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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   美観と利益   カノン

 物の見方には二つの種類がある。一つ目は個々を知的・分析的に見る。二つ目は全体を総合的に見るというものである。それぞれの見方には違った良さがあるのだが、近代の社会では一つのものを個別に評価するという前者の見方をする場合が増えてきている。そういった見方は周りの景色とは不調和の建物をつくってしまう原因になる場合がある。建物とは周りの風景との関連の中で見るものなのにそれを無視してしまうのは問題である。
 その原因としては第一に、人々が明らかになっていない事柄を詳しく研究し、人間が獲得する知識一段と増したためである。では実例を挙げて考えてみたいと思う。私の学校では中学三年生時に、修学旅行奈良・京都の事前学習として「中世の仏教建築」を勉強し、現地では学んだ知識をもとに理解を深めようという授業がある。そのかいあってか仏像にはすっかり詳しくなり、現地ではまるでツアーコンダクターのように周囲の人たちに説明できたものである。しかし、もし私が仏教建築について全くの無知で、初めてあんなに大きな大仏を見たとしたらその感動はいかなるものだったのだろうか。小さな子どもが「おっきい、おっきい」と無邪気にはしゃぐように、私もただ純粋に感動できたのではないだろうか。
 第二の原因は、人間が景色や町並みの美観よりも個人的な利益をいっそう求めるようになったことである。自然界の動物たちが『目立つものには強い印象や興味を持つ』という本能を持っているのはよく知られている。雄は雌に求愛行動として羽の色が派手になったり、鳴き声が甲高かったり、とそのアピールの仕方は様々だ。それは人間にも同じことが言える。また商業の面においては店を印象付けるために表看板を工夫したり、新しい建物に建て替えたりもする。しかし商売のためとは言え、そういった奇抜な建物は古都のような町並みには調和せず、その一つの建物のせいでその街全体が壊れてしまう原因となる。岐阜県の飛騨高山では趣ある美しい町を守るために条例をつくり、奇抜な建物の建築を禁止しているが、相反して古都の代表的存在とも言える京都では、町の新たなシンボルとして四十年前に京都タワーが作られている。私も実際この京都タワーを見たことがあるが、その光景は異様なもので、地元の人にとってもなかなか受け入れ難い物だと聞いた。京都タワーは利益だけを求めてはいけないという教訓となる実例になってしまったのだ。
 確かに近代化をはかり新しいものを取り入れるのは大切なことだ。しかし、もし過去の建造物や町並みを壊してしまえば、同じものはもう二度と甦らないということを忘れてはいけない。町並みとはただ単に人々の家の連なりではなく、歴史や文化を吸い込んだ無形文化財だといわれるように、町並みそのものがタイムカプセルに包まれているのだ。カメレオンは敵から身を守るために体色を周りの色と同じにすることができるが、私たち人間もカメレオンのように、必要に応じて周囲に同化すべきではないだろうか。

   講評   jun

 森リンの得点は94点。言うことなしですね。段落ごとのバランスも取れていてとてもいいです。
 物の見方についてから書き始め、建物と周りの風景というテーマに焦点をしぼっていく過程も工夫しました。修学旅行での体験実例も自然科学実例としての求愛行動に関する話もよく見つけましたね。京都タワーを商業主義の象徴として例に挙げたところもいいですよ。
 結びの自作名言は、それだけを独立させて一文にした方がすっきりするし、カノンさんの主張も強く伝わると思います。カメレオンのたとえはやや揶揄的で、読む人の心をぐっとつかみます。
 じっくり取り組んで、いい作品に仕上げました。
                                

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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