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　　　本質　　　シュシュ

　より深く自然を理解しようとする意欲を持っている人々にすれば、博物学だけでは物足りないことであろう。したがって、次に必要なことは、ある事物や現象の形態や振る舞いの奥にひそむ原理を追求することである。ハドレーの大循環論は、まず熱帯貿易風や中緯度偏西風といった経験的事実から出発し、成因を論じ、さらに作用論にまで及んでいたのである。ここにこそハドレーの偉大さがあったわけである。私も、表面的な現象を見るだけでなく、そこから本質にまで及ぶ考えを広げられるような生き方をしたい。
　そのための方法は第一に、自分の見たこと（聞いたこと）がまるごと真実だと思いこまないことだ。くだらない例しか思いつかないが、雑誌などによくのっているダイエット食品の宣伝は、そのまま信じてはいけないものの典型のようなものだと思う。その誌面には、「食べながらもやせる」「すぐに効果がでる」など、魅力的な言葉がたくさん踊っている。その上ご丁寧なことに、「私はコレで○○㌔痩せました！」というようなビフォーアフターの写真入りの実例まで載っていることが多い。しかし、その商品だけで努力をせずに楽して痩せるなんていうことは、常識的に考えてもおかしいと思う。だいたい、何事でも努力なしでうまくいくことはないし、それはダイエットに関しても言えるはずだ。その証拠にも、最近ニュースで聞いたのだが、ある宣伝文句（たしか「脂肪分を体内で固めてそのまま排出」なんていうもの）を謳っているダイエット食品の会社が政府に厳重な注意を受け、その宣伝文句を使うことを禁止されたらしい。もちろん、研究所によってラットの実験した結果をふまえてのことだ。やはり、うまい話には裏があるもので、そのまま真実だと思い込んではいけないのだ。見たり聞いたりして得た情報は、自分の頭でそれに関する色々なことを考えてから、総合的に判断する必要がある。
　第二の方法は、テレビや新聞を初めとする様々な報道機関が、そこにある事実だけでなくその原因や背景なども正しく報道するということだ。有名な物理学者であるアルキメデスが死んだ理由を知っているだろうか。（伝記）当時激しい市街戦をよそに研究室に篭り床に幾何学図形を描いて計算をしていた彼の元にローマ軍がなだれ込んだきた。アルキメデスは、兵士たちを無視するどころか「そこをどけ!その円を踏むな」と叱りつけた。その言葉を聞いて激高した兵士に、アルキメデスはその場で殺されてしまったのだ。彼にとって、大切なことは命ではなく、ものごとの真実だけだったのだ。これは極端な話かもしれないが、現代の報道機関もこのくらい真実を大切にした方が良いと思う。
　確かに、実際の姿形をよく見ることは大切だ。しかし、本当に大切なことはものごとの本質を見抜く鋭い洞察力と確かな判断力だ。「大切なのは、健康らしい外見ではなく、健康自身である。」という名言のように、いつでもそのものの真実の姿を意識している必要がある。真実を知ろうと、深く考えることを習慣付けることによって、自分の人生をすぐにメッキがはがれてしまう安っぽいものではない、密度が濃いものにすることができるだろう。

　　　講評　　　miri