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森リン大賞(作品続き)  2009年12月20日  No.715
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 昨日の記事の続きです。


11月の森リン大賞(中2の部79人中)

玉露の語り
おむふ

 姿を変えぬものが世にあるであろうか。朝、露草に淡くついていたはかなげな玉露も昼になり、陽光が強く照る刻限となるとどうだろうか。澄んだ灯明のごとき玉露はその名残すら残さず今そこに構えているのは青々とした太陽の息吹である。空のおぼろ月も、香炉の霞のような香りもいずれにせよ美しいとされるものはおぼつかずはかなげである。さらには、人の織り成した産物などにおいてはもはや幼き文鳥のよう。いくら飛べたといえどももろくはかなきものであろう。流行もまた同様のものなのではなかろうか。ちょっとした苗からたちどころにあらわれ道化師のようにひょうきんに広がり世に新参する。関心という富をおそろしくたくわえたいわば関心の金満家。そうして実った流行という穂とてこれまたはかないものである。風に煽られそよぐうちに気づいたら朽ち果て滅んでゆく。後にあるのは夜気のようなむなしき気。元来からこの穂にはなかみなどなかったのだ。関心というかりそめの想いであろう。 これぞ流行の行く末である。幾度もこの流行は吹き上がり、燃えに燃え灰となったのだ。本といったものも同じなのであろうか。もちろんそうであるが一口にそうともいえないのだ。古典というものがある。

 ドストエフスキー、ファーブルだれもが一度は必ず耳にしたことがあるだろう。こういった古典こそ良きものである。古典は古いものといった意味ではない。昔から多くの人からの人気を博し長い間したしまれてきたものである。それ故、中身が豊穣につまった珠玉のものである。流行が移り行く川ならば古典はそのかわの源泉の清水とでもいおうか。その上流行をおってばかりではならないだろう。こういった話がある。星新一のものだ。ある新しい物好きな男がいた。彼はたいへんな財産家でもあり新しいものが作り出されたとなるとすぐさまとびついていた。中に入れるテレビ、などなど次々に取り入れていたのだ。そしてその集めた新しいものを自慢するのがなによりの生きがいだったのだ。そんな中でも彼はある一つに飛びついた。人を冷凍保存することによりはるか未来までその人を保存することができるというものである。いずれ、時がたてばこの冷凍マシンから出してもらい当人にとっては未来へ来たようなもの。彼はこれまたすぐさま飛びつき早速そのマシンに入ったのだ。そしてはるか未来にたどりついたのだ。だがそこは文明もおそろしく進んでいる。彼の生きがいである自慢がなにひとつできないのだ。それから何日か未来文明を彼が少し知った後、自分の後に冷凍マシンに入った人たちが今目覚めたという一報を耳にした。彼らにならこの未来文明を知っているということを自慢できるだろう。そうたかをくくっていたがこれまた失敗である。彼の入った冷凍マシンは彼が入った後改良され記憶装置といったものがついたのだ。それは冷凍マシンに入った人が目覚めた後時代に立ち遅れないように随時文明や世界の動きを眠っている間にも脳に送り込むというものである。すなわち彼はこの世で最も遅れた人となってしまったわけだ。 ここにあるようにすぐさま流行に飛びつくというのもあまり良いことではない。

 だがこういったことわざがある。流れる水は腐らぬ。あまりに古典にこだわっていては感受性が腐ってしまうであろう。流行のものにも多大な価値があるだろう。いわば古典はふるいしきたりである。あまりに良質なものを求めていては流行の新たな世界観に目を向けることはできないだろう。その上流行のものというのは人をつなぐ潤滑油ともなりえる。流行の話を元に会話が広がったりと共通の話題をもつことができるだろう。古典ではだれもが知っているというのもごくわずかである。流行なら時代時代に様々なことをつくりあげていけるのだ。

 今古典と流行のものをどちらが読むに値するか考えている自分が急にあほらしく思われてきた。自分はどうかしていたのだろうか。古典にも、流行にも述べてきたように多くの良さがある。だが本来選択すべきは自分が気にいったものなのではなかろうか。流行にせよ古典にせよ自分の気に入ったものを読むのがなによりだろう。それこそが真に心の泉となるはずだ。

