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競争の教育から、独立の教育へ3  2011年5月2日  No.1252
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 新しい創造産業社会が生まれる条件は、既にいくつかあります。

 第一は、従来の工業時代の消費-労働サイクルの行き詰まりです。生産力の発展の究極の姿は、人間の労働を必要とせず、したがって雇用を必要としません。世界中で今、働く場所のない若者が生み出されています。不足と競争で回転していた社会がうまく回転を続けられなくなり、そのために今の回転とは異なる新しい回転を必要としているのです。

 第二は、豊かな生産力を持つ社会の登場です。かつて、自然の提供する豊富な木の実や貝や魚をとって暮らしていた縄文時代人のような生活が、今、工業生産力の発達によって復活しつつあります。まだそれが実現していないのは、これまでの人類の富のほとんどを、一部の国の一部の人間が膨大な軍事費に転用していたからです。

 第三は、ソーシャル社会(人間どうしの社会的な関係を中心に営まれる社会)の誕生です。独立起業ということを考えたとき、今までは資金力が大きなネックになっていました。それは、ひとつには、工業時代の産業には大きな資金を必要とするものが多かったからです。また、明治の勃興期や、終戦後の初期のころならいざ知らず、いったん経済が軌道に乗り出すと、工業社会では新たな参入の余地はほとんどありませんでした。サービス業も、初めのうちは資金力を必要としない分野が残されていましたが、大手の企業が生まれてくると、やはり宣伝や営業という資金力の部分で新たな参入は困難になっていきました。

 資本主義社会は、資本を動かせない者にとっては資本がネックになり、資本を動かせる者にとっては資本がキーになる社会ですから、資本の多寡によって固定化と独占化が進みがちな社会です。

 しかし、これに対して、人間どうしの社会的関係を基盤にしたソーシャル社会は、金銭を介した雇用契約や売買契約のかわりに、家族や友人や知人という人間のつながりに基づいて営まれています。

 ソーシャル社会でネックになり、またキーになっているものは、資本でも、また単なるソーシャルリテラシー(人間関係の技能)でもありません。自分とのつながりのある人たちに、新しい価値あるコンテンツを提供できるかどうかが最も大きなキーになっています。言い換えれば、ソーシャル社会の登場によって、だれもが、コンテンツさえあれば自分の仕事を創造できるようになってきたのです。



 以上のような条件によって、これまでの限られたイスを取り合う競争の社会から、自分の今いる場所で新しいイスを創造する独立の社会への転換が進もうとしているのが現代の状況です。

 しかし、ソーシャル社会で個人が提供する新しい価値あるコンテンツは、その人がそう決心しただけでは持つことはできません。これまでの競争教育の中で普通に勉強に励んでいるだけでは、あるポジションをめぐって人に勝つことはできても、オリジナルに自分のイスを作る力は育たないのです。

 社会が、競争社会から創造社会に移行することに伴い、教育も、将来独立して社会に新しい何かを創造する人間になることを目的としたものに変わっていかなければなりません。もちろん、小中学校の基礎教育の多くは、競争教育においても、独立教育においても、それほど大きくは変わらないでしょう。しかし、教育の目的が変わることによって、いろいろなところで変化が起きてきます。

 例えば、子供の励まし方を例に挙げると、競争教育においては、これまでは苦手な教科があると、「それができないと、みんなに負けるから、いいところに入れない」という脅迫的な励まし方が中心でした。独立教育においては、苦手な教科があったときも、「それができると、将来の自分の仕事に使えるから、自分らしくがんばろう」という創造的な励まし方になります。

 これまでは、我慢する勉強に適応できる子供が、いい成績をおさめていました。しかし、我慢に適応できるというのは、しばしばバランスがとれていないことも意味していました。勉強がよくできる人の中には、勉強しかできないという人もかなりいたのです。

 これからの勉強は、将来、その勉強を自分の仕事に生かすという喜びの勉強が中心になります。その喜びの勉強を通してバランスのとれた人間を育てることが教育の目的になっていくのです。



 これまで、教育の四つの大きな変化を書いてきました。それは、「受験の教育から、実力の教育へ」、「学校の教育から、家庭の教育へ」、「点数の教育から、文化の教育へ」、「競争の教育から、独立の教育へ」という四つです。

 これから起きるこれらの大きな変化を担えるのは、学校や塾も含めて、従来のままの教育関係者ではありません。未来の教育を担えるのは、大きな理想のために自己否定できる教育関係者です。

 そして、言葉の森も、その一員となってこれからの時代の変化に取り組んでいきたいと思っています。

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