国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   家庭科実習   うやさ

 赤い、完熟トマトのような色のソースがのった。
「二学期の調理実習はスパゲティです。今回は、ミートソースを作ります」
二学期に入って、始めての家庭科は調理実習の計画だった。一学期にはワンタンスープを作り、少し失敗した記憶はまだ新しい。
「材料などは学校で用意します。一学期と同じようにグループで作りますから、グループ分けをしてください」
調理実習までのことは一学期と同じのようだ。そして、調理時間が一時間と言うのも同じようだった。
「さて、ちゃっちゃと決めちゃいますか」
係り決めの時間のときに発せられた第一声だった。
グループ決めはいたって簡単で、まず男女別に二人から三人組に分かれる。それからクジで男女混合にするのだ。
クジなのでどこと当たるか分からないのが、男女共通の悩みなのではないだろうか。
そして今回、男子とは流石に前回と一緒ではないが女子は前回同様の三人組だった。
グループ決めの前半がほどんど自由と言っていい決め方なので、それも当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。
その第一声を発したのは、三人組の中で一番のお調子者の子だった。そして、よく意見を言う。
「あのぉ、男子が出かけちゃってるんですけど」
そう言ったのは、少しおっとりした性格の子だった。
「一人、休んじゃってるからね。さて、割り当ては勝手に決めちゃっていいのかな?」
そう言ったのは自分だ。割と勝手な性格なので、ある種の「お調子者」と本人も自覚している。
「え〜駄目だよぉ〜。一応聞かないと」
「そうそう」
「じゃ、誰聞きにいくのさ?」
と、結局はこうなる。
始めは、お調子者が聞きに行っていた。と言うことで、残りは自分とおっとりになる訳で。
標的になったのはおっとり者の方だった。最初は、二人で押していたのだが次第に顔が赤くなっていったので、仕方なく、自分が行くことになった。
結局は自由に決めていいとのことだったので勝手に決めていく。
ほとんどのグループは六人組なのだが自分達のグループは少数派の五人組だった。女子三人、男子三人。
なのに何故、「五人」となるか。
男子三人のうち一人は、おそらく来ないだろうと言うことが大体分かっていたためだ。不登校児なので。
そのため、実質五人組となる。
さらにその日は、男子のうち一人が休んでいて、居辛かったのだろう。と言うことで、決めるのは女子三人組。好き勝手、決めていく。
流石に、自分達が嫌なものを押し付けるのはまずいと三人とも思っていたので、自分達の中で出来るものを割り当てていく。
自分は、切り刻まれた材料を炒める係りとなった。それと、もう一つ。食後の食器洗いだ。
実習当日。実習時は三校時。お昼前の調理となる。
実習準備が出来ると、自由にやり始めていい。
その日は、休んでいた男子も無事に復帰し、予想した通りの五人での実習となった。
「良かったね〜、きてくれて」
そうおっとり者が言った。彼女は、実習当日にも彼が来なければ、男子一人ではやりにくいのではないかと心配していたのだ。
優しい彼女らしい意見だった。自分は全く気にしていなかったのだが。
「はいはい、どんどん切る〜!」
お調子者がおっとり者に言った。何故かと言うと、彼女が材料を切る係りなのだ。因みに、お調子者はミートソースの最後の仕上げ担当。盛り付けは女子三人組だ。
男子はと言うと、麺ゆでを任せている。なので、お湯が沸くまで暇だ。他のグループの男子のところに遊びに行っている。
「う〜、ちょっと待って」
「ねぇ、油は?」
「前にあるんじゃない?」
「だ〜、こぼすなよぉ!」
「す、すんません」
「水っぽいんじゃない?」
「やっぱりそう思うよね?」
「ごちゃごちゃ言わないっ、しばらくほっと置けば蒸発する!」
「そりゃ、焦げるよ」
「焦げると思うな」
「焦げない、焦げない!」
そんなことを言いながら、進めていく。
先生が指示を出す前に、自分達のグループは既にそれをやっている。ずいぶんと早くやっているようだった。前回もこんな感じだったな、と思う。
どうやら、喋れば喋るほど進んでいくタイプのようだ、三人とも。
男子の方はたまにお調子者からの支持を受け、
「あ、もう時間じゃない?」
二度ほどお湯から出し、入れるを繰り返したのち、麺の方は完成した。
炒めもすでに終わり、後はお調子者が仕上げをしている。こちらは彼女の性格がよく出ていた。一ヶ所にもとの粉を入れてしまったので全体にかき混ぜるのに苦労しそうだ。その割には楽しそうにやっていて、時々こぼしつつ混ぜることが出来た。ただ、水分が多かったらしく、しばらく煮込むことになった。
自分はその間、麺を各お皿に分けている。これも自分の性格が出ていた。実際は、面が上手く均等に分けられなかったので後半に調整しようと思っていたのだが、やはりそれは自分の考えで。
「あ、麺の多さが違う」
おっとり者に、言われてしまった。
「だー、大丈夫!気にしない気にしない、後で調整するから」
「今したほうがいいと思うよ」
痛いところをつかれてしまった。その後、何とか平等にすることができ、話を誤魔化すことができた。正直、内心、焦っていたので安心した。
「じゃ、仕上げのソースを入れるのは私の仕事ってことで」
いつの間にかお調子者がフライパンを持ち、いかにも「準備完了」と言う感じで立っていた。ここまで準備が出来ていたら断ることは出来ない。自分とおっとり者は彼女に任せることにした。
ここで忘れていたのは、彼女は自分と似た性格で。どこか、大雑把なところがある。と言うことは。ミートソースの量が「多少」変わったり、「多少」お皿からはみでてしまうのは予想できたことだった。その予想を裏切らないところが彼女らしいと言えばそうなのだけど。少しぐらい、みんなが食べるのだから、気をつけてくれたっていいじゃないかと、思ってしまう。
ソースは麺と違い、やり直しがきかないので余計だ。
そんなことを考えているうちに。
赤い、完熟トマトのような色のソースがのった。(書き出しの結び)

   講評   jun


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