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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   ある朝、私は一冊の   えにほ

ヘッセは彼の育った家の周りの自然を見回し,少年時代に感じた回りの自然との関係を振り返る。お父さんが植えたモミの木立。今はがっしり高くそびえている。庭の隅にある水槽は、少年時代には水を出しっぱなしにして遊んだ。水車やダムを構築し,スケールの大きな土木工事をするかのごとく無邪気に遊んだ所。しかし,その水槽は今はもう古く,「水道の栓とともにひっそり」とそこにあるだけである。山の上まで散歩にあがり、町を見下ろそうと決めていた彼であった。しかし,『散歩』などと考える事自体,少年時代と違い、もうこの育った土地でやる事は無いと言う事に彼を気づかせる。昔は、無邪気に回りの環境とじゃれ合い,蝶の採集、トカゲ採り、盗賊ごっこと飛び回っていたのだった。少年の時の無邪気に遊んだその喜びを思い出すごとに、彼は、又同時に『悲しい味』を感じるのであった.彼には新しい環境,新しく挑むものがいる。こんな片田舎でとどまっている必要はない、とはっきり自覚するのである。

子供時代に自然と戯れ,無邪気に遊ぶことは皆の人格の基礎を作ってくれる大変貴重な期間である。私自身の幼少期も、家から離れ,友達と木に登ったり,昆虫採集に行ってなにも採れなかった時には、周りにあるイチゴ畑のイチゴを網一杯に詰めたり,木の上に砦を造ったり,いろいろ思い出せる。今振り返ると、複雑な人間社会に揉まれる前の両親からは慣れた貴重な楽しみの時間と空間だったのだと思う。ヘッセもとても彩りの濃い少年時代を経験したようだ。
しかし、少年時代を終え青年になると、住み慣れた所を超え,大きな社会へと心が動く。自分をもっと違う環境に据えて,成長したいと云う若さの欲求の表われであろう。自分の慣れ住んだ、少年時代の思い出が一杯の町が,色褪せて見えるのも,そんな若者の自立、成長への欲求からくるものだと思う。これは、ごく自然な成長の過程と言える。新しい経験、可能性を思うと,いても立ってもいられない。多くの若者はそんな感情を経験し自立の旅へと親元を離れる。ヘッセの育った時代は、経済的な自立の路線が簡単に有るわけでも無かった。その点、彼の成長する心の動きの描写は、とても貴重な感じがする。物と情報の氾濫した現在でも若者は同じような成長の過程を踏まえるが,ヘッセの文章にあるような純粋な形で表現されるのは稀である。

果たして,私達は大人に成って,幼少期に味わった無邪気な喜びと感動,遊ぶものとの一体感は失うのだろうか? その問いを考える時、棟方志功と云う版画家を思い出す。 昔NHKで彼のスタジオで彫刻する風景を放送する事があったが、
彼の版画を彫る情景や下書きに画を書いている時の彼は、まるっきり無邪気な子供だった。厚い眼鏡をかけていたが、それでもまだ見えないようで,版画板や下書きの和紙に顔をそわせる様に作業する。その時、棟方志功は60歳代である。東北の訛りで何を言っているのか良く分からない。真剣に木刀を使っているかと思うと、無邪気な笑顔と喜びの表現で彼の顔は一杯になる。 そんな棟方志功を思うと、『遊びの心』の大切さを感じる。そして、人間の創造的な原動力は、ヘッセの少年時代に経験した、無邪気な行動と喜びだとも感じる。『人が旅行するのは,到着するためでなく旅行するためである.』と云う名言があるように、無邪気な遊び心は大切な旅の友だと言えるだろう。

   講評   unagi

<第1段落>「悲しい味」に二重かぎを使っているのが効果的ですね。要約からも青年のせつなさ、静かな決意が伝わってきます。
 <第2段落>意見①「無邪気な時代は必要」:子供時代の遊びを体験実例に挙げています。「複雑な人間社会に・・・。」親と密着するのではなく、親とは離れた子供だけの世界であったことがポイントですね。

 <第3段落>意見②「自然な成長過程」:現代の若者について言及、比較しているところが素晴らしいと思います。「純粋な形で表現される・・・。」そのとおりであると思います。純粋で素朴な表現ほど心を打つものはないかもしれません。
 <第4段落>「人間の創造的な原動力は・・・。」ここでもう一つ、棟方志功の例を挙げ主題に説得力をもたせています。「無邪気な遊び心は大切な旅の友」名言と絡めて印象に残る結論を掲げているところに膝を打ちました。
 訂正箇所、確認しました。お疲れさまでした。
 

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