創造と発表の新しい学力
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
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匿名性 シュシュ
個人情報についての保護が、最近よく問題になっている。ネット上では他人の名前や住所などが売買され、どこかの名簿が流出したというニュースもよく聞く。社会の中で個人情報の価値が大きくなり、一般の人までもがそれについて意識する現在の状況は、何年か前ではなかなか想像がつかないものであろう。人々が自分の情報が流出することをこんなにも恐れ、社会の中で匿名性を持つことを認める傾向があるという問題が、現在の社会にはある。
その第一に考えられる原因は、日本人のプライバシー意識が進歩したという歴史的な背景にある。日本人の庶民は、昔から村単位や五人組などの何人かの人間同士で、助け合って生きてきた。江戸時代には銭湯や長屋などもあった。しかし戦後になって、アメリカの文化が大量に日本に輸入された。アメリカでは、家族同士でも部屋に入るときは必ずノックをするなど、プライバシーの価値が日本よりも重んじられている。精神的な面だけでなく物理的にも、家の作りが西洋化し横に滑らせて開ける扉から前後に開閉するドアが主流になりだすという変化があった。これを感じるのは私だけかもしれないが、横にスライドするドアよりも、今主流のドアの方が、パタンと開閉するためか、内側と外側をくっきりと境界線づけるように思える。様々な変化を経て、日本人は以前よりも、プライバシーを尊重するようになったのだろう。
第二の原因としては、今社会の中で、監視されている場所が増えていることが挙げられる。多発する犯罪の防止という目的で、到る所に防犯カメラが設置され、小学生までもがGPSで居場所がすぐに察知できる携帯電話を持つ時代である。私の住むマンションにあるエレベーターにも、24時間の監視システムがついている。毎朝エレベーターに乗って、「このエレベーターは24時間監視されています」という表示のシールが目に入ると、他に誰も乗っていないのに人の目の存在だけを感じ、私はほんの少しだけSFの世界に触れたような、非常に奇妙な気持ちになる。
確かに、自分の情報がむやみやたらに世間にさらされるのは、気持ちの悪いものだ。しかし、世間から隠れているような感覚を認める傾向がある現在の社会は問題である。皆が自己をさらすことを恐れてばかりいては、誠実なコミュニケーションがとれず、そのうちに社会は機能しなくなる。匿名性とは、個人が自由に使って良い便利なものではなく、自分の言動に責任を持てない人が使うあまりフェアでないものだ。
講評 nane
サングラスのような話では、書き出しを工夫してもいいよ。
全体に密度の濃い文章。素材語彙の点数で66.9点というのはすごいね。
ドアの閉め方に関する考察はユニーク。なるほど、バタン、ガチャリという閉め方は、昔の日本文化にはなかったものね。
エレベータの24時間監視の話も面白い。都会生活はだんだんSFっぽくなってきたものね。そのうち、マトリクスのような場面に遭遇するようなこともありそう。(笑)
「匿名性とは、個人が自由に使って良い便利なものではなく、自分の言動に責任を持てない人が使うあまりフェアでないものだ。」は、いい表現。特に、「匿名性」などとあっさり書くところが語彙力のあるところだね。
森リンの点数は、強力語彙が少なかったために、バランスの減点が多く低くなってしまった。しかし、内容文章ともに優れた内容なので、このままでOK。もし直すとすれば、接続語を多めにしていくといいよ。
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