渡すようにすれば、各人はそれぞれの個性に応じて教育文化の消費を始めるでしょう。
 すると、その分だけ、その教育文化を供給するための仕事が生まれます。

 最初のうちは、その教育文化はポピュラーなものに限られているでしょう。英会話とか書道とか絵画とか音楽とかいったものです。
 しかし、消費と生産が回り始めると、そこからだんだん個性的なものが生まれてきます。英語よりもアジアやアフリカの少数民族の言語とか、同じ書道でも特異な個性を持った流派の書道とか、あるいは新しい材料を使った絵画、新しい楽器を使った音楽などです。

 これまでは、教育文化に対する消費は、娯楽費や教養費と呼ばれる単なる消費でした。
 しかし、教育文化に対する消費が長期間継続的に大量に続く見込みがあれば、その消費は、その文化を習得して自分もやがて供給する側に回るという投資になります。
 いったんその流れができて文化として成立すれば、もう外からの金融緩和という資金の注入は必要なくなります。

 例えば、ゴルフやサッカーや野球やバレエやピアノやバイオリンや茶道や囲碁や将棋は、既に文化として成立しているので、外部からの資金援助がなくてもそれ自体で需要と供給の回転が成り立っています。
 しかし、何もないところに、一からゴルフやサッカーを作ろうとすれば、その困難さは容易に想像できます。
 文化というものは、そういうものなのです。

 衣食住のような基本的なものは、自然発生的に需要と供給が始まります。そういう自然な需要の延長上に、今までの工業生産がありました。
 しかし、衣食住とその延長にある工業生産物は、既に人類の供給力が人類全体の需要力を上回るようになりつつあります。それは、必需品の消費は、必需品であるがゆえの上限があるからです。

 文化の消費はそうではありません。必需品でないために、需要と供給は文化的に創造しなければならない代わりに、その上限もありません。
 いったん文化として成立すれば、その需要はいくらでも個性化し、いくらでも高度化していくのです。

 今、日本経済を論じる人の多くは、少子化と高齢化が日本の経済発展の限界を作っていると考えています。
 だから、日本に移民の受け入れが必要だという発想をしたり、人口の多い中国やインドがこれからの世界をリードするという発想をしたりしてしまうのです。

 これは、これまでの経済学が主な対象にしていた必需品のレベルで経済を考えているためです。
 教育文化のレベルで経済を考えれば、少子化も高齢化も何の障害にもなりません。文化の消費の上限は、量が決めるのではなく質が決めるからです。

 必需品だけに関心のある人がどれだけ大勢いても、文化の経済は発展しません。逆に、文化の個性に関心を持つ人が増えれば、文化の経済は発展します。
 すると、もはや人間の関心は、経済の問題ではなくなってきます。
 これから起きる経済危機は、このような新しい社会に移行するための一時的な生みの苦しみにすぎないとも言えるのです。

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政治経済社会(63) 

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森川林 20151222  
 日本経済の停滞の原因を少子化と高齢化によると考える人は、経済というものを必需品のレベルでしか見ていません。
 必需品であれば、人口が若くと多くて貧しいほど経済は発展します。
 だから、日本にも移民を入れることが必要だと説いたり、中国やインドのような人口大国が次の世界をリードすると考えたりするのです。
 
 しかし、これからの経済は文化の経済です。
 文化にとって必要なのは、量よりも質、若さよりも年季、貧しさよりも豊かさです。
 だから、日本の少子化と高齢化は、これからの経済発展のむしろ要となるのです。

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