創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   私は二十年ほどまえから(感)   えにほ

 人間は自らを飼育し,家畜化する。この聞き慣れない概念「自己家畜化」とはどういう意味なのか。当然ながら、人間は生活の土台と成る社会システムを自ら作りながら,それに適応し毎日の生活を営む。これまた当然であるが、人はこの世に生まれて、物質、空間、言語、心理などの文化的な枠組みを習う。そして、社会の枠組みに頼り、自ら生活の価値を見いだそうとする。食物生産のシステムを例にとると、生まれて社会に参加する事によってやっと自分の食べる物を確保する事ができる訳である。 社会の多くのシステムについても食料生産のシステムと同様、社会から強制されている事はあまり気にかけず、適応するのが先決で、意識しないのが普通である。これが「自己家畜化」の大きな特徴のようである。「人間と云う物のあり方が,自ら飼育していくという意味」であり,自主的な意味も多く含んでいる.「家畜化」と云う言葉自体の響きは否定的だが、「自己家畜化」には建設的なものとマイナスなものの両面が共存しているようである。ここではあえて建設的な物に光をあてることにする。例えば、現代科学と技術で人間が新しく展開していくように、また人間は新しい環境によって新しく自己飼育、自己馴化していく。つまり、人間の自己家畜化は社会の発展と個人の成長と展開に無くてはならない社会的なプロセスであると言えるだろう。

 どの時代にも社会が直面している問題がある。どのように問題を定義し解決案をみだせるかは同世代の人達の会話、交渉、計画の内容と行動力で決まる。特に重要なのは与えられた機会と環境、そして関わった人達の提供する技と協力のかみ合いの結果である。人間は消極的に「家畜」されているばかりではない。NHKのプロジェクトXの番組は、日本が経済発展一途に走っていた時代の屈折と成功の実話を沢山提供する。最近、日本が昭和41年に世界最大、342メートルの長さのオイルタンカー「出光丸」の造船に成功した話を観た。このプロジェクトに関わった人々は異口同音に誰もが「やりがいがあった」と言う。当時を思い出す彼らの顔には大きな笑顔が眩しいほど輝いている。「出光丸」に関わったのがなんと1千社。36万人が結集した大プロジェクトであった。日本的チームワークの文化を「自己家畜化」した例でもある。日本の造船業を世界でも指折りの地位にした成果であった。
 個人の成長と展開も同じ事が言える。問題と突き当たり、それに挑戦した時の副産物としてできるものである。盲目のヘレン.ケラーの話は有名だが、彼女の時代は目が見えないと云う事だけで差別を受け、社会的にはお荷物的な取り扱いしかされなかった。盲目と云うだけて、社会的に貢献できる普通の人間としてはチャンスを与えられなかった時代であった。一般社会の身体精神障害者の人権に対する理解はヘレン.ケラーの時代からじょじょに増えてきているといえる。しかし、まだまだ社会一般の実質的な受け入れ態勢には問題点が多すぎるのが現実である。身体精神障害者は五体満足な一般の人よりも社会から「家畜化」を強いられ易い状況にあったと言えるだろう。ヘレン.ケラーの場合はただ「家畜化」で放置されず、言葉を習い「自己家畜化」に巧く繋がったと言えるのかもしれない。彼女はサリバン先生との葛藤を重ね,外界との伝達手段にたどり着き、先生との信頼関係を作っていく事ができた。そのヘレン.ケラーの葛藤の過程が後に、社会の盲目に対する偏見を大きく変えることになったのである。

 確かに、社会が複雑になり発達すればするほど、人間の自由は縛られストレスの多い生活を送る人も多くなるのも事実である。「自己家畜化」でバランスを失い,自分を見失っている人の起こす事件は枚挙にいとまが無い。しかし、「理想の到達するための手段はまた,理想への到達阻む障害でもある」と言う名言があるように、人間と云う存在の矛盾を巧く言い表している様に思う。つまり、自己家畜化は社会生活を営む上で必然な物でも有り,人の成長、社会の発展に必要な壁でもあると云う事である。

   講評   unagi

 今回は進級テストでした。お疲れ様です。
 <字数>1672字で余裕の目標達成です。
 <構成><題材>自己家畜化肯定の理由を複数挙げることができました。いずれも的を射た内容です。①「日本的チームワークの文化を自己家畜化した成果」②「個人の成長と社会貢献」:①は『プロジェクトX』を観た体験をもとに書かれています。自己家畜化とその利点を説く上で、「かみ合いの結果」という文言が効いています。②ヘレン・ケラーという個人を例に挙げ、丁寧に根拠を解説しています。特に「家畜化」と「自己家畜化」の相違をヘレン・ケラーを題材にして説明するところに手腕が伺えます。
 <表現>自己家畜化のはらむ問題点も踏まえて、名言「理想に到達するための・・・」を引用しています。
 <主題>「反対意見への理解」が単なる牽制に終わらず、「人間と云う存在の矛盾」まで考察を深めています。
 

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