創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   未来のグローバリゼーション   ノンキィ

 最近日本では、あらゆる所で国際化の必要が唱えられている。それは、日本人が今なお自分を閉ざされた特殊な民族とし、それを克服しなければならない欠点だと判断しているからだろう。しかし、私達は単に生きるために欧米の秩序への適応化をしているに過ぎない。
 義太夫節にのせ、力強い三味線の音が響く。舞台では、あでやかな真紅の着物を身にまとった人形がまるで生きているかのような動きをみせる。今夏に鑑賞した、文楽人形浄瑠璃の一場面である。生まれて初めて鑑賞する舞台を前に感動の覚めやらぬ私達に、義太夫節を披露して下さった太夫さんがこうおっしゃった。「君たちが立派に仕事をする年頃になったとき、この世界はもっと密接になっているでしょう。今日君たちが見た文楽を、一生忘れないようにとは言わない。しかし、ほんの些細なことでも良いから何かを記憶にとどめておいて欲しい。そして、それを世界中の人に自慢して欲しい。日本にはこんな素晴らしいものがあるのだと。」自国の文化などそっちのけで、ヨーロッパの芸術やアメリカの高層ビルに無条件に憧れを抱く現代の日本人。そうして外に国を開いた結果、日本人は真に国際人となりえるのだろうか。私は、日本の伝統文化を情熱的に語ったあのおじいさんが忘れられない。文楽の太夫さんから、これからの日本人が国際人として生きてゆくためのヒントを得たように思う。(主題)
 そもそも国際化というと、日本では欧米文化に追随し近づいてゆくという印象が持たれているが、それでは、国際化ではなく欧米化と呼ぶほうが適切なのではないか。千年以上昔、大和朝廷は強大な隣国であった隋や唐に使者を派遣し、そこから多くを学んだ。中国に学ぶことが当時の国際化であった。今はどうだろう。例えば外国語を学ぶとき、イタリア語と中国語ではどちらがより国際化のイメージに沿っているかと聞かれたとき、過半数の日本人がイタリア語だと答えるに違いない。“国際化:国際的な規模に広がること(広辞苑)”に適っているのは、世界中で五人に一人が話している中国語だという事実は明白であるのに。つまり、私達日本人は国際化を、自国と全くかけ離れた遠い存在に追いついてゆくことだと思い込んでいるのだ。アジアもヨーロッパも、アメリカも、アフリカもそれぞれに異なる特有の文化を持っている。宗教や政治・経済体制の違いといった特質は、どの国も決して同じではない。それなのにどうして、欧米だけを取り上げてこれが絶対的であるなどといえようか。国際化の本当の意味は、それらの違いを知った上で自分の国の文化を更に広げてゆくこと。欧米に肩を並べようと躍起になる必要は全くないのである。(方法1)
 次に、国際化を図る基準の曖昧さも考慮に入れなくてはなるまい。ここ数十年世界一の経済大国の座を暖め続けるアメリカや議会制民主主義の大家であるイギリス。それらから吸収すべきことは非常に多い。しかし、政治体制や経済状態というものは国際化の基準にするにはあまりにも危うい。時代が変われば人の考えは変わる。いつ何時、アメリカに大飢饉が訪れるかも分からない。もし日本が最終目標として仰いでいる国々が入れ替わったなら、今度はそれを追随し始めるのか。一朝一夕で出来ることではなさそうだ。”大平の眠りを覚ます蒸気船たった四杯で夜も眠れず“という川柳がある。200年間鎖国を続け、平和のうちに暮らしていた人々は、突如沖に現れた黒船にどれほど驚かされただろう。以来、大戦を経ていっそう日本にとっての欧米の地位は高くなった。戦後の日本を立て直すためマッカーサーはこの国を民主化させ、経済や政治の面でのアメリカの影響力を強大なものにした。その結果、見事に日本は復興し今に至る。だが今、確実に時代は変化している。世界の国々にどれほど自国の文化を伝え、同時に他国のものを吸収できるか。それこそが、国際化の基準とならなくてはならない。政治経済の舞台と国際化の舞台の兼用は、観客にひどい誤解を招いてしまう。(詩)(伝記)(方法2)
 もちろん、変化する歴史の中で日本という民族がどこか大きな影響力のある国に追随することで得られたものも多くあった。日本の文化は他国の文化を真似、発展させたものだといっても良いくらいだ。しかし、“自国に対する賞賛が、他国に対する軽蔑によって支えられているのではいけない”。同じように、他国に対する賞賛の影に自国の文化の犠牲があってはならない。数十年後までに、私はいったい幾人にあの太夫のおじいさんとの約束を行使できるだろう。そしてそれと引き換えに、他国のどれほど素晴らしい文化を知りえるだろう。どれほど真の国際人に近づけるだろう。それは私の、努力次第だ。(主題)(名言)

   講評   nara

 文楽人形浄瑠璃の鑑賞会とは、いい題材があったね。また、直接には書かれてはいないけれど、先日の研修旅行で感じたことも、意見をまとめるのに一役かったのではないかな。同じ経験をしても同レベルの作品を書けるわけではない。ノンキィさんの意識のアンテナが研ぎ澄まされたからこそ、題材をキャッチしたのだろうな。
 第一方法:「○○化」は確かに自らを違ったものに変えていくというイメージを持っているね。日本人が外見も風土も歴史も全く異なる欧米を遠い憧れの存在として掲げて「欧米化」を目指すのも、差異の大きさに由来しているという指摘はおもしろい。辞書による「国際化」の定義と自分での定義付けを比較したところも、「真の国際化とは」という主題にうまくつながっている。
 第二方法:歴史に学ぶ姿勢がいい。政治経済の世界は、案外にもろいものなのかもしれないな。アメリカとイラクの争いを見ても、政治経済の力でのごり押しは、今や通用しなくなったね。では、何を手にすればいい? ここに導入部の人形浄瑠璃が絡んでくるのだね。
 古いものでいえば、『源氏物語』や俳句などの文学・海を渡った浮世絵も、日本がその存在をアピールするための有効な道具となった。今でいえば、オタク文化まで輸出してしまった(笑)アニメかな。これらは「日本発」のものだけれど、反対に日本が受け容れるものもありそうだ。まとめの段落の「文化」が、真の国際化にとってのキーワードになる。これは、私たち個人も、そして政治経済の世界に身を置くものも、肝に銘じておく必要があるのだね!

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