記事 1252番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2020/2/23
競争の教育から、独立の教育へ3
森川林 2011/05/02 12:33 



 新しい創造産業社会が生まれる条件は、既にいくつかあります。

 第一は、従来の工業時代の消費-労働サイクルの行き詰まりです。生産力の発展の究極の姿は、人間の労働を必要とせず、したがって雇用を必要としません。世界中で今、働く場所のない若者が生み出されています。不足と競争で回転していた社会がうまく回転を続けられなくなり、そのために今の回転とは異なる新しい回転を必要としているのです。

 第二は、豊かな生産力を持つ社会の登場です。かつて、自然の提供する豊富な木の実や貝や魚をとって暮らしていた縄文時代人のような生活が、今、工業生産力の発達によって復活しつつあります。まだそれが実現していないのは、これまでの人類の富のほとんどを、一部の国の一部の人間が膨大な軍事費に転用していたからです。

 第三は、ソーシャル社会(人間どうしの社会的な関係を中心に営まれる社会)の誕生です。独立起業ということを考えたとき、今までは資金力が大きなネックになっていました。それは、ひとつには、工業時代の産業には大きな資金を必要とするものが多かったからです。また、明治の勃興期や、終戦後の初期のころならいざ知らず、いったん経済が軌道に乗り出すと、工業社会では新たな参入の余地はほとんどありませんでした。サービス業も、初めのうちは資金力を必要としない分野が残されていましたが、大手の企業が生まれてくると、やはり宣伝や営業という資金力の部分で新たな参入は困難になっていきました。

 資本主義社会は、資本を動かせない者にとっては資本がネックになり、資本を動かせる者にとっては資本がキーになる社会ですから、資本の多寡によって固定化と独占化が進みがちな社会です。

 しかし、これに対して、人間どうしの社会的関係を基盤にしたソーシャル社会は、金銭を介した雇用契約や売買契約のかわりに、家族や友人や知人という人間のつながりに基づいて営まれています。

 ソーシャル社会でネックになり、またキーになっているものは、資本でも、また単なるソーシャルリテラシー(人間関係の技能)でもありません。自分とのつながりのある人たちに、新しい価値あるコンテンツを提供できるかどうかが最も大きなキーになっています。言い換えれば、ソーシャル社会の登場によって、だれもが、コンテンツさえあれば自分の仕事を創造できるようになってきたのです。



 以上のような条件によって、これまでの限られたイスを取り合う競争の社会から、自分の今いる場所で新しいイスを創造する独立の社会への転換が進もうとしているのが現代の状況です。

 しかし、ソーシャル社会で個人が提供する新しい価値あるコンテンツは、その人がそう決心しただけでは持つことはできません。これまでの競争教育の中で普通に勉強に励んでいるだけでは、あるポジションをめぐって人に勝つことはできても、オリジナルに自分のイスを作る力は育たないのです。

 社会が、競争社会から創造社会に移行することに伴い、教育も、将来独立して社会に新しい何かを創造する人間になることを目的としたものに変わっていかなければなりません。もちろん、小中学校の基礎教育の多くは、競争教育においても、独立教育においても、それほど大きくは変わらないでしょう。しかし、教育の目的が変わることによって、いろいろなところで変化が起きてきます。

 例えば、子供の励まし方を例に挙げると、競争教育においては、これまでは苦手な教科があると、「それができないと、みんなに負けるから、いいところに入れない」という脅迫的な励まし方が中心でした。独立教育においては、苦手な教科があったときも、「それができると、将来の自分の仕事に使えるから、自分らしくがんばろう」という創造的な励まし方になります。

 これまでは、我慢する勉強に適応できる子供が、いい成績をおさめていました。しかし、我慢に適応できるというのは、しばしばバランスがとれていないことも意味していました。勉強がよくできる人の中には、勉強しかできないという人もかなりいたのです。

 これからの勉強は、将来、その勉強を自分の仕事に生かすという喜びの勉強が中心になります。その喜びの勉強を通してバランスのとれた人間を育てることが教育の目的になっていくのです。