順位題名ペンネーム得点字数思考知識表現文体
1玉露の語りおむふ931713768310084
2交話機能の使い方音楽大好き少年85129753647589
3人間の会話サニー84110254667687
4古典は新しい!いちごサクラ82120952596890
5適切な保護や管理ハーマイオニー811447511009580
6存在するもののつながり嵐ちゃん81189754698783
7生活とのバランス夏みかん8197951687289
8心の交流と本題ショウ81101552606793
9保護を適切に使用しよう。コーギー79111643658283
10言葉の役割ポンピー79151239567692



11月の森リン大賞(中3の部43人中)

人生の先輩
マロン

 昔話には類話というものがあり,類話の多様性は人生の問題の解決方法の多様性を示している。人によっていろいろな生き方があり,それはそれなりに面白いものだ,と昔話の知恵は我々に語りかけてくるのである。

 私は昔話からいろいろなことを学べるような生き方をしたい。「かさこじぞう」という昔話がある。売れ残った傘をおじいさんが地蔵にかけてあげる話だが,これは思いやり,優しさの大切さを示している。このように昔話は,人生において必要なことをたくさん含んでいるのだ。

 また,日本の昔話によく登場するお年寄りの話は,人生のヒントになるようなものばかりである。「亀の甲より年の功」というように長年の経験を尊び,昔話を生かしていきたい。

 そのためには,まず昔話から人生の教訓を読み取るように心がけることが挙げられる。

 昔話は小さな子どもが読む,幼稚なものだと思われがちであるが,実はそうではない。昔話は一つの教科書であると私は思う。私は,「桃太郎」では仲間の大切さを,「赤いくつ」では謙虚な気持ちの大切さを学んだ。このように私たちは物語を読んでいくことによって,知らず知らずのうちに道徳的なことが身についてくるのである。だから昔話はもっと見直されるべきである。

 日本では最近,昔話を広める動きも見られる。例えば,テレビアニメやバラエティー番組でも昔話は取り上げられているし,お菓子のおまけで小さな絵本がついていたりもする。せっかくのこうした動きを無駄にするのではなく,子どもも大人もそれを生かしていくべきではないだろうか。

 また,昔話だけでなく,価値がないと考えられがちの古いものにも多くの意味がある。やはり,日本の伝統や知恵を身につけることは日本人として生きていくうえでの基本であると思う。その地方でつくられたものを売る「道の駅」では,お年寄りの作った和菓子が人気である。海外で学んだパテシェの作るケーキもおいしいが,伝統のあるお団子は,懐かしい味がして食べると落ち着く気がする。私は,昔話から,またお年寄から学ぶことは大切であり,先の代まで受け継いでいくべきだと思った。

 第ニの方法としては,昔話の文化をしっかり保存していくことが挙げられる。近年,日本は小家族化が進み,お年寄と一緒に暮らしていない若者が増えている。これでは伝統が伝わりづらい。だから,学校や社会が,昔のことを生かせるような仕組みを作っていくことが必要である。私の小学校には茶道や詩吟の先生が来て教えてくれたし,通っていた珠算教室では,休み時間に先生がお手玉やけんだまで一緒に遊んでくれた。このように学校や会社も文化,技術の継承を積極的に取り入れるべきである。

 「古代への情熱」の著者であり,ドイツの考古学者のシュリーマンは,子どもの頃に絵本で読んだトロイ戦争を信じ,独力でトロイの都や遺跡を発掘した。私たちも子どもの頃読んだ昔話やそこから学んだことを忘れてはならない。

 確かに現代の最新の知識や技術を生かすことは大事である。医学などはそうでないと全く進歩しないし,流行の本を読むことは楽しく,新しいものは合理的で便利である。しかし一つ一つの昔話,お年寄りの話にはそれぞれ伝統と昔ながらの知恵,メッセージが詰まっている。「読書は人間を豊かにし,討議は人間を役立つようにし,文章を書くことは人間を正確にする」という言葉があるように,私たちはもっと昔話から生き方を学んでいくべきではないだろうか。昔話は私たちの人生における先輩であり,昔話の数だけ人生があるのである。

順位題名ペンネーム得点字数思考知識表現文体
1人生の先輩マロン89146459798590
2環境を守る前に☆shooting st8690169788692
3自分の生きる意味きへあ83110253636990
4デジタル的、アナログ的野球小僧81105557919983
5模倣ゆうちゃり~81104246727293
6清書うずら79105749828987
7昔話は道徳の本ゆりん7991747607186
8思い出の引き立て役とまと7898447596487
9才能の数ちこちこ7785947616984
10まねちな7576946596890



