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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   現代人の心の病   高原 八千穂

 時代劇では、親や兄弟の仇をとるために人を殺めるという物語がある。罪を犯す人の気持ちは非常に明解である。これに対して、現代では、犯罪に結びつく動機がわからない事件が見られる。例えば、オウム真理教によるサリン事件のような無差別テロはその一つであると私は思う。教団の信者は、サリン事件の被害者に対して直接恨みがあったわけではない。方向を見失った内に向かう気持ちが、殺人兵器となる薬品を作り、実行にいたった。「誰でもよかった。」と、憂さ晴らしに見知らぬ人を殺傷する事件も起きている。また、そのように心の闇が犯罪につながるケースが低年齢化していることもいくつかの事件が示している。加害者の心が理解しがたい数々の事件から、現代の人々の多くが心を病んで、人としての方向を見失っていることが伺える。Aの資料はその原因を、Bの資料はそれに対する対策について述べている。
 現代の人々が心を病む原因として、Aの資料では、現代の人々の実生活は束縛されることが多く、貧弱な行動しかとれないために、満たされない気持ちを実在しない世界で実現しようとすることが、結果として、近代人を感傷と哀愁に浸らせている点を指摘している。物質的に豊かであることが、人間的に豊かであるとは言えない。むしろその逆で、近代、人々の生活は便利になり、物資も豊富にあるが、多くの人々が心を病んでいる。不登校や引きこもりの数が年々増えている。小学校からの配布物に青少年の電話相談窓口の案内が一年に数回含まれる。また、会社の健康保険組合からも、同様に悩み相談窓口のお知らせが配布される。鬱々とする近代の人々の存在が背景に伺える。現代の人の心問題を考えると、自分が自分以外の何かと向き合う経験が乏しいために、自分の内にどんどんこもっていく傾向があるのではないか。その結果、いつしか方向を見失い、自分を受け入れない世間を逆恨みして、薬品や爆弾など、人を傷つけるものを、暗い部屋の中で作ることに日々没頭する。こうして、心を理解できない犯罪へとつながっていくのではないだろうか。生きるのに精一杯な状況では、自分とは何かを追い求める余裕なんてない。現代の人の心の悩みは恵まれた環境の副作用による贅沢な病といえるのかもしれない。
 病める現代人への対策として、Bの資料に見られるように、自分たちの生活の中に、近代社会の中で埋もれてしまっている心が見える行為を復活させることである。自分と向き合うこと自体は、決して否定すべきものではないが、向き合うものが、外界から遮断された自分だけの場合、自分の中だけで堂々めぐりをする悪循環に入り込むと、ごく限られた狭い範疇での自己中心な発想しか生まれない。向き合う対象を自分自身から、自分を取りまく人や、物や環境に広げて、自分と他が対話することを経験として持つことがカギとなるであろう。
 今日のビジネスの社会では、不景気の影響もあり、思い通りにいかずに、満たされない気持ちになることは実に多い。自分の中に答えを見出そうとすると、当然のことながら落ち込みもするし、気もおかしくなりそうな状況は、多々考えられる。しかし、考えて答えが見つかるようなものの方が少ないかもしれない。私の父は、「考えごとは夜にしてはいけない。太陽の下でするものだ。」と、言う。夜は暗いため、まわりもあまりよく見えず、気持ちも落ち込みやすい。昼間であれば、周囲のいろいろなものが見えて、明るい太陽の下であれば気分も沈みにくい。まずは自分以外のものに気が付き、感心を持つことからはじめよう。次は、自分と他との対話をしよう。自分だけの世界に閉じこもって、暗い部屋で凶器作りにいそしんでいる場合ではない。その力を外に向けるのだ。地球上に自分や自分と同じ思考を持つ人しかいないと大きな勘違いをして、慰めあっていては何の解決にもならないのだ。

   講評   nane

 冒頭の状況説明がよく書けています。現代人が心を病んでいるという微妙な問題を実例を元にわかりやすく書きました。
 第一段落のまとめに、今後の展開の方向を書いたのもいい書き方です。実際の試験ではこういう書き方をする人はほとんどいませんから、これだけでも読みやすさが大きく変わってきます。
 第二段落の感傷と哀愁の話は、このとおりですが、これを更に自分の問題として書いていくといいと思います。つまり、「私も含めて現代人は」という視点で書くということです。
 お父さんの「考え事は夜にしてはいけない」は名言ですね。(笑)本当は、みんながこういう健康な心を持っていれば、問題そのものがないのですが、実際にさまざまな問題があるというのが現実です。結びを、「元気をだしてがんばろう」という形にすると、小論文のまとめとは少しずれてしまうかもしれません。反対意見に対する理解をもっと別の点から書いていくといいと思います。

▲窺う。伺う。

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