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未来の学校の夢(その2)―動物や植物との共存  2010年11月1日  No.1061
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 僕は、その日、K君の家に泊まることになりました。

 家に帰る途中の道を歩いていると、街路樹に何か実がなっているようです。

 K君はジャンプしてその実を取ると、一つ僕にくれました。

 街路樹には、どこも実のなる木が植えられていて、誰でも自由に取って食べていいようです。僕はもらったカキの実にガブリとかぶりつきました。

「おなかが空いているときに便利だね」

と、僕が言うと、K君は、

「もう一本隣の道には、ナシがなっているんだ。だから、日によって通る道を変えるんだ」

と言いました。僕は、今度はナシの道を通ろうと思いました。

 K君の家に行く途中に、大きな公園があります。その公園を横切ろうとすると、1匹のヤギがついてきました。

「えー! こんなのいるの」

「うん、いろいろな動物が放し飼いになっているんだ」

 見ると、公園にはニワトリやアヒルやウサギもいます。

 K君は突然近くの草むらに入ると、しばらくして両手に卵を持ってきました。

「この草むらには、よくウズラやニワトリが卵を産むんだよ」

「そんなの、取っていいの」

「まあね」

 K君はにっこり笑いました。この卵は、夕飯のおかずになるようです。

 公園には、シートを広げて食事をしている家族もいました。

「何だかお花見みたいだね」

と、僕は言いました。

 どこの家でも、ときどきそういう外食をすることがあるようです。未来の世界では、外食というのは、ファミリーレストランに行くことではなく、戸外で食べることになっているようでした。

 そうこうしているうちに、家に着きました。

 ドアの前で、「ただいま」と言いましたが、返事がありません。まだほかの家族は帰っていないようです。

 K君は、ドアの横にある大きな木を指さしました。

「この木の枝をつたって窓から入ることもできるけど、今はあまりやらないんだ」

 確かに、大きな枝が二階の窓まで延びています。僕は、ちょっとやってみたい気がしました。

 K君は、すっとドアを開けると、「さあ、入れよ」と言いました。

「あれ、ドアは開いていたの」

「うん、カギはないんだ」

 未来の家は、どこもカギをかける習慣がないようです。

「泥棒なんていないの」

と聞くと、K君は少し考えてから言いました。

「うーん。でも、自分だって人のうちに入って泥棒したいと思わないでしょう」

「確かにそうだけど、お金に困っている人がいたら、泥棒もするんじゃないかなあ」

「それは、困っている人がいるからだよ。困っていたら、そう言えばみんなが助けてくれるから、泥棒するほど困る人はいないんだ」

 僕は、なるほどと納得しました。(つづく)

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