低学年から学力の基礎を作る
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
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労働 シュシュ
漫画サザエさんの夫マスオさんが、仕事帰りに同僚に半ば無理やり誘われて飲みに行き、夜遅く酔っ払って帰ってくるというシーンがイメージできるだろうか。これは、日本のサラリーマンの生活の一種の象徴であると私は思う。日本の多くの父親は、会社から帰ってくる時間がとても遅い。その原因はおそらく残業である。もしくは、マスオさんのようにいわゆるお付き合いの飲み会かもしれない。しかし、このように家庭生活や地域社会よりも、労働を優先させる現在の日本社会は問題である。
考えられる第一の原因は、日本の企業がお互いの競争を第一に考えているからだ。日本は戦後、高度経済成長を経験して急速に先進国の仲間入りをしたために、このように競争を優先する価値観が企業に根付いているのだろう。去年の夏、オーストラリアにホームステイに行った際、私のホストファザーがいつも夕方には帰ってきていて毎日夕食を共に食べたことが印象的だった。日本に住んでいると、父親は遅くに帰ってくるのが当たり前のように感じていたが、オーストラリアに行って初めて、家族が毎晩共に夕食を食べないことは少しおかしいのかもしれないと思った。もし、逆にホストシスターが私の家にホームステイにきたら、おそらく家族全員が揃わない夕食に違和感を感じるだろう。違和感だけでなく、非人間的であるとすら思うかもしれない。しかし、日本の企業の方針が変わらないかぎり、企業は相手に負けないよう社員を働かせつづけなければならないため、5時きっかりに帰るサラリーマンではすぐに首になってしまうだろう。つまり企業が変わらなければ、日本の家庭が変わることはできないのだ。
第二の原因は、日本人は個人の利益よりも集団の利益を求める傾向があるからだ。日本において、アリがまじめにこつこつ働く良いイメージを持つのもそのせいだろう。しかし、アリは皆自分の巣のために働いているが、日本人は漠然とした社会全体のために自分の家庭や地域の生活を犠牲にして働いている。ときには、アリ以外の虫、例えばキリギリスのように、自分の希望を優先させて生きるのも良いはずだ。(自然科学実例)
確かに、日本が今のような先進国へ短い時間で成長できたのは、労働第一主義の社会のおかげだ。しかし、この発達した社会においてもなお、家庭を犠牲にしてまで仕事を優先させる傾向は問題である。村上春樹の「海辺のカフカ」に出てくるホシノ青年は、トラックドライバーの仕事をほとんどほっぽりだして、ナカタさんという老人と不思議な旅をする。そして彼は、日常の枠にはまったまま仕事を離れずにいたら決して経験することのなかったことを経験する。クラシック音楽をはじめてじっくり聞き感動した彼が、「今までの生活だったらこの音楽を聞いてもなんとも思わなかっただろうなぁ。」と言った場面があるが、このように仕事からはなれて得られる貴重な経験や思いは私たちにもたくさんあるはずだ。労働は、人生のテーマではなく、生きるための手段である。
講評 nane
マスオさんの話からのスタートがやわらかい。(笑)
第二段落のホームステイの話は説得力がある。日本では、定時に帰るお父さんというのは珍しいものね。子供が小学生のころまでは、できるだけ定時に帰宅して、子供と遊べるような社会になれば、それが本当の豊かさかもしれない。
第三段落の、個人の利益と集団の利益も、いい発想。「アリとキリギリス」を更に加工して、キリギリスに味方する立場で書いたんだね。自然科学実例というよりも(笑)昔話の加工か。
「海辺のカフカ」からの引用も効果的。
第三段落をうまく処理すれば、これはかなりレベルの高い文章。清書候補だね。
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