創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   人が死ぬのが嬉しい?   しっぽ

 人間は心臓が停止し、血液の循環が起こらなくなった時が「死」である。という定義は、もう昔の話だ。現在は、生と死の中間的状態が長期化する傾向が見られる。その一例が脳死である。最近では、脳死により助かる見込みのない身体を活かすことができる。脳死身体の臓器を他の患者に移植することによって、その身体を役立てるのである。そうした事が日常化する中で、脳死患者らを「資材」として見るという問題が出てきた。しかし、それは人間としてどうだろうか。私たちは、今の状況をそのまま受け入れるのではなく、もっと疑問を持つべきである。
 その第一の方法に、人間としての本来の在り方を考える、ということである。以前、世間で『臓器移植提供意思カード』が話題となった。コンビニやスーパーなどのいたる所にそのカードが置いてあったので、一枚家に持って帰った。私が居間でそれを眺めていると、母が「あれ、臓器提供するの?」と聞いた。私が「うー・・・もし脳死だったらあげてもいい」と答えると、母は猛烈に反対した。理由は、棺桶に入っている自分の娘の目玉や臓器がいくつか無くなっていたらとても悲しいからだそうだ。私は初め、母の言う意味がさっぱりわからなかったが、よく考えると、なんとなくわかるような気もする。自分が腹を痛めて産み、手塩にかけて育てた子供の一部を、他人に「はいどうぞ」と渡すのはきっと悲しいだろう。臓器移植は、多くの人間にとって有益だが、母の考えは私情によるもので、また、母はただ失うばかりで、しかも他人に何か利益をもたらすこともない。けれど、私は母の気持ちを悪いとは思わない。母が死んだ私を「モノ」や「個体」として見るのではなく、一人の人間として見てくれていることから生まれる考えだからである。人間は様々な感情を持ち、思い出を与えてくれる生き物である。「モノ」ではない。ということを常に念頭におくことが必要である。
 また、第二の方法に、効率や能率を優先する利益主義の社会を変える、ということである。その昔、日本を治めることとなった豊臣秀吉は、刀狩という政策を行った。秀吉も農民の生まれであるにも関わらず、農民の一揆や反抗を恐れ、事前に武器を集め、対処しようと考えたからである。この政策は農民たちの反感を買った。このような政策は、同じ農民の出であるのに、全く信頼されていないということを露骨に示されているようで確かに良い気分はしないだろう。人にはそれぞれ変えることのできない優先順位というものがあるだろうが、人間としての価値観を失うことなく行動したい。
 確かに、臓器移植は多くの人にとって有益である。しかし、この臓器移植がもっと一般化されてきたら、誰かが瀕死の状態になることを待ち望む人が出てくるだろう。必死に生きようとしている人の周りに、悲しんでいる人、今か今かと期待している人が集まる光景を思い浮かべると、なんとも不気味である。この臓器移植について善悪を決めることは実に困難である。沢山の矛盾が交錯する状況をただ受け入れてしまうのではなく、常に疑問を持ち、それぞれ人間としてどう生きるかを考えていきたいと思う。

   講評   nane

 よく考えて書いたね。理屈の上では臓器移植というのは、だれも損をせずにだれかが得をするということだからいいことのように思える。しかし、日本人は肉体と精神を分けて考えない伝統があるから、死んだら体はどうなってもいいとはなかなか思えない。そういう自然な感情に実は、大事なものがあるということだね。
 また、説明のときは言わなかったけど、臓器移植とか遺伝病の治療などを進めていくと、やがて人類の肉体そのものが低下していく可能性がある。そういう現象が出るのは何千年も先だろうけど、気がついたときには地球温暖化のように手後れになっている可能性がある。
 臓器移植の問題には、正解というのはないから、そのつどの具体的な例を通して具体的に対処していくしかない。大事なのは、人間の自然な感情というものにも配慮していうことだろうね。
 森リン89点。さすが!

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