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学力と実力。知識力と創造力  2012年5月12日  No.1540
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 勉強のよくできる子というのはいます。そういう子に共通することは、ひとつには、吸収力があることです。吸収の速さと言ってもいいでしょう。長文の暗唱などでも、ほかの人よりも短い時間や回数でできるようになります。

 もうひとつは、吸収する勉強に飽きないことです。人間は普通、人の話を聞くよりも、自分で話す方が楽しいことが多いものですが、勉強の好きな子は、聞くとか読むとかいう受け身で取り組む勉強にもすぐに適応できます。しかし、これにはマイナス面あります。吸収することが得意な子は、自分から何かを創造することが苦手になることも多いのです。

 長時間飽きずに勉強できるので学校の成績はよく、受験でも成果を上げますが、そういう子が社会に出てからどういう仕事に向くかというと、大量の知識や書類を整理したりまとめたりする仕事までであることも多いのです。本当は、多くの知識をもとに自分なりのオリジナルな世界を創造できればいいのですが、創造力は、知識の吸収力とは別のものですから、勉強のよくできる子が必ずしも創造性を持っているわけではありません。逆に、知識を吸収することに適応しすぎると、本来持っていた創造性も表れにくくなるようなのです。

 私は、教育関係の本をよく読みますが、同じようなテーマを取り上げた本でも、傾向が大きく二つに分かれるように思います。ひとつは、参考文献などを多数網羅し、幅広く知識を整理していながら筆者の独自の考えの乏しい本です。教科書や参考書のような本と言っていいでしょう。もうひとつは、筆者の独自の考えと実例で話をぐいぐい進めていくような本です。思い込みで書いていることも多いので客観的な資料としてはあまり使えませんが、いろいろな面で参考になる本です。

 そして、これはあくまでも印象ですが、知識を網羅し整理するだけの文章を書く人は、学歴の高いことが多く、そういう傾向の人が日本の社会で次第に増えているような感じを受けるのです。今の日本の政治や学問に携わる人は、かなり強固な学歴社会の階層の中にいます。学力の中身よりも、肩書としての学歴でポジションが決まるような位置にいるのです。これが、実際に日々の仕事の工夫をしなければ生きていけない普通の庶民の生活とは違うところです。実力よりも肩書きが物を言う仕組みは、かつての中国の科挙の仕組みと似ています。全国から集まった最優秀な官僚によって運営されているはずの清という国家は、新しい時代の変化に対応できず西洋列強の侵略にほとんど何の有効な対策も打てませんでした。それに対して、学歴や肩書ではなく、下級武士の実力によって作られた明治政府は、短期間で日本の近代化を成し遂げました。

 これからの日本の社会に求められるのは、学力とともに実力のある人材です。それは、知識力だけでなく創造力もある人材だと言ってもいいでしょう。今の受験体制の中では、知識の吸収力以外の能力はほとんど評価されません。それは、試験制度というものがもともとそういう形でしか客観的な評価ができないからです。しかし、実際に接してみれば、実力のある人や創造力のある人というのは、自然にわかってきます。ペーパー試験ではわからないことが、実際にいろいろな仕事をする中でわかってくるのです。

 同じことが家庭でも言えます。お父さんやお母さんは、子供のテストの成績だけに目を向けるのではなく、その子が将来、独自の考えを持つ創造力のある人間になるかどうかということに目を向ける必要があります。これからは、いい学校に入ったから一生安心だという時代ではなくなります。学歴や資格が物を言うのはわずかの間で、その後の長い時間を本人の実力で生きていくような時代になっていきます。子供を見るときに、数年先の受験がうまく行くかどうかという目で見るのではなく、数十年後に社会で自分らしい活躍ができるかどうかという目で見ていく必要があります。勉強はできて当然だが、ペーパーテストで測られる勉強以外の力がどのくらいあるかを見ていくことが大事なのです。

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