 これまで、教育の四つの大きな変化を書いてきました。それは、「受験の教育から、実力の教育へ」、「学校の教育から、家庭の教育へ」、「点数の教育から、文化の教育へ」、「競争の教育から、独立の教育へ」という四つです。

 これから起きるこれらの大きな変化を担えるのは、学校や塾も含めて、従来のままの教育関係者ではありません。未来の教育を担えるのは、大きな理想のために自己否定できる教育関係者です。

 そして、言葉の森も、その一員となってこれからの時代の変化に取り組んでいきたいと思っています。
 参加フォーム/言葉の森企画
作文の予習と発表に力を入れたオンライン学習
友達と一緒に作文を書くことで互いの予習が参考になり、読書紹介で読書の幅が広がります。 言葉の森
 

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
日本(39) 

コメント欄

コメントフォーム
競争の教育から、独立の教育へ3 森川林 20110502 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
おかきく (スパム投稿を防ぐために五十音表の「おかきく」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

(za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
新着コメント1~3件
3.1週の授業 nane
 せいかつ文化コースの動画には、子供のこ 2/22
3.1週の授業 森川林
 「雑草の枯れ草で納豆を作ろう」というの 2/22
読点の打ち方 匿名
このもんだいすき 2/21
……次のコメント

オープン教育 1~3件
オープンの川
鳥の村 1~3件
鳥の村
虹の谷 1~3件
虹の谷
過去の記事

過去の1~30件目を表示
■競争の教育から、独立の教育へ2 5月1日
■競争の教育から、独立の教育へ1 4月30日
■競争の教育から、独立の教育へ(予告編) 4月29日
■連休中の授業は、youtubeの動画で(生徒父母連絡) 4月27日
■作文の勉強における意欲 4月26日
■3月の森リン大賞に学年のずれがありました(生徒父母連絡) 4月25日
■インターネットと教育(その2) 4月24日
■読解問題の題名と長文の題名で対応していないものがありました(生徒向け連絡) 4月22日
■インターネットと教育(その1) 4月22日
■インターネットの未来と言葉の森 4月21日
■小学校1、2年生の作文の勉強における予習の仕方 4月20日
■他の作文通信講座と、言葉の森との比較 4月20日
■小学生のうちだけの作文ではなく、中学生、高校生と続けられる長期的な視野の作文指導(その7) 4月19日
■最近のブームにのった作文通信講座ではなく、30年の伝統のある作文指導(その6) 4月18日
■顔の見えない赤ペン添削ではなく、親しみの持てる担任制の電話指導(その5) 4月16日
■ほかの作文通信講座にはない、受験作文指導の独自のノウハウ(その4) 4月15日
■作文力・記述力・表現力の指導だけではなく、国語力と読解力を結びつけた作文指導(その3) 4月15日
■小学生のときに上手な作文を書くだけではなく、中学生高校生で必要な思考力を育てる作文を書く(その2) 4月14日
■赤ペン添削よりも事前の電話指導(その1のつづき) 4月14日
■中学生のころに読む本で、意外と見落とされがちな「面白い本のよさ」 4月13日
■赤ペン添削よりも事前の電話指導(他の作文通信講座とは違う言葉の森の作文指導 その1) 4月12日
■原発を含め今後の災害に対する心構えと、明るい未来の展望 4月11日
■点数の教育から、文化の教育へ 4月9日
■学校の教育から、家庭の教育へ 4月7日
■受験の教育から、実力の教育へ 4月6日
■日本人の対話と欧米人のディベートとの違い 4月5日
■国語の記述問題にどう取り組むか 4月4日
■公立中高一貫校の勉強は家庭の対話で 4月2日
■日本の経済復興のために 4月1日
■言葉の森で、書くことが好きになり、読解力、作文力がついて、受験にも勝つ 3月31日
……前の30件
RSS
RSSフィード

カテゴリー
全カテゴリー

QRコード


通学できる作文教室
森林プロジェクトの作文教室

リンク集
現在作成中です。





 
小学生、中学生、高校生の作文(2007年4月まで)
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。