国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   最後の一万円★   キティ

最後の一万円★
 私は生まれ変わったらお金になりたいと思う。理由は簡単。お金になれば、どこにでもただで行けるからだ。自分がお金なのだから。それにお金は苦労もしなくていいし、死んだり病気になることもない。お金になれば大事にされるし、破れてもていねいにセロテープを貼ってくれるだろう。一万円札になりたい。貧乏で何日もお風呂に入っていない人たちに触られることもないからだ。
 「ギ——カチャ。カチャ、カチャ、バシッ!ギ——・・・」
・・・はっ!?私は目を覚ました。なんだかインクくさい匂いがする。私の体はとっても軽い。ゆっくり体が動いている。あ、札帯に包まれた。私はお金に生まれ変わったのだ。私はこれから本物のお金になって、世界に旅立つのだ。
 私は銀行についてもう一時間がたたないうちに、ダイエーの経理の人がやって来た。やがてあたりがどんどんうるさくなって来た。まるで大きなスーパーマーケットのようだった。私の一万円札のたばは、レジの中に入った。ビリッ!私たちを包んであった札帯が破られた。レジ係が私たちを数えている。
 次の日、私はお金持ちそうな女の人のお財布の中だった。とてもお上品で、高級な洋服やくつ、お財布、バックなどを持っていた。その女の人は家に帰るとバックをイスに置いてお風呂に入った。私はお財布をそっと開けた。前から大金持ちの人の家の中を見てみたかった。大きくてきれいな部屋に、金と銀の食器、それにきっと大きいマンションに住んでいるに違いない。そう思いながら、目をお財布からひょっこり出してあたりを見てみた。なんと!その部屋はぐちゃぐちゃで、今にもゴキブリとネズミが出てきそうだ。イメージと全く違う部屋だった。
 次の日、その女の人は私をメイクアップセットのために使ってしまった。私はまたレジの中だった。今度は普通の女の子のお財布の中だった。だが私はまたすぐ文房具のために使われてしまった。私は北海道や沖縄、東京、長崎、広島、岩手などに行った。ただでいろんな地方を旅することができた。お金は楽しいな〜♪
 今、私は東京三菱銀行東京タワー支店にいる。ある女の人が私を手に入れ、すぐに封筒に入れて、郵便局へ向かった。
 次の朝、だれかの家へ現金書留として届いた。お昼になると、学校から帰ってきた女の子が私の入っていた封筒をマジマジと見つめた。封筒の上には、『お金持ちより。』と書いてあった。
 女の子はすみれちゃん。すみれちゃんには中学一年生の聡くんと小学二年生の弟の金太郎という兄弟がいる。すみれちゃんのお母さんは金太郎くんが生まれてすぐ死んでしまった。すみれちゃんはしっかりした子だ。彼女のお父さんは何年も失業中で昼間っからお酒を飲んでだらだらしている。すみれちゃんの家族はとても貧乏で、その日を生きていくのにも大変なようだった。食べ物もほとんどない。すみれちゃんが一万円札を見るのは生まれて初めてだった。すみれちゃんは私をしみじみと見つめた。
 次の日私は額縁の中に入っていた。毎朝起きてすぐ、家族は私を拝む。ある日すみれちゃんが学校から帰ってくると、私がいないことに気づいた。するとお父さんが一升瓶を抱えて寝ていた。
「お父さん?も・・も・もしかしてその一升瓶、額縁に飾ってた一万円札から買ったの?」
「ああ。そうだ。とってもおいしいぞ!近所の酒屋で買ってきた。」
 すみれちゃんはそれを聞くと、すぐ家を飛び出して近所の酒屋に行った。すると酒屋のおばちゃんが言った。
「ああ。すみれちゃんいいところに来てくれたね。さっきお父さんがお酒を買いに来たんだけど、お釣りを忘れて行ったよ。ほら持っておいき。」
 すみれちゃんは泣きながらおつりを手に持った。私は酒屋のレジからすみれちゃんを見つめていた。一万円のプライドがパッと消えた。そして心の中で叫んだ。
「すみれちゃん!私、もう一万円でいばるのはやめたわ!これからはすみれちゃんのその小銭になって生きる。さぁ、すみれちゃん。少ない小銭だけど私で好きな物を買って。」
 それがなぜだかすみれちゃんの心に伝わった。
 なんと。すみれちゃんは私でキティちゃんのレターセットを買ったのだ。えらいな。私だったらおかしを買ったりするのに。すみれちゃんは、その便箋で亡くなったお母さんに手紙を書いた。だが、どんなに高い切手を貼っても、すみれちゃんのお母さんには届かない。私はそれを見て、またとてもかわいそうに思った。今度はあの世行きの切手になることにした。私はポストへ行って、自分を切手と取り替えた。また心の中で、
「さぁ、すみれちゃん。今度は切手になったわ。私をその封筒に貼ってちょうだい。」
とすみれちゃんに言った。すみれちゃんはすぐ私を封筒に貼った。私はどんどん軽くなって、天国へ向かった。
「さようなら。すみれちゃん。また来るからね。」
 すみれちゃんは泣きながら、
「ありがとう!さようなら!ありがとう!」
と何度も言った。すみれちゃんの手紙を読んでお母さんは泣きながら喜んでいた。
 それからすみれちゃんは、見違えるように元気になった。お母さんに手紙を読んでもらえたという喜びからだ。飲んだくれのお父さんを責めることはなかった。大きくなって、すみれちゃんは初めてのお給料をもらった。だがあの『最後の一万円』を忘れることはなかった。
 私は一万円札の時、自分の幸せのことしか考えていなかった。すみれちゃんに会ってから、貧しい人にこそ強い心があるということが分かった。私は『天国行きの切手』になって死んでしまったが、すみれちゃんの本当の願いをかなえてあげることができたのだ。心が晴れた。今度は誰の役に立とうかな。

   講評   yuu



 マリアちゃん、こんにちは!
 マリアちゃんが大事にしているものは「お金」なのかな。そうですね。お金はとても大事。あると嬉しいし、楽しいこともたくさんできそうですね。おいしいものもきっとお腹いっぱい食べられますね。そしてお金がないと、欲しいものをすぐに手に入れることができないし、温かいお洋服がなければ寒くて悲しい気持ちになるかもしれません。お金を大事にすることは、時間を大事にする気持ちに似ているような気もします。
                  


 今回は物語のように書いてくれましたね。このお話を読むと、マリアちゃんが本当は一番に大事に思っているものが何なのかが伝わってきます。そしてどんなに高価なものでも、立派なものでも、それ以上に人にとって本当に大切なものが何なのかが見えてきます。
 お金になって色々な町の、色々な年齢の、色々な人の生活を観察しながら、一万円札のプライドも少しずつ崩れていきます。なんでも買える、みんなが大好きな一万円ですが(笑)、その一万円では手に入らない本当の幸せがあったのですね。そう考えてみると、お金が人を助けてあげるのではなく、人がいるからこそお金は意味を持ち始めるのだということを改めて考えさせられます。


 横浜では初雪が降りました!12月に雪が降るのは本当に久しぶりなのだそうです。マリアちゃんの見た横浜の街もディズニーランドも真っ白になったんですよ!
 クリスマスに読みたくなってしまうような心温まる作品をありがとう!

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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