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　　　『以心伝心』　　　えうや

　日本人は「見る」ということに重要な意味を与える。日本の社交は「見る」ことで成立する。恋人同士が西洋人のように「愛しています」など、決して言わない。満月を仰ぎ見て「いい月ですね」というだけで意志は十分通じる。西洋のように、しゃべることが社交の基本になっているところでは、話がとぎれると気まずい思いをしなければならない。日本人は、黙って何かを見ることでも会話は進行する。僕は日本人がそうであるように、何も言わなくても心が通じることは良いと思う。
　何も言わないで心が通じるのが良いと思う理由の一つに、思いやり気持ちが意味を無くしてしまうからだ。何かに失敗したときや、気分が悪いときにいろいろ話し掛けられると、自分の事を考えて言ってくれているとわかっていても、嫌な気分になる。僕も同じような体験をした。小学校二年生のときに授業で、グループで調べ学習した。それで調べた物をクラスで発表することになっていた。僕のグループは、トビウオについて調べた。発表前の練習では良かったが、発表のときになって、友達が失敗をしてしまった。大切な資料と発表の台本をなくしてしまったのだ。それで僕たちのグループは発表ができなくなり、結局、次の授業で発表することになった。なくしてしまった子はものすごくショックを受けたらしく、机で泣いてしまった。みんなで慰めていたら、今度は「ほっといてくれ」と怒り始めた。僕たちも、しつこく言いすぎたなと思ったが、僕たちも少し嫌な気分になった。
　二つ目の理由は、くどくど言われるとやろうと思っていても嫌になるからだ。宿題をやろうと思っていたら親に「宿題やりなさいよ〜、宿題やりなさいよ〜」と言われると、とたんにやる気が無くなる。学校で掃除を始めようとしたら先生に「掃除しっかりやれよ〜、さぼるなよ〜」と言われると、見えていたゴミが見えなくなる。僕は、部活のときにフリーパスの練習があった。決められた範囲の中で、好きな相手にパスを出す練習だ。たいてい、目が合ったらパスを出すのだが、僕の斜め後ろでパスをもらおうとした子がいた。しかし、相手は僕のことを呼んでいるが、この練習は目が合ったらパスを出す練習で、そうでなくても見えないところから何回も何回も呼ばれていては、パスを出す気もなくなる。僕は、目の合ったほかの子にパスを出すと、その子が「何で呼んでいるのにパスを出さないんだ」と怒ってきた。僕はいろいろ説明しているが、相手は納得せず、結局は先生が「目が合ったらパスを出す練習だ。」と言って、しぶしぶ納得していた。
　確かに、声に出して説明することもいいところはある。しかし、『以心伝心』と言う言葉もある。日本人独特のコミュニケーションのとり方として、これからも大切にしていきたい。

　　　講評　　　tama

【複数の理由一・二】　言葉にしなくても通じ合うという、日本的なコミュニケーションがよいと思う理由を考えることができました。言葉はなくても見守ること、相手の気持ちを考えて、必要以上にものを言わないことも、思いやりだと言えるでしょう。

【体験実例】　そっとしておいてほしいとき、あれこれ言われるのは本当に嫌なものですね。喋りすぎることによって傷つけたり、逆に傷つけられたりすることもあります。そして言わなくてもわかるようなことを、いちいち言葉にしなければ伝わらないというのも、しらけますね。(^_^;)

【ユーモア表現・名言の引用】　「見えていたゴミが見えなくなる」という表現がいいですね。わかるわかる。（笑）今回は題名の「以心伝心」という言葉を使って書くことができました。

【是非の主題・反対意見への理解】　確かに何も言わなければ、相手に伝えることはできませんが、健くんも日本人らしいコミュニケーションの方法や、思いやりを大切にするべきだということですね。よい意見が書けました。