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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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 「いちど視たものを忘れないでいよう」茨木のり子詩集より
 この詩を詠むと作者が「固定観念にとらわれて物事を判別するのは簡単なことだが、その奥底にある真実を追求し、自分の目で物事を判断していくことは大切だと言っているとわかる。しかし、何故詩の要旨がそうであるのに題名が「いちど視たものを忘れないでいよう」なのか?題名との関連とはいったい何なのだろうか?まず、作者が「いちど視たもの」の例を挙げてみよう。まずはじめに、第一次世界大戦の頃、ドイツがフランスを攻めたが、フランスはあまりその戦いに乗らず、あっさり降伏してしまったという例が挙げられる。その時、作者が住んでいた日本国では「フランス人はすぐ降参してしまう軟弱者だ」という固定観念ができ、日本全体がフランス国をあざ笑うようになっていた。…というよりも、日本全体がファシズムと愛国主義に陥っていた頃だったので、国全体が、国民が異国を憎むように仕組み洗脳していたのだ。しかし、後々からわかることだが、意外にもフランスは弱者の国でもなく、むしろ日本よりも圧倒して富国強兵だった。同じように中国や日本人女性もそれぞれ「意外な一面」をもっていて、そのことに気付いた作者は、驚きを隠せなかったそうだ。まとめると、「いちど視たもの」とは「意外さへの驚き」ということがわかる。つまり、それを題名に代入して考えると「いちど視たものをわすれないでいよう」が「あらゆるものの意外な一面を忘れないでいよう」と変化できる。ではなぜ「あらゆるものの意外な一面」を「忘れないでいよう」なのか?
 本文の最後に、「夏草しげる焼け跡にしゃがみ、若かったわたくしはひとつの眼球を拾った。遠近法の測定たしかなつめたく、さわやかな!…たったひとつの獲得品、日とともに悟る、この武器はすばらしく高価についた武器…、舌なめずりして私は行きよう!」とある。このような、フランスや中国などの例を先に挙げて、最後に総まとめをする文章形態を一般に後尾一括法と言われている。つまりこの部分が詩全体の要約であるので、ここの意味と題名を関連付けて考えれば何かヒントを得るかもしれない。まず「夏草しげる焼け跡」というのは、本作品が出た時の時勢からして終戦のことを指す。そして「眼球を拾った」とあるが、叢に目玉などが落ちているなどという恐ろしい光景は想像しがたいので、この場合の「眼球」とは作者にとって「着目すべき点」のことを表す比喩であるとわかる。そして当然「眼球を拾う」の「拾う」も同じく比喩表現だ。ここまでではすでに「終戦(戦争が終わって)若かったわたくしは、とある、着目すべき事にめぐり合った」と一文を解釈して良いだろう。もっとわかり易く言い換えると、「若かった私は、戦争という体験を経て沢山のことを知った。そして終戦後、あの『戦争』という大惨事を見つめ返してみると、更にたくさんの教訓をみつけることができた」となる。そして「たったひとつの獲得品」というのは、先ほどの通り「戦争を経て得た教訓」のことだ。次に「日とともに悟る」、とあるが「日」というのは太陽の「日」とも考えられるがそれでは意味が通らないので日出、日没の意味の「日」であるということがわかる。日出、日没は、百人一首や万葉集などの日本和歌でも「時が絶えず流れる象徴」として古くから扱われてきた。つまり、「日とともに悟る」=「時の流れ、時代の流れとともに知る」と言う解釈ができる。最後に「この武器は素晴らしく高価についた武器、舌なめずりしてわたしは生きよう!」とある。ここだけ聞いてもわけがわからないが、「この武器」というのは詩の前後関係からして矢張り「戦争を経て得た教訓」と考えられる。つまり、「戦争を経て得た教訓は素晴らしく高価についたわたしにとっての武器」と言い換えることができるが、そのあとの「舌なめずりして私は生きよう!」というのがいまいち不明確だ。まず、「舌なめずり」とは広辞苑によると「転じて良い獲物などを待ち構えるさま」という意味である。「転じて」というのは先回りして、ということだが、何故作者は何故「舌なめずり」して生きようとおもったのか?…ここでも、大幅な比喩表現が使われている。「転じて良い獲物を待ち構えよう」という表現をのは詩全体と重ね合わせて考えるしかない。…そのためには、まず詩全体を大雑把に読み返してみる。するとフランスや中国への固定観念(日本国が国民をそう洗脳した)を打ち破られたときのカルチャーショックが描かれている。ここから、「舌なめずりして生きる」とは、そのような偽りの情報、偽りの世論が「偽っている」と判断できる、自分自身の「目」を持って生きていこうという、…そういう筆者の意気込み、そして自分自身の人生の再確認をしているのではないかと私は思った。つまり「夏草しげる焼け跡にしゃがみ…」という部分をもう一度全訳すると「若かった私は、戦争という体験を経て沢山のことを知った。そして終戦後、あの『戦争』という大惨事を見つめ返してみると、更に沢山の教訓をみつけることができた。その『教訓』はたったひとつ私が戦争を経て得た獲得品であって、時代の流れとともに知る、この『教訓』こそ私にとっての最高の武器だ。だからこれを元に善悪を自分自身で見極める力をもって強く生きていこう!」ということになる。
 ここでもう一度思い出していただきたい。「いちど視たものを忘れないでいよう」というのは何なのか?という提起をもとにこの話を進めていった。ここでもう私もあなたもこの題名の意味がわかるだろう。こたえはきっとあなたが今、感じていることそのままだ。

   講評   miri

観念的な詩に挑戦しましたね。最後の「全訳」の部分で、この詩を味わいつくしたことがよくわかります。特に題名にこだわったあたりの解説は秀逸です。日の解釈も芸術的といってよいでしょう。
 このように前半の部分から中盤にかけても、非常によい内容ですが、すこしばかり(かなり?)長いですね。前回も申し上げましたが、これだけの「書く力」があるのですから、さらに高い水準を目指しましょう。推敲、これによって、自分の主張にもう一度メスをあて、表現を凝縮していくのです。ぜひ、チャレンジしてください。

             
  

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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