創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

小学1・2年生   小学3・4年生   小学5・6年生   中学1・2・3年生   高校1・2・3年生

   身近な話し合い   シュシュ

「あそこの家はいつも犬がほえてるわねぇ。」
「ほんとにうるさいわよねぇ。」
 近所のおばさんという人種は、昔から噂話が好きと相場が決まっている。あの家は犬がうるさい、向こうの家はピアノが響く、などなど、付近の住民についてのネタはつきることがない。ときどきは、噂話だけで終わらずに直接言うことさえもあった。
「お宅のネコがいつもうちの庭に入ってくるのよねぇ。」
「あら、お宅の木の落ち葉もどうにかしてほしいわ。」
 嫌味まじりの口調で、彼女たちは主張しあう。しかし少し険悪なムードになってくると、それを調和する人がでてくるのだった。
「まぁまぁ、お二人さん。もっとおだやかにいきましょうや。」
 こんな言葉とともに、その場をまるくおさめる人がいたものだ。
 しかし現代では、このような光景を見ることが珍しくなった。逆に、近所間での問題を、裁判にもちこむということが身近になってきたのだ。そんなトラブルを扱った「訴えてやる!」なんて言葉をキャッチフレーズにしたテレビ番組も人気である。しかし私は、裁判に頼るのでなく、日本人が昔からしてきたように、個人の人間関係のあいだで問題を解決するべきだと思う。
 そのための方法は第一に、余裕のある人間関係を築いてゆくように心がけることだ。何か問題がおきても「別に平気だよ」と言える、いわば笑って許せるような人間関係である。近所の人に何か言いたいことがあるときは、決して怒って言うのでなく、笑顔でもっと謙虚に言えば良いのだ。最近は、電車の中でウォークマンによって音楽を聴いている人が多い。私の知り合いが、電車の中でそのような人の一人の隣に座ったときのことだ。隣の人の耳からは「シャカシャカ…」ととても大きな音が洩れていて、うるさかったそうだ。そこで彼女は、「ちょっと音が大きいから、もう少し小さくしてくれる?ごめんなさいね。」と笑顔で注意をした。音楽を聴いていた人は、「すみません。」と快く音を小さくしてくれたらしい。もしも彼女が、「音かなりうるさいんだけど。電車の中なんだから消しなさい。」と怒りをあらわにして言ったとしたら、向こうもムッとして、もしかしたら逆ギレして喧嘩になったかもしれない。一つ注意をするときにも、言い方しだいで結果は大きく変わってくるものだ。
 第二の方法は、地域の人同士のつながりをもっと強くすることだ。江戸時代の有名な制度の一つに、「五人組」がある。この制度は、当時の為政者が民衆を管理するためにつくったものであったが、これは民衆同士のつながりをとても強くすることとなった。他にも、「講」という小人数で集まりをつくって助け合うという仕組みもあった。現代だったらば、すぐにプライバシーの侵害などの問題となってしまうだろうが。確かに、昔は地域の人同士助け合わなければ生きていけないような厳しい時代ではあったが、現代でもこの助け合いが必要となる場合は残っているのだ。阪神淡路大震災が起こった頃、祭りをよくしていて近所の繋がりがあった地域よりも、近所の繋がりがほとんどなかった所の方が被害が大きくなったそうだ。火事が起きたときに、どこかの家が燃えていても、知り合いの家ではないので、「消しに中に入っていいのだろうか」などと躊躇してしまって、どんどん火がまわってしまったらしい。やはり災害時などの文明の機器が一気に役にたたなくなるときには、人と人との繋がりから生まれてくる力が必要となるのだと思う。
 確かに訴訟制度とは、白黒はっきりつくので有効な手段の一つである。しかし私たちは、相互の理解を念頭におき、自分たちの話し合いによって問題を解決するよう心がけるべきだ。今までたくさんのアメリカの真似をしてきたが、問題解決のための方法までをも輸入する必要はないと思う。ここは、義理人情なんて言葉が昔から伝わっている日本である。そんなこの国に合うのは、人と人とが直接に考えをぶつけあえる身近な話し合いだと私は思う。住み良い町とは、お互いが相手を尊重しながら意見を言える町であり、弁護士を気軽に安く雇える町ではない。

   講評   nane

 柔らかい書き出しがうまい。近所のおばさんの会話の感じがよく出ているね。先生もずっと前見たけど、おばさんどうしが道路で1時間以上も立ち話をしていた。行きに見て、用事を済ませて帰ってきたとき見たら、同じ場所で話していた。(笑)すごい。
 第一の方法の「言い方次第で」というのは、意外に大事なことだね。同じ注意をするのでも、相手が受け入れやすいような調子で言うと、相手の反応も違ってくる。このあたりは年季の必要なところかもしれない。
 歴史実例もよく書けた。こういう実例は教科書を見ているだけではなかなか身に付かない。やはり歴史に関する読み物を読んでおく必要がある。大学入試の参考書の中にも、歴史上の出来事の背景を書いたものがある。そういう参考書を読書がわりに読んでおくといいよ。
 「住み良い街とは……」は、名言になっている。弁護士や警察の多い街というのは、住みにくそうだものね。

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