低学年から学力の基礎を作る
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
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桃太郎 FULLMOON
私は少年時代に喜びを味わった場所を見まわした。小さな庭が私を見つめた。それらは昔と違う顔をしていた。庭の隅に古い水桶が水道の栓とともにひっそりと立っていた。そこで昔、半日ものあいだ水を出しっぱなしにして、父を悩ましたものだった。それを見つめていると、子どもの頃の喜びが心に浮かんだ。が、それは悲しい味がした。その水桶はもう泉でもなく、大河でもなかった。汽車が鉄路を走って、私のそばを通り過ぎた。それを見送った私は、ここではもう本当のよろこびが咲くことはないと感じた。そしてあの列車に乗って世の中へ出て行きたいと、心の底から思った。
私の過去。はっきりいって思い出したくない。無邪気に遊びまわって、周りに迷惑も顧みず、恥ずかしいことも考えずに毎日を送っていた。でも、その頃があってよかったと思う。幼稚園のときは、水道から水をくんで来て、砂場に穴を掘って湖を作るのが好きだった。そのとき自然と一体になっていた気がした。小学校に入ってから、その行為を見ていて自分でやりたいなんてもちろん思わなくなったし、輝きも感じなくなった(経験)。でも、「自分の心のうちに持っていないものは何一つ自分の財産ではない。」という言葉のように、そのように昔のことが財産になるのであるのだと思う。
そして今、離れたところに行きたくなった。ひとりで自分を見つめ、新しい自分を見つけるのが必要だと感じるようになった。自分で言うのも変だと思うが、自立の始まりだと思う。
桃太郎という昔話は有名だ。桃太郎は最初、おじいさんとおばあさんに育てられてきた。それが鬼退治に出かけた。これが桃太郎の自立なのである。
確かに過去は思い出したくないから、最初からひとりでいればいいと思うかもしれない。でも、そうすると反抗期がなくなり、自立もなくなると思う。無邪気な時代と自分を見つめる時間があることで次の時代の準備にもなるのだと思う。
講評 jun
毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘
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