創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   自然の中での序美   Mura-Mi

 数年前だっただろうか、『博士の愛した数式』という小説が映画化されて人気になった。この小説に登場する「博士」は元大学助教授の数学家であり、まさに数字や数式と愛を育む、という人物である。ひとつの証明を書き終えたとき、「博士」は、『静かだ』と口元につぶやく。しかしその証明がアマチュア数学誌に載って「博士」が賞金を得たとき、まわりの人間が素晴らしいことだと褒め称えても、「博士」は『私は神様の手帖をほんの少し覗き見して、それを写しただけなのだ』と言う。
 この態度に隠れているのは、「博士」の、数学—すなわち自然美であり、また「神様の手帳」にある秩序だった記述—に対する敬意でありそれに跪く心である。また、作者である小川洋子がこの小説を作るきっかけとなった数学者、藤原正彦は『国家の品格』のなかで、日本を建て直す上で重要視されるべきものは、「自然に跪く心である。」と述べている。私たちはもっと、自然の中にある美しさを尊重するべきである。
 そのために、もっと自然の偉大さを感じられる機会がつくられるべきだ。私の学校は昔、茂った森の近くにあり、学校の中にあるちょっとした池には、毎年カエルがおびただしい数のオタマジャクシを生み、女子生徒たちに恐怖を与えたと先輩から聞いている。しかしその森が伐り倒されると、そんな光景が見られなくなった。それ以来少しずつ、私の学校に流れる時間が早くなり人々がせこせこと動くようになったのは、無関係ではないと私は思う。きっとそういう小さなひとつの生態系、すなわち自然を感じられれば、人の心も大きくなるのだと思う。自然の偉大さを感じる、というと少々大規模な旅行が必要な聞こえ方もするだろうが、身近にそのような経験のできる機会を多く用意するべきである。
 次に、学校の教育、殊に数学の教育を、自然美を体感できるようにすることも重要な方法である。先に述べたように、数学というものは本来自然美にあふれているものである。というのもなぜなら、化学や物理は、地球でない場所やものすごいミクロな視点では、私たちの知っている法則が成り立たないこともあるが、数学は違うのだ。例えば、古典力学におけるF=maという公式は電磁場では通用しないが、三角形の内角の和は180°であることは常に変わらないのである。数学はそのような自然美にあふれている。どのような数式や定理も綺麗な自然美の調和や秩序に守られていて、それらは平等に美しい。これが数学なのだ。しかし、学校教育で使われる数学の教科書というのは、定理や公式が強調されすぎて、そのような美しさを前面に出したものではない。本来、数学は、突き詰めれば定義を知っていることだけが必要なのである。
 それはもちろん、数学に限った話ではない。本当に美しい国語とは、声に出したときに美しいと感じられるものだと思うし、音楽や美術もそうだ。音楽の授業では、もちろん拍に合った音程の正しい音楽を教えることが優先される。だがその一方で心を無にしたときにポッっと生まれる、言い換えれば「自然な」音楽が存在するということを教えなければならない。そのためには、そのような、一種の「哲学」を教えられる教員が必要とされる。
 確かに自然を征服することで均整を作り上げることも美しい。しかし、自然であり創造物である人間はその中に存在することでその自然の美しさを感じるべきである。自然の中の一部分であり不完全である私たちが、その自然を征服し完全である美を創ることができるということの矛盾に、心のどこかで気づかなくてはならないのだろう。

   講評   nane

 自然というテーマに対して、遠いところからアプローチしているのが面白い。
 数学の美しさということで、自分の体験した具体的な実例を感動的に入れていこう。一度考えると、関連したテーマでいつでも使えるようになる。
 先生も似たような体験で、ごく単純な数式のプログラムから、1〜100までの数字を縦横に掛け合わせる1万マスの一覧表が瞬時にできたとき、その数式のシンプルな美しさに感激したことがある。
 数学者も、大事なのは、やはり美に対する感受性なのだろうね。

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