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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   人生楽しく!!   しっぽ

 施肥が充分で栄養状態のいい茶の木には、花がほとんど咲かない。花は、言うまでもなく植物の繁殖器官、次の世代へ生命を受け継がせるための種子をつくる器官だ。茶は、もともと種子でふえる植物だが、現在、茶園で栽培されている茶の木のほとんどは挿し木もしくは取り木という方法で増やされている。このような方法でふやすようになった理由は、茶の品質を一定に保つためである。また、花は、植物の栄養を大量に消費するもので、花を咲くにまかせておくと、それだけ、葉にまわる栄養が減ってしまう。このような茶の木の成長は、普通に花を咲かせて育つ成熟成長に対して、栄養生長と呼ばれる。しかし、このような茶の木も、長い間肥料を吸収し続けて老化し、もはや吸収力をも失ってしまったとき、一斉に花を咲き揃え、一斉に枯れてしまう。これは、私たち人間にもあてはまることだ。私たちは、誰しもその人生の中で絶頂期を迎える。しかし、その時に全エネルギーを使い果たしてしまって、あとは余生を生きる、という状態になってしまうこともある。私は、このように一つの人生の中で生じる大きな落差に問題があると思う。
 その原因は第一に、人間の欲が人にさらに上を目指させることにある。私は、まさに今余生を送っているようなものである。一時期、何にもかもがうまくいっていたことがある。勉強もスポーツも趣味も友達も、とにかく全てにおいて成功していたし、満足していた。でも、実はちっとも満足していなかったのだ。私はさらに良い自分を求めていた。もっと完璧になりたくて、頑張って頑張って、今はもう力尽きてしまった(笑)。今は疲れているのでゆっくり休んでいる。人間の欲は、生きている限り生まれつづける。しかし、誰にでも限界はある。より良い自分になるためのはずが、結果的に自分を破滅させてしまうことにならないためにも、自分の限界を見据えることも時には必要である。
 また、第二の原因は、現代のあまりにも顕著すぎる階級社会にある。現代社会において、ごく一部の頭の良い者、権力のある者はどんな場面でも優遇される。逆に、その他大勢の者たちは平均的、あるいはそれ以下の待遇を受けるのだ。誰もが良い生活をしたいと望むし、それは絶対に叶わない夢というわけでもないので、皆一生懸命上に這い上がろうと頑張るのだ。今、定年退職した後の会社員たちの問題がしばしばささやかれている。今まで仕事しかしていなかったため、急に仕事から引き離されると何をしていいかわからなくなってしまうのだ。妻にべったりになったり、テレビ三昧、昼寝三昧の日々を送ったりしてしまう。誰からもちやほやされることだけが充実した人生とはいえない。幸せな人生は、他者に定義づけられた階級の中に存在するものではなく、自分で見つけるものである。
 確かに、私たちがベストを尽くせるのは若いうちだけである。年をとると思うように行動できないし、力を出しきらないで失敗すると、過去を悔いてしまうかもしれない。しかし、お茶の木のように、一つのことに全精力を注いで、あとは力尽きてしまう、という人生も振り返ってみれば空しいものだ。私たちが今目指すべきは、栄養生長ではなく成熟成長である。もしかしたら、私たちの本当の幸せは、私たちが目指してるものとはもっと違うところにあるのかもしれない。目標に向かって一直線、というのも悪くはないが、その道のりに散らばる小さな幸せにも目を向けていれば、きっと人生の絶頂が過ぎることはないだろう。

   講評   nane

 冒頭の要約はうまい。ただし、この第一段落は、要約でなく状況実例にしてもいいよ。その方が書き出しの工夫などができておもしろい。
 「一つの人生の中で生じる落差」を問題にしたのはユニークなところ。しかし、この形だと問題の焦点がやや漠然としているので、あとの展開がしにくいかもしれない。問題提起は、自分の問題というよりも、自分も含めた現代日本の問題というふうに考えていくといい。例えば、茶の木のようにクローン化された栽培は、多様性に欠けてもろい。枯れ死する直前に花を咲かせるのは、生命の持つ多様性への希求がいかに強いかを示している、とか何とか。
 原因の書き方は、できれば、歴史的・社会的原因のように書いていこう。「人間というのはもともと……」という形で書くと、袋小路になることがある。
 結びの、「私たちが目指すものは栄養成長ではなく成熟成長である」は、名言になりそう。(笑)茶の栽培の効率性を追求した結果が栄養成長という手法だった。人間の教育でも、効率性を追求すると栄養成長的な発想が出てくるかもしれないね。結びはよく考えてまとめた。

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