創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   友情   延麒六太

   友情
                         延麒六太
 「おはよ〜。」
木の扉を開けると、何個かの集落ができていた。
「おはよ〜。」
集落のうち大きめの集落の住民がみんなこちらを見てそういった。
「延麒〜。おはよ!」
駆け寄ってくる者が、4人。長身の人物が二人。お下げ髪の子が一人。少し小さめの子が一人。わたしもそうなのだか、みんな奇妙なあだ名を持っている。延王尚隆、景麒、祥ケイ、廉麟、そしてわたしが延麒六太。
 わたしのクラスは、みんなで何か頑張ってやる。と言うのがすごく苦手だ。教室の感じで、一目瞭然だ。何個かのグル~プに分かれている。同じグル~プの人とは、気持ち悪いほど仲良くする。しかし、他のグル~プの人が自分たちの縄張りに入ってくると冷たく接するのだ。それが、わたしのクラスの流儀(?)のようなものになっていた。とてもこのクラスが、縄跳び大会で一位を取れるとは思わなかっただろう。先生も、わたしたちも。
                              (書き出しの工夫)
 「縄、早すぎ!」
ぎゃんぎゃんとさわぐうるさい子犬が数匹。牙を向けてほえている。人の苦労も知らずに・・・。言いかけた言葉を飲み込んで、わたしは唇をかんだ。
わたしは縄を回す係りを任された。任されたというより、じぶんでやりたがったのだ。
最初のうちは、がまんした。悔しかったけれど、一生懸命我慢した。我慢するたびに、自分の唇をかんでいたためだろう、三日ほどで唇はぼろぼろ。そこからは、赤い液体がにじんでいた。景麒たちは、すぐに気が付いて 保健室、行く?といってくれたけれど断った。滴る血がしょっぱかった。その味は、今でも口の中にじんわりと残っている。
 最初のうちは、よかったのだ。あまりあれていなかったから。しかし、みんなの我慢も限界を超えてしまった。これは時間の問題だった。わたしも、堪忍袋の緒が切れてしまった。もうがまんできない。よくぞここまで我慢できたものだ。自分でもそれが不思議だった。
 そのあと、クラスの至る所で口げんかが起こった。担任の先生も、頭を抱えて悩んでいた。みんなで息が合わないと、団体とびは難しい。しかも跳べる人も跳べない人もいる。
跳べない人だけ特訓をすれば跳べる人は休んでいられる。もちろんその逆もできる。しかし、休めない人がいる。縄をまわす人だ。どう考えても、休む時間がない。
 ある日、いつものように重い空気の下で練習をしていた。そのうち、ちらほらと
「疲れた〜。」
とか
「いつまでやるんだ〜。」
とか言う声が聞こえてきた。それが、一人や二人ならばよいのだ。五人も六人も言っているのだ。言いながら跳んでいるならまだしも、跳ぶ気がなさそうにぶらぶらしているのだ。
それにつられて、二人ほど抜けていった。それを見て、わたしたちはいらいらしてきた。
縄の中には、四人しかいなかった。縄から離れたところで、にやにやしながら
「少し休めば〜。」
などと、口々に言ってきた。ついにわたしは、我慢できなくなった。蒼い炎は静かに燃えていた。跳んでいた四人と、なわを回していたわたしを含めた二人は、一斉にそう言った者を見たと言うよりもにらんだ。にらまれた相手は少し困ったような顔をし、おどけたように言った。
「何?わたし何か悪いこと言った?」
それには、六人のそっけない冷たい言葉が返ってきた。
「自分がなに言っているんだか、考えてから言えよ!」
それにわたしはこう言い添えた。
「やりたくないのなら、やらなければいい。」
みんなの視線がわたしに集中した。それに答えるように、わたしはうなずいてこういった。
「やりたくないのならばやらなくても良い。ただし、代わりの人を連れてきてくれ。十二人跳びは、十二人跳ぶひとがいなければならないのだから。」
みんな唖然としたようにわたしを見た。
「延麒・・・。」
棒を飲んだように突っ立っている人々に、笑って言った。
「本当のことを言っただけ。違う?」
「それは・・・そうだけど・・・。」
わたしはニコニコ笑っていたけれど、本当はすごく心配だった。
(これから、どうなるのだろうだろう。)それだけが、とても心細かった。           (体験実例)
 「ごめんね。」
「今度から頑張るから・・・。」
そういってきたのは、十二人跳び仲間割れ騒動の翌日だった。わたしは、あまりにも急だったので、
びっくりしていたもののとてもうれしくて涙が出そうになった。
「わたしこそ、言いすぎてごめん・・・。」
もし、あの時仲直りをしていなかったら、わたしたちはくいのある試合をすることになっていただろう。
その日から、わたしたちは必死で練習した。つらいときは励ましあい、喜びを分かち合い・・・。
いまは、つまらない流儀などに縛られているときではない。そう、クラスの誰もが思っていた。
                                                  (前の話、もし〜)        
 「負けちゃったね。」
肩を落としたわたしの隣で、景麒がしんみりと言った。
「うん。」
力なく言ったわたしに、でも、と言った。
「でも、頑張ったのだからくいのない試合ができたでしょ?」
わたしははたと目を上げた。そこには、涙を浮かべながら笑っている景麒の顔があった。
「そうだね。・・・。」
無理に笑うと、とても泣けてしまった。嗚咽がこみ上げていて、後が声にならなかった。
 クラスにとって、みんなで頑張って何かする。ということはゆうじゅうをふかめるための大切な場のように思える。そして、今年の縄跳び大会は六回のうちで一番よい縄跳び大会になったと思う。
                                                      (一般化)
 いつものように、木の扉を開いた。いつものように、集落ができていた。ただひとつ違ったことは。
「おはよ〜。」
「おはよ〜。」
ただひとつ違ったことは、挨拶がクラス全体から聞こえてきたことだった。残りわずかな小学校生活が、よいものになるように・・・。                               (書き出しの結び)

   講評   yuta

クラスの流儀は居心地がいいと錯覚していたけど、それが人間関係の歪み(ひずみ)を生んでいたのかもしれないね。少しずつ無理がかかっていた小さい亀裂が苦しい練習で一気に破裂してしまったのね。
 ただでさえきつい縄跳びの練習。それだけでもイライラするのに、勝手な行動をとられてしまっては我慢の限界。そんな心の葛藤を中心に描き、書き出しと結びの呼応では朝の風景でまとめるという、静と動が生きている構成です。
 『わたしはニコニコ笑っていたけれど、本当はすごく心配だった。(これから、どうなるのだろう。)それだけが、とても心細かった』 気持ちを素直に語ってくれましたね。
 「ごめんね」の一言はうれしかったね。「わたしこそ言いすぎてごめん……」分かり合うには短い言葉で十分だったんだね。
 「おはよ〜」同じ場所の同じ言葉。だけど違う。それが分かるのはクラスメイトだから。心がちょっぴりくすぐったくなるような感覚だね。小学校生活もあとわずか。小さい縄張りだけで終わっちゃもったいない。クラス一丸、胸を張ってゴールしよう!
      

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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