創造と発表の新しい学力
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
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お金で買えない価値がある カノン
首飾りというものは、まず第一に財貨であり、第二に地位や富の象徴であり、そして第三にお守りの役目など様々な役目を果たすものである。『物』に思い入れをすることを物神崇拝(フェティシズム)と言うが、それとを馬鹿げたことだと断定する人たちが少なからずいる。しかし実際は物神崇拝の対象を何も持っていない人こそが不幸であり、心が貧しいと言える。また現代社会にも、あらゆる物を金銭的な価値に置き換えようとする考え方が広がっており、これは大きな問題である。
その原因は第一に金銭以外の価値が消失してしまったことにある。例えば、今テレビで『(旅には)お金で買えない価値がある』というキャッチフレーズを掲げたコマーシャルがある。確かに旅で得た思い出や友情などはお金で買えるものではないが、旅そのものはお金がなければ行くことができない。となると思い出や友情といった部類の物も、本当はお金が基盤になってくるのではないかという気にさせられてしまう。しかし、このようにお金を基準とする考え方は大人だけのものではなく、子どもたちにまで浸透しているようである。クリスマスが近づいていたある日、私はある親子の衝撃的な会話を耳にした。母親が小さな男の子に『クリスマスプレゼント何がいいかな〜?』と問いかけると、その子は『お金!』と答え、更には『サンタさんがプレゼントを持ってくるより、お母さんからお金もらう方がずっといいや!お金があれば何でも買えるもんね!』と平然とした顔で続けたのだった。これには隣にいた私も驚いて唖然としてしまった。自分もまだ子どもであるが、『いつからこんなにも夢がなくお金に執着する子どもが増えてしまったのだろう』とつくづく悲しくなった。社会に出れば、『お金の切れ目は縁の切れ目』という現実を目の当たりにするかも知れないが、せめて子どもたちにだけは純粋に夢を見てほしいと実感した。
第二の原因としては、人間が物の価値を図る最も簡単な手段はお金であると思っているからである。歴史を溯ってみてもわかるように、物を取引するという時にはかなり昔から貨幣が付きまとっていたし、貨幣という観念が定着したからこそ商売がスムーズに行われるようになったのは事実である。しかし、このような考え方は、自然界では存在しない。例えば、一匹のメスライオンが狩りに出かけシマウマを一頭捕まえて帰ってきたとする。その時このライオンは他のライオンに向かって、このシマウマを売りつけようとするだろうか。(笑)いやそんなはずはない。つまり動物たちの間では金銭感覚がないにもかかわらず、深い愛情や厚い信頼といった気持ちだけで、他者とうまく関係を保って生活しているのだ。よっぽど人間よりも利口に生きている気がしてならない。
確かに世の中の経済を支えているのはお金であるし、既にお金を用いるという文化が出来てしまっている以上、今更貨幣制度をなくすなんてことは到底できない、今やなくてはならない存在である。しかし、あらゆる物を金銭的な価値に置き換えようとする考え方が引き起こした問題が数多くあるのもまた事実である。『その鍵一つで、天国の扉も地獄の扉をも開けることができる』という言葉があるが、まさにお金という名の鍵は人類の進歩の門も、破滅への門を開けることができるのである。これからの私たちの課題は、金銭的な価値に執着するのではなく、お金で買えない物に本当の価値を見出すことではないだろうか。
講評 jun
<第一段落>
長文の内容をわかりやすく端的にまとめることができました。
<第二段落>
テレビのコマーシャルや、ふと耳にはさんだ親子の会話を例に挙げながら金銭以外の価値が消失してしまっている現状について書くことができました。
<第三段落>
ここに挙げられた自然科学実例はわかりやすい、いい例です。人間の歴史と対比させたところも効果的です。
<第四段落>
確かに貨幣制度をなくすことはもう不可能でしょうが、それはあくまでも制度であって、私たちがどこに価値を見出すかは私たちの考え方一つにかかっていますね。金銭的な価値への執着のみが人間を動かしているとしたら、恐ろしい世の中になってしまうと思います。物事の価値をはかる別の基準を心の中に持っていたいものですね。
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