創造と発表の新しい学力
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
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真の国際協力とは カノン
『青い空に白い雲、果てしない草原に羊たち、夜は満点の星空で、凍えながらも朝日を待てば、自然の神秘で満たされた、光が大地を包み込む』
どの風景を写真に収めても絵葉書になるような美しい景色。そうした平原のど真ん中に、高校二年生の私がいた。
私が中国・内モンゴル自治区を訪れたのは去年の夏だった。北京に短期留学していた時、講義の合間を縫って内モンゴルまで足を伸ばしたのだったが、ここで私は生涯忘れられない言葉を耳にした。
草原で乗馬体験をした時のこと。馬の飼い主であった青年と共に馬を走らせ、私たちは小さな丘を目指した。丘のてっぺんにたどり着くと彼は指を指しながらこう言った。
『この方角に日本がある。日本はどんな所なんだろう。』
遠くの方を眺める目は好奇心で満ち溢れていたが、次の瞬間彼はこんな言葉を口にした。
『でも、ここが一番暮らしやすいだろうな。』と。
確かに内モンゴルは自然豊かな地域だった。しかし言葉を変えれば、電気・水道の設備も整っていない地ー自然しかない地ーである。日本で何不自由なく暮らしている私には、そこが最も暮らしやすい地域だとは到底思えなかった。しかし先日、その言葉の意味をもう一度考えさせられる文章に出会った。
それは現代文の教科書に載っていた『この村が世界で一番』(内山節・著)という評論文だ。その文章には長野の山奥に住むおばあさんが、まさに内モンゴルの青年と同じように『自分の住む村が世界で一番良い所だ』と語った話が書かれていた。
しかし、そうするとここに一つの不可解な点が浮かび上がってくる。それは私たちが貧しいと感じている地域であっても、そこに住む人々は、必ずしも自分たちの生活に不満を感じているわけではないということである。『貧しい地域へは率先して援助を行う』我が国が当然正しいと信じ、推進してきた行いにクエスチョンマークが打たれた瞬間だった。では真の国際協力とは一体何だろうか。
様々な意味を持つ「国際協力」という言葉を定義づけることは難しい。しかし一つの考え方としては、「相互的な国際理解の上に始めて成り立つ支援」だと私は思う。実際、日本が良かれと思って行った支援でも、支援を受ける側にしてみれば迷惑行為でしかなかったという例が数多く報告されている。例えば二年程前、インドネシア・スマトラ島に住む人々が、日本のODAが建設したダムのせいで、生態系が崩れ生活が出来なくなってしまったとして訴訟を起こしている。人々の生活向上を願って作られたダムだが、残念にもその地域にダムは必要とされていなかったのである。そのような結果に終わってしまった原因は、「相手にとって何が大切か見極める」という最も大切点が忘れられていた点にある。
先進国では次々と最先端の技術が生まれ、そして私たちもそれらを必要としている。しかし世の中を見渡せば、私たちの持っている環境基準というものは、ほんの一部でしか通用しない。自分たちの生活が当たり前と思わないこと。そしてそれぞれの地域が違った歴史的背景を持ち、違った文化を持っていると認め、それを受け入れること。そこから国際理解が始まり、真の国際協力につながるのではないだろうか。
内モンゴルの青年は、自分の生まれ育った地域が最も暮らしやすいと語った。世界中の人々が彼のように語ることができたらどんなに良いだろう。
でも世界はきっと・・・必ず明るくなる。そう願わない人は誰一人としていないのだから。
講評 nane
情景の書き出しがいいね。そういう自然というのは、日本ではまず見られない。
途上国と言っても、先進国の消費経済に遭遇した途上国と、まだ遭遇していない途上国では、豊かさに対する尺度が違う。消費経済に組み込まれると、人間の本当の豊かさよりも、商品の豊かさに目を奪われてしまうからね。
体験実例から、「真の国際協力とは」と続けたところは、問題意識が高い。
日本の経済援助の例は具体的。こういう問題はいつでもつきまとうけど、それを緩和するのは、やはり経済援助がもっとオープンな形で行われることだろうね。
結びに内モンゴルの青年の話にまた戻ったのはよかったね。書き出しの情景に戻ってまとめてもいい。
「でも世界はきっと・・・必ず明るくなる。そう願わない人は誰一人としていないのだから。」は、やや感覚的で、全体の流れからすると蛇足気味。その前の文まででまとめてもいいと思うけど。
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