創造と発表の新しい学力
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
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人間の個性と読書 らいむ
字が読めないことを意識しつつページをめくり、「ここには何が書いてあるのだろう」と思い、もどかしい興奮をおぼえたことがあるだろうか。本を読むと場合によっては、作者の意図をもこえて、我々の内になにかを作り上げて行くことなのだと思う。理解できない書に行きあたると、この本が読めたら」と足ずりしたくなる。歯の立たないものをかんだようなつもりになり、見当違いの解釈をすることも多い。だが、わたしにとっては、それこそが読書の楽しみなのだ。(要約)
私は、今、探偵物の本が好きである。初めの出会いは、四年生の頃だった。図書室に江戸川乱歩のシリーズがずらりと並んでいたのを見て、
(これはおもしろそうだな。)
と思い、読んでみたのである。すると、まるで本に吸い込まれてしまうかのように、あっというまに読み終わってしまった。読めない漢字もあったが、勝手に読み方を作って、(笑)どんどん読んでいった。そして夏休みの図書貸し出し。私は絶対江戸川乱歩の、『黄金仮面』と『鉄人Q』を借りるつもりでいた。図書室に一歩踏み入れたら、もう私は江戸川乱歩シリーズのところにすっ飛んでいった(笑)。そして幸運なことにその本を借りることができ、うきうき気分で、教室へ向かっていった。すると江里(友達)に、
「かおりそんな本が好きなの? ちょっと意外な趣味じゃないの? そういう系怖くない? 」
といきなり質問攻め(笑)させられた。江里は、すごく女の子らしいので、探偵物は好まないらしい。本を見ると、『かぎばあさん』シリーズ。全然違うなぁと思った。とりあえずこの質問攻めから抜け出さなくては・・・。
「まぁ、人には好みってもんがあるわけよ。私はこういう系が好きだからぁー、あはははは。」
なんて笑ってごまかして何とか逃げてきた(笑)。今思うと、人と人との好みの違いってすごく激しいなぁと思った。現在六年生で探偵物が大好きな人は、分かっているだけで私を入れて三十三人中二人。
本の読み方は人それぞれだが、好みの違いが激しいことに、私は改めて驚いた。ところで、江戸川乱歩シリーズに出会ってから早くも二年がたつが、今でも探偵物は大好きである。
さて、人と人との好みの違いがあることは分かったが、私と友達(しおりん(あだ名))はこの好みの違いのせいでケンカをしたことがある。私は五年生の時、探偵物も好きだったが、『ダレン・シャン』のファンでもあった。むしろ、『ダレン・シャン』一筋だった時期といったほうが良いだろう。そして六年生でたった二人の(私を含む)探偵物ファンの一人、しおりんに、私は『ダレン・シャン』を読まないかと勧めたのである。そう私が紹介してからかれこれ一週間。私はしおりんの家に遊びに行った。
「おじゃましまーす。」
そしてしおりんの部屋へ。学校で仕入れた情報(?)をバンバン公開して三十分。向こうが、何かに気づいたように言った。
「そういえばさぁ、かおりん(私のあだ名)は、『ダレン・シャン』読んだらって言ったよね。」
「うん、言ったよ。」
私は普通に答えた。しかし、その後のしおりんの言葉が私の脳天を刺した(笑)。
「あんなの個人別にいろいろ趣味ってもんがあるでしょ? 詩織はねぇ、そんなもん好みじゃないよ。いくらかおりんに勧められたって読む気は全くないからね。そこらへんよろし・・・」
最後の「く」を言い終わる前に私はもう頭が沸騰していた(笑)。そしてつい、言ってしまっていた。
「別に読めなんて誰も言ってないじゃん! 私はおもしろいから勧めただけなのに、そんなに『ダレン・シャン』を突き放すような言い方しなくったっていいんじゃない?! 」
その言葉に反応して、向こうも反論。
「詩織が怪人二十面相好きなの知ってるでしょ?! 夢中で読んでるんだよ。なのにそこに『ダレン・シャン』が入ってきたら、夢中になんかなれないでしょ?! 」
「じゃぁ本を紹介したらいけないの? 自分の趣味を壊されたくないからって、本を紹介したらいけないなんて、そんなの卑怯だよ! 」
長々と二人でケンカしていた。こんな風に、好みの違いで私達はケンカを引き起こしてしまったのである。結局、何とか仲直りができた。けれども、本の読み方が違う、こんな些細なことでケンカをしてしまうのが、何かおかしいような気がした。
人間には、いろいろと個性がある。けれど、その個性を批判するのではなく、良い面で見るのが一番良いと思う。人間にとって読書の方法とは、いろいろあるけれど、それを自分なりにこなしていけば良いと思う。本はつまらなさそうでもまず読んでみないと分からない。私はこれからもどんどん本を読み、いくつも熱中できる本を見つけていきたい。
講評 kiri
こんにちは。夏休みなので、たくさん読書ができるといいな。そして自分の好きな一冊を見つけられるといいね。
<構成> きれいに要約ができました。長さもいい具合だね。
<題材> 好きな本の場合、読めない漢字も「勝手に読み方を作って」読めてしまうから不思議だね。これが、興味のない本だと、勝手に読み方を作るどころか、読める字でさえ読めない(?)ということもあったりするでしょう。かおりちゃんは探偵物が好きだけど、そうではない友だちもたくさんいるね。むしろ、探偵物が好きというと「なんで?」と思われたりするという体験例がわかりやすく書けました。また、もう一つの体験例では同じ探偵物が好きな子でさえ、やはり全く好みが同じではなく、そのことで口論になってしまったという話が書けました。本当に本の読み方は人それぞれだね。
<表現> ユーモア表現はいつもながらたくさん入っていたね。いうことなしです。
<主題> 「人間にとって読書の方法とは」と、かおりちゃん自身の思いが書けたね。読書の方法も、好きな本も、一つの本に対する考え方も、自分の思い通りに楽しめるのが本というものだね。
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