国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   作曲に集中しているとき   えにほ

 武満徹の音楽にいつ頃から興味を持ったのかよく思い出せない。時代物のドラマで闇夜の前兆を知らせる風の音だとか、戦国大名の戦闘の場面に邦楽の楽器を巧みに使って状況効果満点の音楽を作る作曲家で有名である。武満徹はてっきり邦楽専門の方だと思っていたが、戦時中にあるシャンソンを聴いて衝撃を受け,殆ど独学で音楽家になったらしい。ピアノ曲,弦楽の組曲を作ったり、彼の基盤は西洋音楽である.だが、次第に西洋音楽の「一次元的時間軸上の集中的指向性」の音から離れ、60年代からは東洋音楽的な「多層的時間軸上の汎的志向性」の音を求める様になり、尺八や琴などの邦楽楽器も彼の作曲に取り入れるようになったらしい。そんな彼の音作りに対する姿勢は途轍も無く謙虚である。 彼は作曲、音作りの過程で、「戸惑いや 焦りの後の無力間に挫けそうになってしまう」と告白する一方,「深刻な絶望とは異質な,むしろ居心地良さと温もりを感じられる」と付け加えている。くじけそうになる反面、とても救われると云う事らしい。作曲とは音と云う自分より大きな自然との協同作業で,音を弄るだけに終わり,「紙の上だけの構築物になり空気の通わないものになる」ものは彼の目指す音作りではない。それ故,「作曲家は音に放漫であってはならい」と云うのが彼の信念である。 また「自然から学ぶことはあまりにも多い」と云う。「音が語りかけてくる毀れやすい言葉の表情」を聴き逃す事無く細かく感じ取れる感受性を身につけたいと云うのが、彼の音ずくりの根本的な姿勢であった。 武満徹の「自然」に対する謙虚な姿勢は、自然から教えられ、癒され、神秘的なものにふれ,彼の芸術活動の重要な基盤になっていたようだ。グローバル化が進む現在、機能主義と迅速で機会的に構築されるものばかりに取り囲まる毎日。人為的な物に囲まれ,また人為的な物の再生産に明け暮れる現代人である。そんな私達に、謙虚に自然との関係を生活に取り入れられる時,大きな創造の可能性が見つけられる、っと武満徹の世界観は教えてくれる。

 武満澈の音楽の世界は、お能の世界、又は、近代以前の、中世またそれ以前の自然界と人間の住む現実が混沌としていた時の感受性を取り戻す事ではないかと想像する。そんな音の世界を今の技術で録音したり、演奏し、公演することでもある。どの文化も現代の感覚にすると、自然界と人間界が混沌としたかなり原始的な時代があったと思う。何でも感でも合理的に済まされる現代、武満徹の音楽や、お能の世界、またはシェークスピアのハムレットの世界にしても、現代人に普段とは違った角度から人間の存在を考える機会を与えてくれるのかもしれない。効率,機能主義の言葉と記号だけにがんじがらめになりがちな忙しい現代人である。それ故、柔らかい角のないまた違った次元と空間の言葉に触れる事によって、新鮮な創造力の可能性に気ずきかされ、余裕を取り戻す事ができるのだろう。
 音楽作りでは天才的な武満徹は、かえって音の弄り方のテクニックに関してとやかく言及しようとしない。音を弄りすぎて,その音の起源までも取り消してしまうと、かえってつまらない音楽を作ってしまうはめになるとも指摘している。これも,何かと云うと技術、技能、資格が先攻する現代社会に於いて大切な教訓だと思う。そんな技術や資格を持った人が意味ある創造力に繋がってやっと実りがあるものになる訳である。技術、資格以外に何か築き上げていく原動力になるプラスアルファがいる。これは簡単にマニュワル的に習える物でも教えられる物でもないようである。武満徹の自然に対する態度の謙虚さがあって得られるものなのだろう。

 武満徹の音作りの世界は、新しいもの作りに挑戦する上での大切な姿勢を教えてくれる。簡単に言うと、、「カメラマンはレンズのほこりを払う前に目のほこりを払わねばならない」と云う事か。彼の音楽家としての基礎の知識、技術は云うまでもなく彼を音楽家にした必要条件ではある。しかし、自分以外の大きき自然の理に任せる彼の音作りの哲学と信念が、彼を稀で天才的な存在にした重要な要素だろう。

   講評   unagi

 <第1段落>解説と要約を兼ねた段落として仕上げています。吉田さんご自身、著者のファンであるとのことで、普段にも増して格別な熱意のこもった解説となっていますね。是非の主題:「謙虚に・・・見つけられる」
 <第2段落>理由①「現代人に余裕を」:現代社会に潜む精神的病理の予防、治癒の効果を挙げています。「普段とは違った・・・機会」「新鮮な創造力の可能性」が重要なポイントですね。
 <第3段落>理由②「技術だけでは到達しえないもの」:原動力になるプラスアルファを分かりやすく説き、「天才」についての持論を展開しています。また、現代人に警鐘を鳴らす部分も唸らせます。
 <第4段落>「彼の音楽家としての・・・。」で一旦「反対意見への理解」を示した後で、再度自分の意見を締めくくりとしています。名言の引用も適切です。
音ずくり→音づくり 機会的→機械的 何でも感でも→何でもかんでも 気ずかされ→気づかされ 資格が先攻する→資格が先行する
 

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