創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   このところ、ドスとエフスキー   えにほ

『古典』は時代が変わっても,人間の持つ普遍的な問題に改めて新しく光りをあたえてくれる。現代社会の風俗から少し離れた素材が、かえってどの時代にも共通する人間の抱える問題やテーマをうまく浮き彫りにしてくれる訳だ。新しくはないが,読者にすがすがしさを与える。人間が人間である以上、いろんな矛盾の感情に悩まされ経験する。「破滅を夢みたり、聖なる秩序に情熱をかたむけたりする。」人間である以上、 そんな矛盾のテーマを永久に抱える。そして、どの時代にもアッとさせる古典の不思議な役目がある。

例えば、明治人の感覚からは程遠くなった平成の社会でも、夏目漱石研究は周期的にマスコミでも取り上げられている。夏目漱石の「こころ」は、友人の純粋で温和かつ一途な性格を知りながら、友人を欺いてでも自分の好きな女性を勝ち取ろうと嫉妬で躍起になった「先生」の告白の遺書が小説の中心になっている。冷静な態度で恋に陥っている友人の弱味につけこんで,苦しませる先生の裏心。現代社会から比べるとかなり温和な環境だが、『先生』の友人の親友に成りすまし、恋に悩む友人に残酷かつ冷徹な言葉を与える姿勢。それも自分の嫉妬心を全く隠した行動は、いつの時代に読んでもヒヤッとする。 先生に憧れる「私」との関係、それから先生の年相応の品格、そんな表面的なものと対比して若い時の「先生」の冷たい下心とその成功への裏話が淡々と語られている。「先生」だけの知っている内部の秘密が暴露はショックである。

一方、社会が変われば,売れる本も変わる。最近日本で売れている本、「がんばれ、生協の白石さん!」は大変面白い本である。白石さんと云う或る東京の公立大学キャンパス内の生協の職員が、店内にある学生向きの目安箱の役目をする「ひとことカード」を通して,学生との面白い「会話」を展開している。ウエブ上でそれが紹介したのがきっかけで大きく日本中の話題となり、その「会話」を本にしたら良く売れたと云う本である。白石さんは、腰が低く、お客様思いの生協のスタッフと云う姿勢あくまでも貫く中、おもしろがった学生不謹慎なコメントにも真面目かつ丁寧に答え続けている。次から次へと学生の書く「ひとことカード」とそれに答える白石さんのコメントを読むうちに、白石さんの正規の役柄に徹したプロ態度を枠組みに、暖かい人柄が伺えてくる。ポスト消費社会と言われる現在社会では、社会が物質面かつ情報面が豊富なだけ,一人ひとりの回りとの関係は表面的で疎外される傾向にある。そんな傾向だけに、この「ひとことカード」のやり取りが多くの人を引きつけ,大きな救心力となっている。皆が微笑ましい生活共同体に参加したように思わせてくれるからだろう。

古典も、最近のベストセラーの流行の本にしても、一人ひとりの見つけた世界と回りの世界との繋がりを作り、生活する意味、生きる意味を広げてくれる。洋の東西を問わず,機能主義の優先の実社会故、ハウツー物が良く売れる。ハウツー物も使いようによっては便利であるが,それ以上の意味合いは作ってくれない。「読書は人間を豊かにし、討議は人間を役立つ様にし、文章を書く事は人間を性格にする」と格言があるように、自分の心に響く物を古典やベストセラーで巡り会った時は自分を豊かにする機会を得た時であると思う。

   講評   unagi

 <第1段落>的確な要約です。
 <第2段落>意見①「いつの世も変わらぬ心の闇」:夏目漱石の『こころ』を例に挙げ、変わることの無い人間の心の裏側を説く段落です。「現代社会から比べるとかなり温和な環境」という指摘が効果的であると思います。神経症的で世知辛い現代とは言われますが、人間の恐ろしさは不変であることを強調するのに成功しています。
 
 <第3段落>意見②「時代が求めるもの」:『生協の白石さん』を例に、現代の売れ筋商品の長所を説明しています。「正規の役柄に徹したプロ態度」「笑ましい生活共同体に参加」という文言が時代の求めるものをピタリ言い当てていると思われます。
 <第4段落>総合化の主題「自分の心に響く物を・・・。」流通するモノにではなく、読者個人の精神状態に着目した総合化です。手際よくまとめています。ハウツー本を比較に挙げているところが更に説得力を増していますね。名言の引用も適切です。
               

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