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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   優秀な人、そうでない人   ルフィ

 「悪い状態からいい状態へ」といった「進歩」の考え方が、今日までの欧州社会の発展、そしてダーウィンの「進化論」を支えてきた。すなわち、自然に任せておけば「適者生存」「生存競争」の原理に任せて不優秀な物は淘汰されていく、というわけだ。しかし、私は、これが進んでいくと、選ばれた物のみが優遇され、あぶれた人たちが不自由な思いをするようになるのではないかと予測する。
 それに対する対策として、一つに、多様性を認めていく、というものが挙げられる。つまり、「優秀」とされる一種の固体群のみをそれとするのではなく、全てを受け入れていこう、というわけだ。具体例を挙げるならば、そのことは、部活動、特に運動部などでよく実感できると思う。私は、先日高校の男子バスケットボー部を引退した。幸いなことに、私は毎試合スタートメンバーで出してもらえ、たくさん試合に出場することができた。しかし、私と一緒に引退した12名の3年生の中には、無論ほとんど試合に出られなかった人もいる。しかし、この中の誰か一人が欠けるだけで、このチームは存在しないのだ。特に、接戦で勝利をもぎ取った引退試合の1つ前のゲームでは、ベンチからの声援を受ける中で、そのことを痛感した。たとえコートの上に全員が立てなくても、私たちは総部員39名で戦っていたし、その応援が、気持ちが後押ししてくれた。と、かなりクサイことを書いてみたが(笑)。とにかく、試合に出ている「優秀」(この言葉を使うのには抵抗があるが)な一握りの人たちだけがチームではないのだ。スコアを書く人、ベンチでアドバイスをしてくれる人、その全てがそろって初めてチームを成すのである。そして、それは社会においても当てはまり、優秀な一団体のみが「日本」とか「会社」とかそういったものではないのである。
 また、別の対策としては弱者を救済することも考えられよう。つまり、強者のみを優遇するのを防ぐ狙いである。先日、森鴎外の「舞姫」を読んだ。簡単にあらすじを紹介すると、時代は明治、社会的弱者であったエリスという少女と日本のトップエリートである豊太郎という青年がドイツで関係を持つ。豊太郎はエリスとの恋に生きるか立身出世の道を選ぶか選択を迫られ、官僚として生きるために日本に帰っていく。超簡略するとこんな感じだ(笑)。つまり、高い地位にある豊太郎という青年が、貧しく身分の低いエリスを捨てる、という話なのだ。その後のエリスは、豊太郎に裏切られたことによって、激しく憔悴し、変わり果ててしまう。このように、誰かの得の影には、必ずや誰かの悲哀が潜んでいるのである。ならば、生死の狭間を彷徨うほどの弱者が利益を受け、すでにあちこちで裕福な暮らしを営む強者が多少の損をすることに、何か間違いがあるだろうか。今一度、権力者たちには考えてもらいたい。
 確かに、ある程度の競争はないと、社会としての発展や、向上は望めない。しかし、誰かを犠牲にして、何かを足蹴にしての発展が、本当に人間の幸福追求にかなった物なのだろうか。「幸福とは、不幸の上に成り立つ物であるが、共有できる物でもある。」残念ながら、幸福とは、不幸の対義の概念であるが故に、不幸なしでは成り立たない。しかし、その不幸を被っている人と、一緒に持てるものではないか。私はそう思うのである。

   講評   kira

 ルフィくん、こんにちは。科学的な考え方は、進歩を必要条件にして発展してきたんだね。自然淘汰の行き着く先が、選ばれし者の国というのは、怖いことです。「優秀な人、そうでない人」という区分があるなら、ほどほど、そこそこの人、が頑張っているような国がいいなあ。
 優秀な人の国を創ろうと真剣につきつめて行ったのがヒットラーでしょうか。そういった独裁、圧政から人々を解放し自由にしてくれたのが民主主義です。
 ところがみんな平等、自由などと言っていると、なんだか退屈な世の中に思えてきたのではないでしょうか。それが、競争して格差を認めていく今の社会につながったように思えます。しかし、民主主義とは、本当は「なりゆきに任せる」社会ではなくて「常に抗議していく主体的な」社会であったはずなのです。民主主義の最初のありかたを忘れて、政治にも参加せず、経済活動などの競争に邁進した結果が、今の勝ち組、負け組、待ち組(こんなのもあるんだそうな)です。
 多様性を認め、弱いものにも同様の目をむけ、自分たちで民主主義をあらしめていくことが大切ですね。
 「舞姫」は好きな作品のひとつです。追いかけてきたエリスに豊太郎が向けた「ここは日本だ。」という言葉が気にいっています。彼ら(洋行した鴎外や漱石)にとっての日本は、まだ拓かれぬ国だったんだね。

 

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