11月の森リン大賞(高1高2高3社の部120人中)

方法への抵抗
PINK

 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンというバンドは、あらゆる権力や制度に対して抵抗することをメッセージとしている一軒古臭いロックの定義を持ち続けているロックバンドだ。戦う相手は権力の末端で起こる暴力や、組織化された内部の理不尽な事態であり、またそれらを「機械」と名づけているのだ。ヴァレリーは「方法」が支配し偉大な個性は不要になると書いている。「方法」は誰にとっても反復不可能なものであり、その「方法」さえ用いれば、同じような結果に辿り着くのだ。我々の細部まで浸透しきった機械が、我々から個性を剥奪する方法なのだ。我々は、方法に抵抗し個体性を持ち続けるべきだ。

 そのための方法として第一に、いわゆるマニュアルに頼らないことだ。たいていどんな物にも事にも、「取扱説明書」或いは「見本」たる物がついてくる。しかし、その手本や見本に頼りすぎると、自由に発想を広げ、試していく応用力や創造力が養われなくなってしまう。勉強でも、教科書に書いてある通りの解法を使えば問題が解けるのは当たり前だが、自分の脳味噌をフルに使用し、捻りに捻って考え出した解き方を実践してみるほうが後々自分の力となり返ってくるに違いない。そもそも、とりあえず数学の公式を覚えて当てはめてみたら合っていた、などという思考自体が頼り過ぎている。社会に出れば、公式に当てはまることばかりではないのだ。時には自分で考えて行動したり、計画を立てなければならない場合もあるだろう。マニュアルはあってないようなもので、個々に合わせて応用して(あるいは変えて)いかなければならない。料理においても、レシピ本に載っていた通りに作れば確実な味は作り出せるかもしれないが、いつまでたってもその一つ上の段階へ進むことが出来ない。「我が家の味」であったり、コクがあるいつもと違った美味しさなど、自力で辿り着く味があるはずだ。今でこそ自分が考えたレシピをインターネット上で公開するサービス等も存在するが、「オリジナル」を作り出す努力も必要なのだ。お手本にもたれ掛ったままでは、いつまで経っても成長が見られないのは言うまでも無いだろう。

 第二の方法として、正しい結果よりも、そこに辿り着くまでの過程を重要視する社会を築くことだ。それが例え偶然であれ、結果が出ればそれで良しとする今までの社会の風潮を変えていかなければならない。世の中は結果を評価することに慣れすぎて、それまでの試行錯誤した過程を評価することにはなんら関心を抱いていない。競争化社会が当たり前の世の中はいわゆる「結果主義」なのである。大学受験でも、某有名国立大学に合格すれば賞賛され、失敗すれば慰められる。その「合格」という目標に向かって努力した姿勢は評価される割合が少ないのである。不合格は不合格で、いくらその人が「頑張りました」と言っても結果が変わってくるわけではない。だが、人間として大きく成長できたことに間違いは無いだろう。その成長を正当に受け止め、評価し合える社会にしていかなければならない。歴史に名を残す偉大な発明家エジソンは、「1+1はなぜ2になるのか」という疑問を持ったが、自分なりに考える生徒や若者を大事にする社会を作っていくことが必要なのだ。

 確かに、今までの知識を活用していく事も効率を上げることに関しては重要かもしれない。結果を出すことも、企業や受験生らにとっては悩ましい問題でもあり目標でもあるだろう。しかし、我々は、ゴールに到達するために努力するのではなく、ゴールまでのプロセスにこそ真の目標があるのだ。(自作名言)方法に飲まれて個性を見失うくらいなら、自分らしさを大事にして生きていくほうがよっぽど人間らしい生き方なのだと私は思う。

順位題名ペンネーム得点字数思考知識表現文体
1方法への抵抗PINK91153263798692
2その広告はターミネーター88137758697895
3謙虚いすも87134266677390
4見せかけの道徳心キューピー86145154698292
5お家に仕えよカエル84105962617496
6古典と流行しんご83105751707690
7経験は最良の教師おめか82111952667292
8井から一歩飛び出せピカチュウ8092349747984
9昔話の研究を(感)まいう7914005210211187
10創造することばコッペパン79100648596887



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