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旧体制から新体制へ―現代を明治維新とのアナロジーで考える(その2)  2010年8月7日  No.986
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 現代が、この明治維新の前夜と同じだというとき、そこで否定されようとしている旧体制とは何で、復古運動を通して新しく生まれようとしている新体制は何でしょうか。私はそれを、次のように考えています。

 旧体制とは、専門化による分業で生まれた膨大な経済力と、それに伴うマネーを基準とした大きな無駄の体制です。復古的な新体制とは、自主的な協業で生まれる等身大の経済力と、エコロジーを基準とした自然と共存する体制です。

====△前回まで話。====

 新体制がなぜ復古的かというと、現代の強欲な資本主義を否定する契機が、まず江戸時代や縄文時代の社会や文化の中に見出されるだろうからです。しかし、それは、単に昔に戻ることではありません。

 専門化した分業が最も優れた形で生かされた工業に関しては、資本主義が生み出した生産力をフルに利用します。また、ネットワークによってもたらされた自由な情報の流通というインフラもフルに利用します。

 高度な工業生産力と強力な情報ネットワークの上に、マネーのための社会ではなく、人間のための社会を生み出すというのが、新体制の中身です。江戸時代や縄文時代は、低い工業生産力と弱い情報ネットワークの上に、人間のための社会が追求された時代だったからです。

 具体例を更に続けます。

 これまでの医療は、社会生活から切り離された個人をただ治すための医療でした。治療することが自己目的化してそれが分業によって担われたために、医療費が社会全体とのバランスを失い高額化していきました。例えば、風邪やインフルエンザは寝ていれば自然に治るのに、熱を下げる、頭痛をなくす、咳を止めるなど、それぞれ専門化した治療が行われることによって、より大きなGDPの無駄を生じるようになっていました。

 これからの医療は、治すための医療ではなく、健康になるための医療です。インフルエンザにかかってもすぐに回復するような身体を日常生活の中で作り上げていく医療になるのです。

 これまでの教育は、受験のための勉強であり、勉強のための教育でした。教師は、勉強を教えるプロとして専門化し、その専門性を発揮するために、その教科に特化した先生が教える仕組みになっていました。その結果、学校という入れ物が必要になり、その入れ物の中で一斉授業が行われるという形が一般化していました。

 これからの教育は、受験のためではなく自己の向上のための勉強になり、勉強のためではなく人生のための教育になります。教師は、ある教科の勉強を教えるプロではなく、その生徒にとっての人生の先輩という役割を持つようになります。生徒の人生の向上を目指すことが教育の目的になれば、教える場は、学校よりもむしろ家庭や地域になり、教育は限りなく文化に近いものになるでしょう。

 明治維新は、さまざまな紆余曲折がありました。当時を生きていた人々は、何がどう進んでいるかわからないまま、次第に旧体制から新体制への移行という大きな流れに乗っていきました。しかし、その大きな流れの中には、逆流や停滞もありました。

 現代も、旧体制から新体制という大きな方向は見えるものの、まだそれがはっきりした流れとして意識されるようになっているとは言えません。けれども、これからの時間の経過の中で、古い考えに基づいた社会はますます多くの面で行き詰まり、新しい考えに基づいた社会が次第に形を現してくるでしょう。

 「おじいさんのランプ」の主人公巳之助は、衰退するランプ売りを続けようとして多くの苦労をしました。同じように、明治時代になっても、まだ剣術や馬術の修行に熱心に取り組んでいた人もいるでしょう。同じことを、今、私たちがやっていないとは言えません。

 現在は、それぞれの人が自分の携わる仕事の分野で、新しく生まれるより人間的な社会の準備をしていく時期なのだと思います。今の仕事が、新しい時代を準備するものになっているかどうかを自覚しながら取り組んでいきたいと思っています。

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