創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   身体を介して   ルフィ

 能役者の体の動きは、人間のあるべき自然体を拒否している。それは、方を繰り返し行なうことによって、美の力が生まれてくると日本人が考えていたからだ。そして、現実的な肉体を超えたときに、体と精神が一致するのだ。だが、現代の社会にはこのうち「身体」について軽視しているという問題がある。
 その原因として、第一に知識の詰め込み教育が挙げられる。端的に言うならば、その覚える、と言う行為に対してのみ価値を見出し、アウトプットの仕方を知らない子が増えた、と言うことである。なぜか。それが、この身体の問題にかかわってくるのである。つまり、机上の論理を「知識」として頭の中に溜め込むだけで、身体を使って吐き出す「実践」が圧倒的に足りないのだ。私自身も、例えば日々英語の学習に励んでいるが、実際に外国人に道案内をした体験などは片手で数え上げられるほどしかない。何も語学だけとは限らない。ルネッサンス期の美術を世界史でいくら勉強したって、本物を見に行く機会はその勉強をする時間にとられてしまって全くない。と、このように一見矛盾した「学習」が世間には氾濫しているのだ。本当に身に付くものと言うのは、必ず身体を介していると言うことを、私たちは忘れてはいないだろうか。
 また、第二の原因として人が動かなくても何でも出来てしまう社会になった、と言うことが挙げられるだろう。インターネットが発達したことによって、家で買い物、仕事、勉強などと様々なことがディスプレイを通して出来るようになった。京極夏彦氏の著書「ルー=ガルー 忌避すべき狼」では近未来の日本が描かれている。それによると2030年ごろの世界は、皆が番号によって管理され、特に家から出ることもなく、また生徒を対象に月に何度か行なわれる「コミュニケーション研修」といった唯一外に出る際にも、「端末」と呼ばれる小型のモバイルを必ず持ち歩く。その「コミュニケーション研修」は半ば強制的に人と人とがフェイストゥフェイスで話し合うものであり、無論他人に心のうちを見せることもなくただ事務的に行なわれている。食品も機械で合成して無から作り出すので、人々は「生」の味を忘れてしまっている。・・・などと、人が身体を使わなくなったがために、様々なものが廃れている様子がその本には描かれていた。私たちは、身体を使うことによって様々な文化、事物を継承してきたと言うことが、まざまざと思い知らされた。
 確かに身体面と精神面とを分けて考える西洋の科学が、今の便利な暮らしを作り上げてきた。だが、今までずっと見てきたようにこの科学の発達と言うものがもたらす最終的な結果は恐ろしいものである。「物事は、脳によって定着、伝承されていくのではなく、身体と言う方を生み出すツールによって身に付けられていくのだ」このことを、私たちは肝に銘じておかなければ、この問題は解決されないだろう。

   講評   kira

 ルフィくん、こんにちは。実感のこもった迫力のある作品になりました。近未来のお話にぞっとしたからかもしれません。
 以前に「知識」と「知恵」と「情報」の違いといったテーマで考えた事がありましたね。そのときにも「からだ」の存在がクローズアップされていましたね。豊かな社会になり文化も科学も間違いなく発展してきましたが、問題は人材が貧相なことになっていくのかもしれません。昔のほうが大物がいたように思えるのは、やはりズバリ行動力の差ですよね。
 最近の親は子供達の教育には熱心ですが、お料理やお手伝いを教えたりしません。いっしょにキャッチボールする機会も減り、最近都会ではお受験用の体育の家庭教師がブームだとか。まさに、なんでも詰め込めです。
 そうしてその受け皿である社会がなんでもスイッチ一つの仕組みになったわけですから、「割れ鍋に閉じふた」(ちょっとちがうか?)たいそう悪いマッチングが成立したのは間違いないようです。
 「身体を使うことによって様々な文化、事物を継承してきた」という指摘は鋭いですね。フラッシュのように暗唱黙読する方法では、生き方の継承は無理だよね。昔の人は「文武両道」とうまいことを言いました。体も精神力も強い人間が必要ですね。

 「方」→「型」


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