創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

小学1・2年生   小学3・4年生   小学5・6年生   中学1・2・3年生   高校1・2・3年生

   my story   あとえ

 不確実な未来や危機的状況を前にして、何らかの選択あるいは決断を下さねばならないとき、物語が語られる。当人の「何者」をもっともよく明らかにするのは、何よりも当人にとって切実な自己理解の要求に基づいて語られた物語であり、そして、そのような物語こそが、他者に対しても、当人についてのより充実した「理解」を与えるのである。しかし、そもそも、ひとが自らについて語る物語にとって重要なことは、「独自性」というよりも、むしろ「真実性」ではないかと思われる。
 人が行動するときには物語が必要だ。しかし、自分にとって本当の物語というものがなく、社会から与えられた物語の上を生きているような社会であれば問題である。
 その原因として第一に、社会の提供する物語が数値などの科学的な装いを持っているために、人が自由に自分の物語を作れなくなったからということがあげられる。小学生の時、スチュワーデスや警察官、声優などあこがれるものがたくさんあった。将来の自分を思い描くことが楽しくて仕方なかった。しかし、中学、高校と学年があがっていくごとに、テストの点数や偏差値が重要視されるようになってきて、自然と将来つきたい職業の枠が狭くなっていった。また、スチュワーデスや警察官には身長制限があり、私はその基準をこえていないので、いくらなりたくても、頑張っても、絶対になれない。そのことがわかった時、私はとてもショックだった。仕方のないことだけれども、理不尽な気がした。数値社会について知っていけばいくほど、昔のようにあれもこれもと簡単に言えなくなった。もし、そうした数値で職業を決める社会でなければ、もっとたくさんの夢をずっと持ち続けることができただろうと思った。また、現代の数値社会が、自由に夢を持ち、自由に自分の物語を作れる社会になるようにすべきだと思った。
 第二の原因として、社会が複雑になり、人間が社会の全体像を見て自分の位置づけを考えるということがしにくくなったためである。世界は徐々に狭くなっていっている。目の前のことにとらわれ、自分の関わりのある狭い範囲で、生きる人が増えてきている。自然社会での例として、島に住む動物たちの話がある。ゾウやネズミは、その身を守るために、身体を大きくしたり、小さくして速く走れるようにしたりしている。しかし、外敵の心配のない島に住むゾウは身体が小さくなり、ネズミは大きくなると言われている。ゾウやネズミが、大陸というより広い世界では、よりゾウやネズミらしく生きなければならないように、人間も広い世界を自覚するときに初めてより自分らしい物語を作って生きられるのではないだろうか。
 確かに、自分の作った物語がいくら自分にとっては真実らしく見えても、それが今日の民主社会と共存できないものでは困る。しかし、人生という物語は、人によって構成されるものではなく、自分だけの、自分のための物語だから、私たちはもっと自分らしい物語を見つけるべきではないか。

   講評   kira

 由希子ちゃん、こんにちは。物語とはその内側で世界が完結するようなもののことを言うそうです。だから物語の中にはいくつもの人生やエピソードが包み込まれる。自分のための物語とは、いくつかある大きな物語に、自分を当てはめていくような作業になるのかもしれません。しかし、それがあまりに機械的になるとロボットのような生き方になってしまいますね。
 豊かな現代社会がかえって選択の幅を狭めているというのは皮肉なものです。しかし、成績も進路も年収も豊かさもすべて数字や可能性のパーセンテージで表されると、そのレールにのっかるしかなくなるね。破天荒な生き方は今では通用しないのだろうか。
 社会がどんどん狭くなるという指摘は鋭いですね。そうしてその中に納まることで人間のスケールは小さくなる。物語りも貧相な様相になる。
 今、ニュースを賑わせているIT企業の社長がいますね。彼は非常に無鉄砲で無礼だと批評されています。しかし、現代の小ぶりなお利巧な若者の中ではギラリと光る存在ではありますね。物語を描いているからではないでしょうか。
 

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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