創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   市民意識の流入   うさぴょん

 私が一年余ドイツに滞在して受けた印象からいうと、戦法の長所も短所も、一般の人々における市民意識の堅固さに関係するのであった。今世紀にいたっては崩壊したといわれる市民生活、ないし市民意識はむかしにくらべればすきま風だらけなのであろうが、外来者の私たちにとっては、それが今なおあらゆる人の生活の強い背骨をなしていることにおどろかされるのである。職業、地位、階級等の別なしに、人間は市民としてたがいに対等の存在である。現代の日本人が、やがて自立的な個人のありかたという彼らの文化の長所を身につけるときがあるにせよ、この短所までもいっしょに取り入れるのではつまらない。しかし長所と短所を分離して取り入れるということはおそらく不可能ではないか。けれどもそれではいけない、現代日本人が、自力をもって追及していかねばならない。これは、たいへんな仕事であるが、すべては、日本人自身の内部からの力が湧いて、なされなければならぬのである。
 日本人の対人関係は、幼い子に会わせて呼称を変えるように関係性によって位置づけられている。これとは逆に外国では個人が独立し、市民意識を強く持っている。それに影響されているのか、日本にも市民意識が根をおろしはじめた。この市民意識というものはこのまま根付いてもいいのだろうか。
 市民意識の市民とはなんなのか。この場合の市民は「近代社会を構成する自立的個人(大辞泉)」という意味だろう。自立的、すなわち個々であるということだ。他人に頼らず、自分でものごとをしっかり判断することが出来る。これは、付和雷同しやすい日本人にとって必要な要素だ。<複数の意見一>
 けれどもこの思想はときどき利己的な面も見せる。自分は相手に頼らない、だから君も私によりかかるな(笑)<ユーモア表現>、そんな様子だ。こうなると自分とそれ以外のコミュニケーションを図ることができず、空虚な対人関係を結ぶことになる。そうならないためにはどうしたらいいのか。答えは簡単で、我々にあった市民意識を持てばいいのだ。例えば、自立しつつも手をさしのべられる環境にする、力を借りることを良しとしない風潮にしない、だとか。ただ、言っていることは簡単だが実行するのは難しいだろう。故に、一歩ずつ踏み出していけばいい。いきなり「今日から自立します」というのではなく、今まで育んできた関係はそのままに、人に頼むのを3回のうち1回は自分でやるようにするなどとすればいいのである。<複数の意見二>
 流されやすい関係に浸っているのではなく、唐突に市民意識を目指すのでもなく、長所や短所を鑑みた市民意識を持つようにしていくことが大切である。<総合化の主題>

   講評   nara

 「市民」という感覚は、鎖国をしていた日本にとっては、別世界の考え方だったに違いない。よくわからないけれど、「どうやら市民感覚が必要らしい」ということで、日本人は表面的で一見カッコイイ(と思える)部分を取り入れようとしたのかもね。以前に「長所と短所」について作文を書いたことがあるのは覚えているかな? 人の長所は見方や場面によっては、短所になることもある。結局のところ、長所と短所とは同じ根であることが多く、どちらか一方だけを採用したり排除したりはできないのだね。
 文明開化のころに、日本は洋装を積極的に取り入れた。そのころの写真を見ると、どうも洋服に慣れず「借り物です……」という空気に満ちている。今、私たちの周りを見回すとどうだろう? みんなごくごく自然に洋服を着ているし、日本人デザイナーが世界に通用するようになった。このように、何かを取り入れた場合、それが自らのものとしてしっくりくるまでには、時間も必要なのだと思うよ。そういう意味では、まだまだ私たち日本人は、日本の市民意識を作り上げるまでには至っていない、ということなのだろうね。
 欧米と日本を比較するときに、宗教観の違いを意識してみるといいよ。欧米の市民感覚はキリスト教的な視点がある。「神の下では皆平等」だし、その「神」は唯一である。それに対して、日本の場合は、八百万の神様がいるからね。それぞれの神様の下に、それぞれの関係性が生まれているわけだ。こういう違いがあるのだから、「市民感覚」が欧米と異なっても、その方がむしろ自然だということになる。ここで結論の「日本的な市民感覚を育てる」ということにつながっていくのだね。

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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