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　　　気持ちいいベッド　　　オーロラ

＜＜講成＞＞
　「早く寝よーー。」
私はお母さんの背中をたたいて言います。実は私はまだ一人で寝られません。この家に引越してきた最初の日、私はまだ４才になったばかりでした。けれども私はその日ははりきって
「今日は一人で寝る！」
と言って自分のベッドに入りました。ところが私は夜中に目がさめて、暗くてこわくて、お父さんとお母さんが寝ているとなりの部屋まで行ってしまいました。
「ママ来てーー。」
とまるで幽霊みたいに暗くぼやけた感じで言いました。そうしたらお母さんは、まるでずっと起きて待っていてくれたみたいに
「はいはい。」
と言ってすぐ来てくれました。それ以来まだ一人で寝たことがありません。何日か同じことが続き、お母さんが最初からいっしょに寝てくれるようになって、それがいまだに続いているのです。
　私はいつも夜寝る時に、お母さんに本を読んでもらいます。一人で読むにはむずかしそうな本を読んでもらうことが多いです。そして、話がおもしろくなってくると、一人でどんどん読み進めて、お母さんに
「ずるーい。ママまだ読んでないよー。」
と言われます。この一年間で最後まで読んでもらったのは、「モモ」くらいだったと思います。
　最近私が一番感動した本は「ダレン・シャン」です。この本は１２巻あって、最初の３巻くらいまでは、お母さんに読んでもらいました。それから、お母さんのほうがこっそり先に読んでいて、９巻まで進んでいました。私が急いで読もうとすると、お母さんが意味ありげに私を見ます。先を知りたくて、お母さんに聞いても答えてくれません。そして……。９巻の最後にクレスプリーという登場人物が死んでしまうところで、私はわんわん泣いてしまいました。お母さんが、たくさんなぐさめてくれました。二人で、作者のダレン・シャンの悪口を言い合いました。そのあと、しばらくこの本の続きは読まずに、「窓ぎわのトットちゃん」などの楽しい本を読んでもらいました。でも、けっきょく「ダレン・シャン」も、お母さんより先に読み終わりましたが。（笑）
　今読んでもらっているのは、「ダーシー・バッセルが紹介するバレエストーリーズ」という本です。バレエの名作を英国ロイヤルバレエのプリマであるダーシー・バッセルが紹介するという形で、ストーリー以外にも、バレエのことがいろいろくわしく書かれていて、とてもおもしろいです。お母さんは、バレエのことにくわしいので、本に書いてないことまで、私の質問に答えてくれます。
　私は四年生から一人で寝ることに決めています。もう、二人で寝るにはベッドが小さすぎるのはわかっています。でも、一人で寝るのは……大丈夫かなあ。自信はありません。ママ、また夜中に起こしに行ったらごめんね。

　　　講評　　　nara

　先生も、オーロラちゃんくらいのころに、夜中にとつぜん目がさめて、お母さんのところに行ったことがあるよ。本当に、待っていてくれていたかのように、すぐに返事をしてくれて、おどろいたなぁ。お母さんは、寝ているときでも子どもの声が聞こえているのだね。
　寝る前のお母さんの読み聞かせは、オーロラちゃんにとってもお母さんにとっても、大切な時間なのだろうなぁ。ただ、本を読む・聞くというだけでなく、おしゃべりをしたり、本の感そうを話し合ったりして、お母さんと気持ちを通じ合わせているのだね。むずかしそうな本でも、お母さんのおかげできょうみが出てくるし、自分でも読んでみようという気持ちもわいてくるね！　『ダレン・シャン』『バレエストーリーズ』どちらの話もくわしくてわかりやすいせつめいだ。
　４年生になるまで、あと２ヶ月しかないよ！　一人で寝ると決めているけれど、本当は自信がない……オーロラちゃんの気持ちのゆれがまとめのだんらくに出ているね。こういう思いを積み重ねて、少しずつおねえさんになっていくのだなぁ。もしかしたら、オーロラちゃんよりも、お母さんの方がそのときが来なければいいのに、と思っているかもしれないよ。