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暗唱に最適な字数  2009年10月5日  No.647
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   △ススキ

 暗唱という勉強法は、評価が高い割に、そして簡単にできそうに思える割に、実行が意外と難しいという特徴があります。シュリーマンの、音読による外国語独習法を知ると、だれでもやってみたくなります。しかし、ほとんどの人が挫折します。音読や暗唱を続けるというのは、そんなに簡単にはできないのです。

 ここで、ヒントになるのは、幸田文(こうだあや)の実例です。幸田文は子供のころ、父親の露伴から百人一首を毎日三首聞かされ、翌日までに覚えるようにという勉強をさせられました。百人一首の短歌は、一首三十五文字です。これを三首覚えるとなると、約百字の文章を暗唱することになります。百字というのは、二、三十回繰り返せば必ず覚えられる字数です。しかし、繰り返さないと覚えられません。

 これがもし、五十字を覚えるということであれば、覚える意識さえ不要なぐらいに簡単に覚えられます。五十字というのは、短期記憶の処理できる範囲の字数なので、記憶を意識しなくても覚えることができます。短期記憶で覚えるということは、覚える力を使っていないということです。従って、五十字ぐらいの字数の暗唱は、負荷のない暗唱ですから、この程度の暗唱をいくら繰り返しても、暗唱する力はつきません。

 負荷のない暗唱というのは、たとえていうと、お箸を何回も持ち上げて筋力をつけようとするようなものです。軽いものを持ちつづけると筋力は逆に低下していきます。宇宙の無重力状態で、筋肉や骨が弱くなるというのは、筋肉や骨を弱い力でしか使わなくなるからです。読書も同じです。易しい本は、読めば読むほど読む力を低下させるという面もあるのです。

 しかし、誤解されないように言うと、だから易しい本を読むなというのではありません。日常生活の中では、お箸を持つ場面も爪楊枝を持つ場面もあります。易しい文章を読む場面も易しい会話を聞く場面もあります。易しいものがいけないのではなく、易しいものしかないこと、つまり難しいものがないことが問題なのです。

 ある字数以下の暗唱は易しすぎる。しかし、ある字数を超えると急に難しくなる。易しすぎると難しすぎるのちょうど中間のある範囲に、暗唱学習に最適な領域があります。それが、百字から三百字ぐらいの字数です。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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