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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   日々精進   ノンキィ

 料理をするとき、初心者は作りたいものを決めてから材料をそろえる技術からの発想だが、プロは資源から発想する。これまでの近代産業技術は常に技術からの発想であった。今日、人類が直面している危機を乗り越えるためには、技術からでなく資源からの発想に切り替えるかどうかが鍵となるだろう。 
 1945年の8月15日、日本の敗戦で第二次世界大戦が終わりを告げた。それから61年が経過し、その間日本は大きな成長を遂げてきた。戦後すぐに始まった高度経済成長で、世界でもトップクラスの先進国としての日本の地位は不動のものとなった。思えば、終戦直後のまだアメリカの統治下に置かれていた日本は、どのような面から見ても“初心者”であった。今では世界第二位の経済力を誇り、発展途上の国に対する支援を行うまでになったこの国が、である。物事を始めようとするとき、誰でもはじめは初心者としてスタートする。だから、人は誰でも何かについて初心者であり、別の何かに対するプロなのである。私は、初心者としてその道をどう歩んでいくか、そして、プロとして初心者にどのようなアプローチをするべきか、この二つの姿勢をしっかりわきまえられた人になりたい。(生き方の主題)
 この夏休み、普段はあまり機会がないからということで、平日の昼食作りを母から言われた。妹と一緒に何を作るか考え、簡単な夏の定番、冷やし中華に決めた。作る、といっても、ほとんど切るだけの具を調理し、麺をゆでるだけだが、作る前の段階にある問題が発生した。卵も麺もきゅうりも冷蔵庫にあったのに、ハムだけが用意されていなかったのだ。今から考えればなんてばからしい問題だろう。けれど、そのときの私にとってはとても重要なことに思えた。妹と私が、どちらがハムを買いに行くかをめぐるじゃんけんをしようした瞬間、母が台所に来て、こういった。「ハムがないから、ちくわか焼き豚でやってな。」(笑。一気に闘志がしぼんでしまった私達は、結局焼き豚を使って冷やし中華を作った。つまり、私達は料理の素人で、母は玄人だということである。柔軟な頭で物事を捉えると、何か新しい発想が生まれてくる。これはどのような場面でもいえることだと思う。固い頭をもみほぐして、例外を許容するくらいの余裕を身につけること。初心者が経験を重ねて徐々にプロに近づいてゆく過程で、非常に重要なキーポイントなのではないだろうか。そしてもちろん、焼き豚ののった冷やし中華はとてもおいしかった。(複数の方法1)(体験実例)(ユーモア表現)
 初心者が初心者でなくなるときとは、どのような瞬間をさすのだろう。初心者とプロの間に目に見える境界線などないから、その定義づけはとても難しい。私は、誰か別の初心者に物事を教えてあげられるようになったとき、その人は初心者の殻を破るのだと思う。実際に、自分のことが精一杯で他人に構っている余裕などない人のことを、プロとは呼ばない。かつての自分のような初心者がいて初めて、その人はプロとしての一歩を踏み出せるのではないか。日本は戦後の成長で発展した技術を、今では世界に発信する立場になっている。その点、日本はプロだろう。しかし今、地球全体がぶつかっている壁に対しては、まだまだ初心者なのである。初心者として伸びている国に、高度な技術やそれに伴う反省を教える傍ら、プロはそこに新たな問題の解決を見出す努力をする必要がある。(複数の方法2)
 何かのプロフェッショナルになれるのは、ほんの一握りの才能のある人だけだ、という人はいるだろう。確かに、一を聞いて十を知る人がいるように、初心者からいつまでも抜け出せない人もいる。けれど、「毎朝歯を磨くのに、一週間分まとめて一挙にという人はいない」ように、虫歯のない歯をきれいに保つためには、毎日きちんと歯を磨かなければいけない。初心者が道を極めようと思ったとき、どんなに優秀な人でも、一番の近道は地道に努力することだと思う。そうやって虫歯が一本もなくなったとしても、放っておけばどうなるかは目に見えている。だから、何かについてプロになった後にも、次はそれを持続させる努力が必要である。物事を柔軟に捉えて臨機応変に対応できる人は皆、輝いて見える。その輝きに到達するために、そしてそれを保つために、日々精進したいものである。(主題)(表現)

   講評   nara

 導入の部分で、「人は誰でも何かについて初心者であり、別の何かに対するプロなのである。」と指摘したことが、この作文の成功ポイントかな。裏を返せば、いつまでも初心者のままではいけないし、プロはお山の大将ではいけないということでもあるよね。
 冷やし中華の話は、季節感があり(笑)身近で読み手もすんなりと状況を把握できる、いい題材だね。日常の小さなワンシーンであっても、それをテーマに引き寄せると、こう解釈できるといういい例だ。実際には、こんなに深く考えながら冷やし中華を作っているわけではないものね。時には、ハム・焼き豚なしの冷やし中華も「あり」かもという発想が生まれれば、もう一歩プロへの階段を上ったことになるかな。
 第二方法では、一転して「国」としての題材にした。このギャップがおもしろさにもつながっているね。国と個人はできること・制約の差もあるけれど、その差以上に根本的なあり方は重なっているのかもしれないな。確かに、初心者がいるからその対照としてプロとしていられるのだものね。
 初心者からプロへ、そして、その状態を持続するために、タイトルの『日々精進』が不可欠だというまとめは、意表を突きつつ、なるほどと思わせるよ。この「地道な努力」というのは言葉にするのは簡単だけれども、難しいね。だからこそ、私たちは常に問題にぶつかりつつ悩んでいるのかもしれない。努力するというのは、悩み続ける能力をもつということに他ならないね。

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